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昔のコンデジで遊ぶ (1) ~15年以上前のデジカメの使い途を探る…

 ここのところ古いデジカメ、しかも古いコンデジを時々持ち歩いて写真を撮っている。使っているのは特に「高級コンデジ」と呼ばれたジャンルの製品ではない。ローエンド製品でもないが、ハイエンドでもない。まあごく普通の価格帯で売っていた昔のコンデジだ。


■写真マニアに見られたくない

 写真を撮ることが好きな僕は、普段はスマホで撮っているだけだが、たまに無性にカメラで撮影したくなる。日常の散歩時に、月に2~3回ぐらいはデジカメを持って歩く。しかし、最近はミラーレスを持ち歩くのが重く感じるようになり、面倒になった。ここ1年くらいは散歩時のカメラとして、VLOG練習用に買ったニコンZ30に単焦点の28mmを着けて時々持ち歩いていたが、ミラーレスの中では小型軽量と言われるZ30ですら、重くてかさ張ると感じるようになった。それで、持ち歩くのはやはりコンデジにしようと考えた。
 コンデジにもいろいろある。ミラーレス並みの高画質写真を撮りたいのならば、やはり大きめの撮像素子を搭載したハイクラスのコンデジになる。ハイクラスのコンデジは、ちょっと古いがGR DIGITAL(2015年発売のGRⅡ)やPowerShot G7 X Mark2などの大型センサー搭載機を何台か所有している。でもこの手のデジカメを持って歩くのは、「いかにも写真マニアです」という感じがして面倒くさい。他人から「写真好きなオジサン」と見られるのは嫌だ(実際は誰も見てないし、そんなことを気にもしてないのだろうけど…)。だったらハイクラスのコンデジなど買うなと言われそうだが、実はこんなバカみたいにひねくれた、面倒臭い心境になったのはここ数年のことで、以前はこうしたハイクラスのコンデジを人目も気にせずによく持ち歩いていた。
 まあ、そんなことはどっちでもいい。じゃあ、散歩にどんなカメラを持って歩くのか…という話である。たくさん持っている古い銀塩コンパクトのどれかを持ち歩くのも面白いかとも思ったが、動作確認がデジカメより大変な上、フィルムが1000円超えと高く、いちいち現像に出すのも面倒だ。で、考えた挙句、これまたたくさん持っている古いコンデジに思い至った。

 なぜ古いコンデジをたくさん所有しているのかと言えば、それは「昔たくさん買って、買ったデジカメを処分せずに持っていた」からだ。僕は昔「WS30の世界」という、ちょっとやさぐれたデジカメサイトを運営していた。2001年~2012年頃までの10年間ちょっとのことだ。その頃は、デジカメの新製品を片っ端から購入していた。また、同じ時期に仕事でパソコン雑誌のデジカメコーナーで新製品紹介記事や評価記事を書いていたこともあり、メーカーからデジカメを貸与されたり事実上貰ったりしたことも多い。それらの製品を処分しないで手許に保管していたので、今なお主に2000年代に発売された大量のデジカメを所有しているわけだ。何だかんだで数十台はある。古いものは20年以上前の製品なので、バッテリーがダメになっていたり、専用充電器がなかったりするものもあるだろう。ちゃんと調べていないのでわからないが、完動品は半分ぐらいかもしれない。

 前置きはここまで。それで散歩に持って歩こうと決めたのは、手持ちの古いコンデジの中から適当に選んで動作確認をした次の3種だ。富士フイルム「FinePix F200EXR」、ニコン「Coolpix P5000」、同じくニコンの「Coolpix P330」である。いずれも高級コンデジではないが、普及クラスのデジカメの中では、発売時には「高画質機」との評判が高かった機種である。共通しているのは、どれも1000万画素前後で、普及クラスとしては少し大きめ(1/1.6~1.8型)の撮像素子を使っている点だ。そして、FinePix F200EXRとニコンCoolpix P5000は、CMOSではなく今は使われなくなった原色CCDを採用している。
 それで、ここ1~2か月間この3台を交互に使ってみたので、その感想を記しておこう。まずは、ニコンCoolpix P5000からだ。

■ニコン Coolpix P5000

 ニコンCoolpix P5000は、2007年に発売された。17年前のデジカメということになる。2007年と言えば、日本で初代iPhoneが発売された年だ。今でこそ、スマホのカメラが進化して5000万~1億画素は当たり前、画像処理用のソフトウェアも進歩してかなりの高画質撮影が可能になり、結果的に市場からコンパクトデジカメを駆逐してしまったが、iPhone初号機のカメラは200万画素、動画撮影機能もなかった。写真撮影に限ってみれば、スマホに対してまだコンデジが圧倒的優位に立っていた時期である。
 P5000の撮像素子は、1/1.8型原色CCDで1,000万画素。36~126mmに相当する3.5倍ズームだが、別売でワイドコンバーターが用意されていた。F値は広角側で2.7~7.6、望遠側で5.3~7.3。モードダイヤルで、絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、マニュアル露出を選択できる。当時としては結構贅沢なスペックで、ボディ前カバーにマグネシウム合金を採用するなど、外観もそれなりに高級感がある。実売価格が5万円程度で、一応当時のコンデジの中では高級品に近かった。

