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第3話»出勤だ!

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6時15分
ピッピッ!
目覚ましが鳴った。
あっ、止めるの忘れてた。
奈美はすでに起きてトイレの便座に座っていた。
便座に座った途端何かが起きると
誰かが言っていたな。マーフィかっ。
携帯は鳴るし
宅配便が来るわ
お節介な親戚も来るわ
謎の営業マンは突然来るし
便秘の原因は至るところにある訳だ。
まぁでも
目覚ましは止めなきゃ鳴らないと困るな。
あっ!出た(^^)

通勤の仕度を終えた奈美は玄関へと向かう。
そこに備え付けの小さな鏡を見る。
靴箱から取り出したのは
お気に入りのパンプス。
1年半前に叔父が経営する会社に
転職した際に買ったモノ。
この靴を見る度にあの頃を思い出す。
私の想いが詰った一足だ。
靴を戻し振り返ると部屋全体が
目に入った。
ゴミが大合唱している。
これも変えなきゃ。
今日は収集日だ。
奈美は中サイズのゴミが入った袋を持ち玄関を出た。

奈美の職場は平たく言えば美容サロン。
それを叔父がシステム化して
多様性を持たせた会社としていた。
多店舗運営で業績は上々のようだ。
奈美は新人研修も終わり、なんとか
1人前として、しっかりとシフトに
加わっている。
最寄りの駅を降りた奈美は
人通りの多い場所に建つ
ビルの5階フロアへ

ほぼ奈美入社と同じ位に建ったビルだけに
まだ新しく綺麗な造りになっている。
エレベーターも最新のヤツみたいで
とっても静かでクール。
どこぞのドラマ風にドアが開くと
さっそうと髪を上げ、前に出る。
アレ!? 誰か居るぞ。
今日は奈美が鍵当番なので
早目に出勤したつもりだったけど、
もう店前で私を待つスタッフが居た。

今井時沙苗、先月この店舗に回されて来た新人だ。
どういう訳か私が指導する形になっていた。
「塚元先輩! 今日、鍵当番ですよね」
奈美の姿を見付けるなり明るく手を振っている。
先輩は付けなくていいからと言ってはいるんだが。
割りと素直なので好感は持っている。
なので奈美はこの子をイマドキと呼んでやっている。
それを気に入っているようだ。

「イマドキ、早いね」
「ハイ。 店開けを覚えておこうかと」
良い心掛けだ。
奈美はイマドキの頭を撫でてやった。
身長も同じ位で話しやすい。
しかも体型も似ている。
顔は奈美の方が年上なのに何故か大人っぽい。
これはきっとメイクのせいだろう。
奈美はバッグから鍵を取り出し
ドアを開けようとしたがイマドキに
鍵を渡し開けさせることにした。
折角、早起きして来たんだから
店開けヨ♫







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