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盤石の川崎フロンターレ~ゼロックススーパーカップ 川崎フロンターレvs浦和レッズ~

 皆さん、こんにちは。さて、note企画第4弾です。

 いよいよ来週末にJリーグが開幕ということで、今回はその前哨戦であるゼロックススーパーカップを取り上げます。カードは川崎と浦和。

 もし去年の天皇杯で優勝していたらこの大会に出場できた訳で、仙台にとってもそう遠くはない大会になったのかなと思います。

 浦和が開幕戦で対戦するチームということもありますし、今年のリーグを引っ張りそうな両チームということで、このゲームを取り上げました。

 では、早速行きましょう!


 昨年のリーグ覇者である川崎フロンターレ。鹿島に並ぶリーグ3連覇を狙いつつ、アジアも視野に入れている今年の川崎は充実の選手層で開幕を迎える。

 スタメンではエウシーニョが抜けたサイドバックに新たなブラジル人サイドバック、マギーニョを。そしてワントップには鳴り物入りで加入したレアンドロ・ダミアンが起用された。

 やはり注目はレアンドロ・ダミアンということになるだろう。純粋なボックスストライカーが川崎のパスサッカーにどう化学反応を起こすのか楽しみなところである。

 一方、天皇杯王者の浦和レッズ。昨シーズンは途中から指揮を取ったオズワルド・オリヴェイラ監督によって、堅実なサッカーを展開。見事、天皇杯を制したことでアジアの切符を手に入れた。

 浦和も川崎同様に国内もアジアも見据えた選手層で開幕を迎えた。新加入組でスタメンなのは、アンカーのエヴェルトンと杉本健勇。ベンチには鈴木大輔や山中亮輔も出番を待つ。

 3バックと4バックの併用を目指すと風の噂で聞いたが、そのような柔軟な戦い方のなかで、オリヴェイラ監督の特徴である堅実さが実を結ぶことができるかが今シーズンのポイントになるだろう。


前半

(1)川崎のボール保持と浦和のボール非保持

 この試合は試合開始の笛と同時に、試合の構図が明らかになる展開だった。

 浦和は無理に前からプレッシングを掛けるのではなく、川崎にボールを持たせて自陣で構える姿勢を見せる。

 ということで、まずは川崎のボール保持とそれに対する浦和のボール非保持の特徴について見ていきたい。

 まず、川崎のボール保持は基本的に4-2-2-2のような形となるが、川崎らしく流動的なポジションを取っていた。

 特徴なのは、右サイドハーフの小林がボール保持時はダミアンと並んで2トップになることだ。昨年はワントップを務めていた小林だが、今シーズンはダミアンの加入により2列目での出場が多くなりそうな雰囲気である。しかしそんな小林をただ右サイドで起用するのではなく、攻撃時はより得点の取れるポジションに流動的に位置させることは、今シーズンの川崎の新たなチャンレジと言えよう。

 そして、空いた右サイドでは新加入のマギーニョが高い位置を取る。バルサ時代のダニエルアウべスを彷彿とさせるタスクをマギーニョに課していた。

 また、憲剛と家長は基本的に自由に動く。ボールサイドで2人が絡むプレーが散見されたが、あのように同サイドで数的優位を作って崩す役割だ。ここは今までの川崎と変わらない点。


 一方の浦和は5-3-2で構える。2トップは川崎のセンターバックへはプレスを掛けずに、真ん中で縦パスのコースを愚直に消し続けた。

 そしてインサイドハーフの2人(柏木と長澤)は、ハーフスペースの管理。川崎が同サイドで密集を作ったら真ん中のパスコースを消す。プレスに行けるとなったら、奈良や谷口までプレスを掛けに行く。ついでに長澤より柏木の方がプレスに行く回数が多かったが、これは川崎の密集が左サイドで作られることが多かったからだ。

 そして時間の経過とともに、橋岡が車屋へプレスに行くシーンが見られた。高い位置を取るマギーニョに対してバランスを取っていた車屋はセンターバックからボールを受ける回数も多く、狙えるということもあったのだと思われる。

