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東光寺磨崖仏「宵の薬師」


宮城県仙台市宮城野区岩切に東光寺という曹洞宗寺院がある。
東光寺は、平安時代に慈覚大師円仁が開山したと伝えられ、鎌倉時代には陸奥国留守職に任じられた留守氏の菩提寺にもなっている古刹である。

鎌倉時代の東光寺は、多賀国府の北西に位置し、留守氏をはじめ、国府の有力官人や町場の有力者などの墓所が営まれる霊場であったといわれる。
寺伝によると、「多賀国府御寄附」の天台道場として発展したものの、洪水により荒廃し、天文元(1531)年に文統和尚が中興し、曹洞宗に改宗したとのこと。

東光寺には、境内や周囲にある横穴群・石窟仏群・板碑群・城跡で構成される東光寺遺跡がある。今回は、そのうちの石窟仏群(東光寺磨崖仏)を紹介したい。

東光寺のある岩切は、古くは宮城郡に属しており、宮城郡内には、東光寺磨崖仏を含め、慈覚大師円仁作と伝わる薬師如来坐像が3箇所ある

これらは、慈覚大師円仁が一夜のうちに彫ったという伝説にちなみ、「暁の薬師」(湊浜薬師・七ヶ浜町)、「夜中の薬師」(道安寺・利府町)、「宵の薬師」(東光寺・仙台市宮城野区)と呼ばれている。

なお、慈覚大師円仁作との伝説が伝わるが、実際の製作年代は中世(鎌倉時代~室町時代)と推定されている。

東光寺の山門に続く坂道を進むと、駐車場があり、そこから鐘楼の脇にある道を進んだ先に、磨崖仏のある石窟がある。

石窟遠景


石窟の付近には板碑もある。東光寺遺跡では、寺の裏山を中心に建治4(1278)年から延文5(1360)年にかけての紀年銘のある板碑が150基以上確認されており、県内有数の板碑群といわれている。

板碑

お目当ての磨崖仏は板碑の隣にある扉の奥にある。鍵がかかっていないので、扉を開けて参拝する。

扉の奥に7体の磨崖仏がある


扉を開けると、正面に阿弥陀如来坐像と薬師如来坐像が彫られている。この2体については、レプリカが仙台市博物館に展示されている。

薬師如来坐像は薬壺を持っているのが確認できる。この薬師如来坐像が「宵の薬師」である。

阿弥陀如来(左)と薬師如来(右)

石窟の左壁には菩薩立像(写真右端)と僧形坐像2体(写真中央・左端)が彫られ、右壁には菩薩立像2体が彫られている。

また、7体の磨崖仏がある石窟の向かって左手には、薬師如来坐像を中心として、両脇に2体ずつ立像が彫られている石窟がある。

岩切磨崖仏はいずれも風化が激しく、尊容も明瞭でないものが多い。また、石窟の中は虫がとても多くいたため、虫が苦手な方はご注意を。

東光寺磨崖仏全景

【所在地】宮城県仙台市宮城野区岩切入山22

【駐車場】あり

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