 このP5000で久しぶりに撮ってみた画像はというと…、それが悪くない。悪くないというよりも、普通に綺麗な写真が撮影できる。街角の風景だけなく屋内で食事なども撮ってみたが、普通にブログやインスタに使える。ただし、こうした「普通に使う」のであれば、最近のミドルレンジ以上のスマホが搭載するカメラに対する優位性は全くない。

 スマホのカメラにもいろいろあるが、現在僕が使っているスマホは「Xiaomi 12T Pro」だ。これで毎日写真を撮っている。このスマホのメインカメラは、200Mピクセル(2億画素)の撮像素子(Samsung ISOCELL HP1)を搭載している(メインカメラ以外に超広角800万画素とマクロ200万画素カメラも搭載)。メインカメラのセンサーサイズは1/1.22インチと割と大きめだ。とは言っても、画素数が多いので1画素当たりの受光面積は非常に狭い。そこで通常の撮影では、縦横4画素ずつの16画素を1つにまとめて1200万画素カメラとして使う。少し彩度高めに加工された画像だが、不自然さはなく、かなり再現性の高い発色だ。1200万画素モードでも解像感が高い、非常にシャープな写真が撮れる。1200万画素で撮る限り、ダイナミックレンジに不足は感じない。夜景もほとんどノイズ無しで撮れる。いずれにしても、通常の1200万画素でオートで撮るスナップ写真については、あまり撮影条件に左右されることなく、ほぼ確実に美しい画像が得られる。若干見栄えを意識した絵作りで、メーカーが喧伝するほど高画質とは思わないが、個人的には日常の記録に使う分には全く過不足はない。別にアートな写真を撮るわけでもなく、スマホのカメラなんてこんなものと割り切れば、かなり優秀なカメラだ。

 このXiaomi 12T Proで撮った画像とP5000で撮った画像を比較すると、P5000で撮った画像は、1200万画素と1000万画素の差以上に、圧倒的に「見かけのシャープさ」に欠ける。解像感が乏しい、どこか「眠い」ような画像だ。しかし、晴天の屋外など条件さえよければ、発色は穏やかで非常に好ましい写真が撮れる。特段に鮮やかではないが、かなり色再現性が高い画像を得ることができる。原色CCDということもあり、その発色は何となく銀塩ネガフィルムで撮った写真のような雰囲気がある。また、彩度やコントラストなど細かく画質調整をすることも可能だ。先に「普通に使うのであればスマホのカメラに対する優位性は全くない」…と書いたが、意図的にこうした雰囲気の画像を得たいとか、原色CCDの発色を活かした作品作りをしたいのであれば、今P5000を使ってみるのも面白いだろう。
 ただし、このP5000の動作は遅い。AFの合焦速度も書き込みも遅くてイライラする。そしてボディが中途半端に大きい。厚みがあって、ジャケットのポケットやサコッシュに入れると嵩張る。ただ、この厚みのあるボディとグリップ部の突起が相まって、非常に構えやすく安定したホールディング状態が得られることは確かだ。実像式光学ズームファインダーがあるのもいい。

漆器店の店頭 by P5000

■富士フイルム FinePix F200EXR

 富士フイルム FinePix F200EXRは、2009年に発売された。ちょうど15年前である。撮像素子として前年の2008年に発表された「スーパーCCDハニカムEXR」を採用している。これによって「高解像度」、「高感度低ノイズ」、「ワイドダイナミックレンジ」を実現(同時には設定できない)した画期的な製品だ。発売時の実売価格が4万円ちょっとだった。僕はこのデジカメをとても気にいって、購入後の2009年から翌年にかけて毎日のように使った。撮像素子は1/1.6型と大きく、1200万画素。6.4mm~32mm(35mmフィルム換算:28mm~140mm)の5倍ズーム、F値は3.3(広角側)~F5.1(望遠側)。F値は少し暗いが、実際に暗所の撮影に非常に強く、シャープで発色も申し分ない。ともかく夜景がきれいに撮れる。海外出張時によく持って行ったが、夜のアジアの屋台街などを撮影するには最高のデジカメだった。

