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No.014 宮下 裕秋 (児童養護施設職員)

【児童養護施設で子どもの為に何かがしたい】

1.どうして福祉の仕事を選びましたか。(法政現福に入学したきっかけは何ですか)


(現代福祉学部を選んだ理由)
中3の頃から児童養護施設の職員になりたかったからです。

そう思ったきっかけは、自分自身の不登校です。その時に、日本の児童福祉に興味を持ち、児童養護施設の存在を知ったことで、児童養護施設の職員として働きたいと思いました。

もちろんそれはきっかけであり、自分の中に、将来子どもの世話をしたいという思いもありました。

そこから、児童養護施設の職員になりたい。職員になるには、福祉の勉強をしなくてはいけない。でも、具体的に何を勉強したら良いのか分からない。

とりあえず福祉を学べるところを目指しました。そう進路を考えていた時に、縁あった法政大学の現代福祉学部に入学しました。

なので、正直なところ法政の現福を目指したというよりは、福祉系の大学を目指していたことになります。


福祉の専門学校は考えなかった?


考えなかったです。専門学校では、一つの事に特化して学べるけれど、それだけで良いのかなと当時は感じていました。

だからあくまでも、4年制大学で福祉を学べるところという基準で進路を決めました。なんとなくだけれど、他の事も学びたいと思っていたので。

すべては児童養護施設で働くために。そこを目指す為の通過点として、捉えていました。


(福祉の仕事を選んだ理由)
正直分かりません(笑)

仕事として選んだ理由は〇〇です。という理由が言葉で出てこないんです。
というより、先ほど話したところが理由になるのかな。中3からこの仕事を選んでいたので。


強いて挙げるなら母親の影響かもしれません。

福祉関連の仕事をしていた訳ではなかったですが、隣に住む子どもの面倒を見たりするような世話好きの母親でした。

その様子を見ていたこともあり、誰かの為に何かをする(世話をする)というのが日常にありました。

自分自身も、親戚が集まった際に、6つ年下のいとこの世話をしていたので、そういう経験もひとつのきっかけになっているかも知れません。

大学4年間、一度も児童分野を辞めたいとも思わなかったですし、離れることもありませんでした。まぁ、児童養護施設で働きたいと考えていましたからね。

今の職場に入職したのは、ボランティアをしていた当時、職員からのお誘いがきっかけです。

ただ、二つ返事で「入職します」とはならなかったです。今までは、遊ぶという視点から子どもたちと関わっていたけれど、職員になったらそういう訳にもいかないだろうなと。

やりづらいなと思いましたし、何より、子どもが混乱してしまうのではないかと。

そういう意味で、ボランティアから就職という立場で関わる為の切り替えが難しいと感じていたからです。

だから、見学やボランティアを色々な施設でやりました。

そんな中で、正直、仕事内容(仕事のきつさ)はどこも同じだと感じるようになりました。

であれば、職員同士の関係を重視したい。職員関係の負担を減らし、子どもに対して力を注げるような施設にしようと思いました。


そうなると、ボランティアで6年近く関わっていた今の職場なら、私の事もある程度知っていてくれているし、私も職員を知っているので、職員同士の関係という負担が減り、子どもとしっかりと向き合えると思えました。


【職員として保護者として子どもたちと関わる】


 2.あなたの仕事について教えてください。

一言で表すと、親が自分にしてくれたことをすることだと思っています。

朝、子どもを起こし、朝食を食べさせ、学校に行かせる。その間に家事をして、子どもが帰宅すれば、宿題を見たり、風呂に入れたり、夕食を食べさせ、寝かす。というイメージですね。

もちろんそれだけではないですが、基本的な仕事流れとしてはそんな感じです。


それに加えて、ケース会議やイベントの準備、学校の先生とのやり取り、子どもの送迎(通院等)、子どもひとりひとりの記録等です。特に子どもひとりひとりの様子は細かく記録に残しています。


子どもの多くは、親からの愛情を十分に経験したことがありません。その為、職員との関わりを多く求めてきます。生活のなかで職員としてどれだけのケアが出来るのかがこの仕事難しさだと感じます。



