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「私がチベット仏教の僧侶になった理由」2020年10月10日の投稿

※この記事は以前に書いていたブログのコピペ(一部訂正など有り)です。

前回の記事で私の来歴を語りましたが、今回はチベットで出家した理由と経緯を説明してきたいと思いいます。また自分語りの記事になりますがご容赦ください。

「釈尊から続く戒律を遵守している師匠から戒律を授かりたかったから」
これが一番の理由です。以下、そこに至った理由とその時々の私の心持ちの変遷を時系列に沿って述べていきます。

在家行者時代

前回の投稿にも書いたとおり、私の仏教への信仰は大学生のときにインドの密教行者の伝記を読んだことに始まります。学部生時代の私は勉強もそこそこに、毎日のように酒を飲みゲームに興じる生活をしていました。

怠惰と欲望に満ちた私には仏道の修行などとても無理だと思っていたのですが、インドの密教行者には飲酒や暴食、博打や惰眠などを表面上はやめることなく成就(覚り)に至った者が多くいたこと、その修行法がチベット仏教に伝わっているということを知り、信仰が生じました。(尚、後にそのような世俗の楽を享受しつつ歩む仏道は大変に難しいの気づくのですが…)

当時、私の通っていた大学にはポタラ・カレッジのクンチョック・シタル先生の授業があったご縁で、ときどきポタラ・カレッジの講座に参加するようになり、またリゾン・リンポチェがいらっしゃったときには初めて灌頂(密教の入門儀式)も受けさせていただきました。このときから私は在家密教行者として生きることにしたのです。

きっかけは密教への興味だったのですが勉強していくうちにチベット仏教、特にゲルク派の精緻な分析と丁寧に解説に大きな魅力を感じました。

とはいえ、仏教の勉強と決められた行法を少しするという以外に特に生活を律することもなく、相変わらず堕落した生活を送っていました。

在家法師時代

その後、ご縁があって南都の寺院で得度し日本の僧侶になり、四度加行・伝法灌頂(日本密教の修行)を満了。

しかし姿形は僧侶になったとはいえ、前回の投稿のとおりこのときはまだ結婚するつもりでいましたし、仕事の疲れからか飲酒量・頻度はむしろ増加ていました。

そんな状態でしたので自分は「日本では僧侶と呼ばれる立場だが実質的には在家者(ここではこれを仮に在家法師と呼んでいます)」と規定していました。ですので、仏教の勉強、日本の僧侶としての勉強はするものの相変わらず生活を律するということはしていませんでした。

そして兵庫のお寺に勤務するようになってもその生活状況はほとんど変わることがありませんでした。

インド留学と律僧になる決意

さて、インドに留学してもしばらくは私の在家法師という自覚は変わりませんでした。留学先のギュメ寺ではそもそもお酒が手に入らないので飲んでいませんでしたが、帰国時には家族や友人と飲酒していました。

しかし、ブッダガヤなどに巡礼にいくと多くの僧俗の方々が、実質在家生活の私であっても丁重に僧侶としての待遇をしてくださいました。またチベット式の法話会では聴講するだけの僧侶にもお布施が配られます。そのようなことが何度もあり、自身がそれを受けるにふさわしいかを疑問に思うようになりました。

そんな思いを抱きながらギュメ寺で比丘(釈尊の時代からの正式な出家者)に囲まれて生活するうちに「彼らのようになりたい」「もしかしたら自分にもできるのかも」という気持ちが強くなりました。

もちろんためらいも多く、特に上記のごとくお酒が好きだったので不飲酒には迷いがありました。しかしFBで相談したところ多くの友人知人から応援・ご支援・後押しいただいたおかげで決心することができました。

そこでギュメ寺の先生に相談したところ、思いがけず快諾。まだチベット語もおぼつかない状態だったので難色を示されると思ったのですが「それは素晴らしいことだ」と喜んで紹介状を書いてくださいました。

そして2019年ダライ・ラマ14世猊下より沙弥戒(比丘の前段階、見習い僧)を受戒。2020年には比丘戒を受戒予定だったのですがコロナ禍で授戒会が中止、おそらく2021年も中止だろうということで2022年に受戒できることを期待しています。

こうして私は戒律を護持して生きる道に入りました。このときいただいた法名テンジン・ケンツェのテンジンは「仏教の護持者」ケンは「智慧」ツェは「哀愍、親切心」を意味します。この名に恥じぬよう勉学と修行に励みたいと思っています。

おまけ:誤解してほしくないこと

上記はあくまで私の個人的な修行道のなかでの取捨選択です。日本仏教の現状や日本の僧侶さん個々人の修行道を批判する意図はありません。

むしろ在家法師というあり方は現代の多種多様な生き方において仏道修行をする上で有効な選択肢のひとつだと思っています。

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