 今回、久しぶり(15年ぶり)にこのF200EXRで撮影したが、記憶通りの美しい画像が得られた。これまたXiaomi 12T Proで撮った画像と較べると、シャープさ、解像感には欠けるがP5000ほどは眠い感じはしない。今見ても十分に通用するキレがある画像だ。発色はいかにも富士らしい、自然で柔らかく、適度のメリハリを感じるものだ。原色CCDのせいかP5000と同じように銀塩フィルムの雰囲気を残すが、P5000がネガフィルムの発色を想起させるとすれば、F200EXRは同じ銀塩フィルムでもリバーサル(ポジフィルム)の雰囲気を持つ。そして、やはり夜間撮影がいい。画面に明るいネオンサインの輝きが入るなど明暗の差がある場面でも破綻がなく、ノイズも目立たない。文句なしにいい夜景画像が得られる。Xiaomi 12T Proで撮った夜景よりも、きれいで雰囲気のある画像を得られる感じだ。これなら、スマホ代わりに日常使いをしても全く問題はない。
 一方で、全体的に見てXiaomi 12T Proよりも圧倒的に良い画像が得られる、というわけではない。やはり目立ったアドバンテージはない。発色はF200EXRの方が自然だが、解像感、シャープネスは確実に落ちる。結局はP5000と同様に、意図的にこうした雰囲気の画像を得たいとか、原色CCDの発色を活かした作品作りをしたいというのでなければ、わざわざ日常使いするほどのことはないだろう。ただ、今回久しぶりにF200EXRで撮影してみて、時々散歩に持ち歩いてもいいかもと、本気で思わせてくれたことも確かだ。F200EXRは、やはり「名機」だった。

繁華街夜景 by F200EXR
池袋西口 by F200EXR

■ニコン Coolpix P330

 さて、最後にニコンCoolpix P330だ。発売が2013年と比較的新しい(といっても10年前の製品だが…)。そしてこのP330は前2機種と異なり、撮像素子がCCDではなくCMOSだ。1/1.7型原色CMOSで1200万画素、5.1~25.5mm(35mm判換算24~120mm)の光学5倍ズームを搭載、F値は1.8(広角側)~5.6(望遠側)だ。広角側のF値が1.8とかなり明るいこと、広角側の画角が24mmから始まること、RAW記録に対応していることなど、この機種は多少ながら高級コンデジに近いスペックを持っている。しかし購入価格は4.5万円ぐらいだったから、まあ普及機の範疇に入るだろう。僕は、このP330を前々機種のP300(2011年発売)からステップアップして使っていた。ほぼ直方体とも言える直線的なデザインで薄くコンパクト、持ち歩きやすい形状・サイズの機種だった。この機種もまた、国内外の旅行に持ち歩いて大量の写真を撮った記憶がある。
 さてP330は、もともと「カッチリ」したエッジの効いた描写をする機種で、発色に派手さはなくナチュラルで大人しめ、描写は少し硬調といったデジカメだ。常用していた時は、デジタル一眼やミラーレスに近い画像を吐き出すという感触を持っていた。で、今回久しぶりに撮影してみたら、そうした記憶通りの画像が得られることを再確認した。夜間撮影にも強く、ノイズが少ない絵が撮れる。1200万画素の普及価格帯のコンデジにしては、解像度を感じるシャープな画像だが、ある意味では特徴がない画像とも言える。手持ちのスマホ、Xiaomi 12T Proで撮った絵と比較すると、原色CCDの前2機種とは異なり、かなり傾向がよく似た画像だ。つまり、可もなく不可もない「高画質」の画像が撮れるということだ。これは、つまらないことだとも言える。撮れる絵が最新のスマホと同じような画像ならば、あえて使う意味がないからだ。
 ということで、今でも十分に通用するほど高画質のデジカメながら、スマホとは別に持ち歩いてもつまらないと結論付けた。だが、これで終わってしまうのも面白くない。そこで、普通にオートで撮影するのではなく、シーンモードの中から撮影時に効果を確認しながら撮れる「スペシャルエフェクト」を使ってみることにした。普通はこの手の出来合いの内蔵エフェクトはほとんど使わないのだが、今回に限って全てのエフェクト効果を試してみた。その結果、とても気に入ったのが「高感度モノクロ」と「硬調モノクローム」だ。いや、かつて頻繁にこのP330を持ち歩いていた時に、一度も使ったことがなかった機能である。特に、硬調モノクロームで撮った画像がとてもいい。気にいった。

 僕はかつて銀塩フィルムカメラを使っていた時代に、白黒フィルムの自家現像をやっていたことがある。トライXと D76の世界だ。その頃、面白半分に硬調現像液のD19を使ってみたことがある。白黒のメリハリが強い独特の絵が得られる。D76を使う場合でも、意図的に現像時間を長くして、さらに3~4号の印画紙を使うことで硬調の写真を焼くのが好きだった。

 P330の「硬調モノクローム」で撮ると、トライXを硬調で現像した時と同じようなコントラストが強い独特の画像が撮れるのだ。いや、これは非常に面白いと思った。ちなみに、前々機種のCoolpix P300を引っ張り出してみたら、同じようにスペシャルエフェクトの中に「硬調モノクローム」があった。P330と同じバッテリーなので装着して撮ってみたら、P330と同様に白黒のメリハリが強い画像が得られた。P300の方は撮像素子が1/2.3型とP330よりも小さいが、硬調モノクロームで撮った画像はP330とあまり差がなく、これも悪くはない。このP330とP300、どちらもモノクロ専用スナップ機として今後時々使ってみようと思った次第である。
 以下は、P330の硬調モノクロームで撮った作例だ。特に、上の夜景画像を拡大してみて欲しい。明暗差の大きな被写体を、破綻なく写しているのが素晴らしい。

夜の池袋西口街角
池袋西口アゼリア通り付近

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