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好きじゃないけど、嫌いじゃない

「好きじゃないけど、嫌いじゃない」
○○くんのこと、どう思ってるの? と廊下でいきなり聞かれたから、そう答えた。

中学1年の4月だった。
小学生のとき、習字の教室が同じだった○○くん。私に好意を持っていると、クラスメイトの女の子を介して伝えてきた。彼の書く字は、見とれるほど素敵ではあったが、彼と話したことはなかったし、人を派遣してきたことに少しむっとした。だから「好きじゃない」と言ってやった。

しかし、このことが学校全体のビックニュースになってしまう。

彼は、校内一のモテ男だったようだ。あのイケメンをためらわずに振った女がいるらしいと、瞬く間に校内に話が広がってしまった。

連日、どんな女なのかと私を見にくる人が絶えない。彼って、そんなに有名人だったのか。うかつだった。

それをきっかけに、仲良くなった人もいた。でも、いいことばかりではない。

彼は女子ファンも多かったが、男子ファンも多かった。彼に憧れる男子生徒は、〝 あの○○くんが好きな人 〟というだけで、私のことが気になって仕方がなかったみたいだ。それを恋愛的な好意と勘違いされることもしばしば。正直なところ、話したことも見たこともない人から好意を伝えられても、困る。知らないところで何度も視線を送られていたと思うと怖い。

さらに、見知らぬ女子生徒から嫌がらせを受けるようにもなる。自転車にごみを入れられたり、はしばこを捨てられたり、教科書を隠されたり。「○○さんは、△△くんのこと好きなのに、ひどい」とすれ違いざまに言われたりもする。私はその男子生徒のことも女子生徒のこともまったく知らないのに。ひどい話だ。

私には、別に恋心を抱いていたクラスメイトがいた。ついには、その彼からも「好きじゃないけど、嫌いじゃないって言い方は冷たすぎ」と言い放たれる。悲しい。私が何をしたって言うんだ。

みんな勝手だ。私の人生にずかずかと土足で踏み込んできて。
興味がない恋愛のステージに勝手に立たされ、周りから噂される生活はもううんざり。私にだって選ぶ権利はあるはずなのに。誰かが私を好きだと言えば、くっつけようとしてくる周りにも嫌気がさす。

大人になった今でも、お願いしていないのに、人の恋愛に干渉する人を好きになれない。自分で選べるし、自分でコマを動かせるのに。なんで、放っておけないんだろうね。そういう人を見かけるたびに、もっと自分の人生に集中する人が増えてほしいなぁ、と思う。

今日はちょっと辛口。

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