魔物が現れてござる

今まで見ていた夢の、一場面。

私は、関白になる前あたりの羽柴秀吉らしい。
室内で着席しており、傍らにはかつての盟友、今は部下の大名がいる。
机には古い妖怪画のようなものがおいてあり、それを捲りながら眺めていた。
すると、脇にいる大名の男が中空を見上げて急に怯えだし、それ、そこに妖しの物が、とか言って震えながら指さす。
見ると、腐ったような顔色の女性の顔が中空に浮かび、無表情にこちらを見下ろしている。
秀吉である私は、小癪な、とか言って立ち上がり、その顔を手で拭うと、顔は黒板に描いた絵のように消えていく。
これでよかろう、と言って脇の男を振り向くと、彼は、さらに恐ろしい魔物が現れてござるとか言い張り、恐怖に囚われている。
私は訝しみ、はて面妖な、そのようなものなど見えないぞと言い返すが、その声は耳に届いていないらしく、挙げ句の果てには気を失って倒れてしまう。

そのとき、私は急に理解した。
この時代の人間は、現代人には見えない物が実体として見えて、それに脅かされ、命を奪われることすらあるのだと。
愚かなことだと思うが、私には感じられないものである以上、どうすることもできない無力感を味わうという、そんな夢だった。
これは何の暗喩なのか、起きているときに見た何らかの映像と関係があるのか、それが何だったのかは全く分からない。
不愉快だというよりは、呆れ果てていた気がする。
(2014.1.30)

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