 浦和はどちらかというと、前よりも後ろの選手がいい状態で守備できるような設計になっていた。前方でこまめにパスコースを切ることで、後方はポイントを絞り、いい状態でボールホルダーへとチャンレジできるようにすることがテーマとしてあった。

 ネガティブトランジション時(攻撃から守備への切り替え)やセットプレーなどで危ないシーンは迎えたものの、セットしている状態で守っているときは危ないシーンはなかった。


 反対に川崎としては、ボールを持てる展開のなかで焦らずに、どこに穴があるか、ポイントを作れるかを探るようなボール回しに見えた。この慌てない感じは王者の風格というかそういうものが出てきたのかなと感じる。


(2)インテンシティの高い守備を見せる川崎

 続いては川崎の守備にフォーカスしていきたい。昨シーズンの川崎はリーグトップの攻撃力もさることながら、守備でも強さを発揮し、失点数でも27失点とリーグ1位の数字となった。

 川崎の守備で一番良くなったのは、ボールを取られたあとの切り替え、ネガティブトランジションだった。バルセロナやマンチェスターシティでもそうだが、ボールを保持したいチームはいかに奪われた後に素早く奪い返し、また自分たちのターンへと持っていくことができるかが生命線とも言えるが、川崎がこのネガティブトランジションの強度が向上したことで、より強いチームへと変貌を遂げることができた。

 この試合でも、川崎は素早い切り替えでボールを即時奪回し、ボールを保持する時間を長くしていった。この切り替えでポイントなのは、1人で追うのではなく複数人で追うこと、特に前線の選手がプレスバックを行い、相手を2人でサンドしてボールを奪うことが多く、この意識がずば抜けて高いのが川崎だった。川崎にとって、「即時奪回」、「プレスバック」はキーワードのように感じる。

 またボール非保持でも、しっかりと狙いを持ったプレーを見せた。

 特に多かったのが、浦和のボール回しを川崎の左サイドへと誘導するプレーだった。

 浦和の3バックに対してダミアンと家長がコースを限定させながら、誘導し、最後は橋岡のところで車屋がボールを奪うシーンが非常に多かった。

 また橋岡にボールが渡るときに長澤がサイドバック裏へとランニングしている(おそらく浦和の狙い)が、そこもディフェンスラインのスライドと大島、守田との連携でうまく対応していた。

 昨シーズン、仙台が川崎と対戦したときに思ったが、川崎は前プレのスイッチの入れ方や入れた後の守備の連動性が素晴らしく、仙台もそれで失点した経緯がある。

 新加入のダミアンも労を惜しまず、しっかり前プレスを行える選手なので、川崎はプレスの強度を落とすさずにプレーすることができている。

 前半はスコアレスでゲームを折り返すことになったが、川崎にチームの熟成度をしっかり見せられた内容の前半だった。


後半

 後半開始から杉本とエヴェルトンに代えて、ナバウトと阿部を投入する。この辺はプレシーズンということもあり、色々な選手の組み合わせを試す意味での交代だった。

(1)アンカーを動かし始める川崎

 前半の川崎は、撤退守備をする浦和のボール非保持に対してボールを保持できる時間が長かったが、ボール保持から中々攻撃の糸口を見つけられずにいた。

 そんな前半の川崎だったが、ハーフタイムを経てしっかり修正して後半に挑むことに成功する。

 川崎がポイントにしたのは、浦和のアンカー、つまり阿部だった。

 前半は家長と憲剛が自由に動き回ることで、エリアでの数的優位を作ることに力を注いでいた川崎だったが、後半は主に憲剛が阿部の付近でプレーすることで、阿部を引き出したり、ずらすことで阿部の後ろのエリア(バイタルエリア)へとボールを届けることに成功する。