勤務で特徴的な事は、断続勤務と呼ばれる特殊な勤務体系があることです。

朝、子どもたちが通学するまで一旦勤務し、その後長い休憩を取り、子どもたちが学校から帰ってくる時間に合わせて再び出勤するという勤務です。

日中は子どもたちがいないので、このような勤務になります。


こうした勤務の為、ユニットを超えた職員の連携も重要になっていきます。どうしても1人で勤務する時間帯があるため孤独感を感じてしまう時もあります。

しかし、先輩職員から「〇〇のユニットだけで見れば確かに1人かもしれない、ただ、他にあと3つのユニットがある。という事は、君以外に職員が3人いる。そういう気持ちで働きなさい。決して孤独ではない。」と言われ、ハッとさせられました。

特に、子ども同士や職員と子どものトラブルでは、関わる職員を変えた方が良い場合もありますので、この言葉は大切にしています。


児童養護施設職員は、子どもひとりひとりの保護者であり、子どもひとりひとりの将来に向けての環境調整を行っています。 


この仕事は、子どもが好きなだけではなく、人が好きでないと出来ないと思います。 


【“継続すること”“伝えること”】

 3.大学での学びが仕事で活きていると感じるのはどんなときですか。

ボランティアや実習等でひたすら現場に触れていたことは、とても大きな学びになりました。

ボランティアでは、継続する大切さを学びました。

一時期、ボランティアにいけない時期があり、久々に子どもと接する時に関わりづらさを感じたことがあったからです。

自分の感覚では「鈍る」という感じです。その時に「1度離れるとだめだな」と思いました。

というのは、ボランティアの楽しさが失われてしまったと感じたこと、また親と離れてしまった子どもに「また離れた」という気持ちにさせたくないという思いがあったからです。


もちろん児童養護施設の職員になるためにという心構えもありましたが、やりたいこと、やるべきことは、しっかり継続させ、楽しさや面白さを継続させる為にも大切だと感じました。


実習は、児童養護施設で行いました。児童養護施設の職員になるためには必要な過程ですが・・・実は、実習が怖かったんです。

というのも実習を乗り越えられなかったら「児童養護施設の職員として俺は働けない」と考えていたからです。

ポッキリ折れてやりたいことが崩れてしまったらどうしようという気持ちで、実習前は「怖い」と実習担当の先生に言っていましたね(笑)

たかが、実習。一ヶ月だけ。しかも定時に来てきっちり定時に帰れる。実習が乗り越えられなかったら辞めた方が良いなとまで思いました。


また、大学のゼミや授業内で、1つの物事に対して何名かで意見を出し合うグループワークのようなものを行ってきました。

そこで、今まで身に着けてきた知識を踏まえ、自分の意見を伝えることの大切さを学びました。

そうした場を通じて自分の意見を伝えてきた経験は、今でも職員との意見交換中で活きています。1人の職員として自分はどう考えるのか、きちんと伝えられている実感があります。

【福祉現場における教育/地域における施設の影響】

 4.いま興味を持っていることやテーマは何ですか。

福祉と教育の連携です。
大学院の時の実習で、子どもに勉強を教える楽しさを知ったからです。

解けなかった問題が解けるようになる。目の前で子どもの「出来ない」が「出来る」に変わる瞬間が見えることが楽しかったです。

その時に子どもの学習支援に携わりたいと感じました。


しかし、福祉の現場での教育がどうなっているか調べてみると、不登校等の問題の発生と、その問題解決の為に職員が摩耗してしまい、学校と施設の連携不足やすれ違いがあることを知りました。

大学院ではこのことに関連することを論文にもしました。なので、福祉と教育ということに関して興味があります。


あとは、地域と児童養護施設の関係です。
これは現場を経験したことで気づいたことですが、地域の状態がその地域にある施設の子に影響するということです。

やんちゃが多い地域は、施設の子もやんちゃになるし、落ち着いている地域であれば、落ち着く。みたいなことです。

ある調査で、やんちゃな子が多い地域の施設の子は、自己肯定感が低い傾向にあるということを知ったときに、私も現場に入ったときに同じようなことを感じていましたが、何か関係があるのかなと思いました。


【1人1人の子どもたちを見届けたい】

5.今後の目標を教えてください。

現状維持です(笑)

ですが、近い目標としては社会福祉実習指導員になることです。
施設としても、社会福祉士実習の学生を受け入れることも出来るようになるので。


あとは、6年間は同じ場所で勤務したいと思っています。というのも1人の子どもの存在があります。今の職場に配属してすぐに、その子どもにとてもきつい事を言われました。

正直、心折れました。でもその時に「この子の卒園を見届けよう」。そう思いました。

色々なことがありましたが、今ではとても良好な関係を築けています。

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