 前半は家長と憲剛が自由に動き回っていたが、後半は憲剛が主に中央、家長が左サイドから中央にかけてプレーすることが多くなり、ポジションの整理・修正を図った。

 また、憲剛がビルドアップ隊からボールを引き出す動きを取ることで、3列目から大島や守田が飛び出していくプレーも見られた。

 また、前線では小林とダミアンの関係も修正していて、前半は2人が並んでプレーしていたが、後半はダミアンが相手を背負ってポストプレーし、それを小林が受けてシュートまで持っていくことが増えた。ダミアンがセンターフォワードとして、小林がセカンドトップとしての役割を担うようになった。

 そして53分にダミアンが移籍後初ゴールを決めて、ゲームの均衡を破った。

 川崎としては、攻撃の糸口を見出して先制点を奪い、狙い通りの形でゲームを進めることに成功した。


(2)スコアの変化による両チームの変化

 スコアに変化が起こったことで、両チームにも少なからず変化が見られるようになった。

 先制した川崎は、前述したようにアンカーの阿部を狙い撃ちしながらのボール保持は変わらないが、守備では前からプレスを掛けるときと、引いてブロックを形成するときとで使い分けるようになる。

 しかし、浦和が右サイドにボールを循環させると川崎は岩波のところからプレッシングを仕掛ける。ここは前半から変わらないところだった。おそらく川崎は橋岡のところ狙いどころとしていた。よって引くようになった後半でも橋岡のところへのプレッシングは変わらず行っていたのだろう。


 得点を奪わなければならない浦和も、前からプレスを仕掛けるようになる。特に柴戸が投入されてからは、前線からチャレンジするシーンが増えた。しかし川崎に剥がされてなかなか高い位置でボールを奪取することができなかった。変幻自在の川崎の面々に、なかなか守備の的を絞らせてもらえない状況となった。


(3)プレシーズンマッチっぽくなった後半の後半

 この試合は5人までの交代が認められており、後半の後半ではお互いに多くの選手が入れ替わり、徐々にプレシーズンマッチっぽい展開になっていく。

 ピッチ内の半分の選手を入れ替えられた状態となり、後半の後半はむしろ強度の高い試合へと移り変わっていった。

 特に選手を多く交代した川崎は、また前プレが復活し、浦和の反撃を前から食い止めることも多くなった。

 浦和は柴戸とマルティノスのインサイドハーフコンビが積極的なプレーを見せて希望を見出せたことは収穫だろうか。

 ということで、ゲームは強度を上げてしっかり守り切った川崎が逃げ切る形となった。お互いに目先のゼロックスも大事だけど、リーグとアジアも大事だよね、みたいな落ち所な試合となった。


最後に・・・

 試合は、盤石の川崎が浦和にしっかり勝ったという内容だった。

 今年の川崎も強固というか、上手さに加えて強さがより一層増している印象だった。今シーズンもアクシデントがなければ優勝争いには間違いなく絡んでくるのではと思う。


 さて仙台サポなので、ここからは開幕戦について考えていきたい。

 この試合を見た浦和の印象は、前半の守備ブロックにもあるように堅実なサッカーをするという昨年のイメージをそのままに、その強度がより高くなった印象だ。

 それでも、浦和に勝つにはボール非保持でいかに前から浦和を嵌められるかがポイントかなと思う。川崎が行っていたように、サイドに誘導してからボールを奪い取る連動した守備ができれば、しっかり浦和とやり合えるだろう。

 攻撃では、3センターをうまく動かしたい。前半は難しくても、疲れてくる後半に川崎のようにしっかりボールを動かすことで相手の嫌なところへと入り込んでいきたい。

 この試合では、浦和はブロックを敷いて守っていたが、仙台と対戦するときは、どのような形で守備で行うかは分からない。しっかり相手をスカウティングするオリヴェイラ監督のチームなので、前からプレスを掛けに来る可能性は大いにあると考えている。

 仙台としては、キャンプで取り組んだことをしっかり開幕戦で披露できれば、と個人的には思う。

 いよいよ開幕まで、残り数日。僕たちの日常が帰ってくる!!

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