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あなたのことが嫌いになりたくて.

タイトルを書いた時に句点が「.」になっていて一瞬,我に返った.私はいま卒論を書いている最中なのである.期限は明日の16時.本当はこんなことをしている場合ではない.でも,それでも,書かなければいけないときがあるのだ.

元カノのことが忘れられない

ふとした時に思い出してしまう.今もそうだ.

たくさん写真を撮ったけれども,そんなものは全て消した.LINEもInstagramも全てブロックした.もらった手紙も全部捨てた.

できるだけ直接元カノのこと直接思い出す要因は生活の中から排した.

それでも,本当にふとしたときに思い出してしまう.

恋バナはその典型だ.私が今までの人生の中で一番好きになった人だし,以降の人生でこれ以上好きになる人はいないだろうと思っている.だから,自分の話をしていなくても,話を聞いたときにふと思い出してしまう.恋と聞いたら私の中であの人が出てきてしまうのだ.

他にも元カノが住んでいた県や市の話が出てくると思い出してしまう.遠距離恋愛だったので,私が住んだことのない街に元カノは住んでいた.だからその辺りの土地の記憶が,元カノ以外のものが少なく思い出しやすくなってしまっている.

おまけに困ったことに,名前というのは認知していると余計に頭に入りやすいのだ.元カノが住んでいたのは「長野県」だが,長野県は東京からのアクセスも良いし観光地として割と取り上げられていることが多い.そういうことも,昔は何も意識していなかったのに,今は名前を見るだけでいろいろと思い出してしまって辛い.もはや県ごと消滅してしまえばいいのにと思っている(ごめんなさい).

それから,季節とか.あの頃はこんなことをしたな,というのがふと思い出されてしまう.特に桜の咲く季節の思い出が多いから,次の春を私は無事に乗り越えられるだろうか.

こういうのは他の思い出を重ねていくしかない.長野県を見て元カノのことを思い出してしまうのは,長野県への思い出が元カノ関連以外に無いに等しいからである.

だから,元カノのことを忘れられるくらい思い出を作りたいし,そんなことで自分の中から日本の都道府県が丸々一個消滅させられるのは勿体無いことくらいわかっている.桜の咲く季節が丸々消滅させられるのは勿体無いことくらい,私だってわかっている.

それでも,そう思わざるを得ないくらい,今の私は辛いのだ.


後悔していること

元カノとの関係で最も後悔しているのは,別れ話をするときに会わないまま
話を進めてしまったことだ.

私は振られる側だった.だから,別れ話を出されたときにもはや主導権は無かった.

恋愛に限った話ではないが,主導権を相手に握られると逆らえなくなってしまう.主導権とはそもそもそういうものだと思うが.
大事なときにも,それが後々に響くようなもののときでも,そもそもそんなことに気づくことなく,ただ相手の言い分に従ってしまう.

元カノと別れようとなったときもそうだった.

一度会って話したい,と言った.でも,会うのは考えさせてと言われてしまった.
その話が出た中で結論を出さないといけない時間を作られてしまった.今思えば早計だった.

なぜ会えなかったかといえば遠距離だったことも大きかった.遠距離恋愛においてしばらく会えない中で問題を抱えたら,すぐにまともにコミュニケーションすら取れなくなってしまうんだということを思い知らされた.

恋人に振られる明確な理由を作ってしまった,ということではない.ただ私の精神が不安定になっていたことに対して,「重い」と思われてしまった.

精神状態が安定していないとまともに恋愛できないということもわかった.

でも,最後に会わずに,最後に会ったときにはまだお互い「好き」という状態だったのに,そのまま別れてしまったことをとても後悔している.

結果として,振られたという事実を,まだ私は消化しきれていない.

ずっと引きずっている.

それは,ある種「現実を見ないままに」関係性が変わってしまったからだと思っている.

別れるんだったら,多少なりとも相手を嫌いになってから別れたかった.

もしくは,相手から本当に嫌われていることを突きつけられてから別れたかった.

「まだ好きな気持ちが残っている間に別れたい」

振られたときに,相手からこう言われた.それを素直に受け入れてしまった.

でも,今なら「完全に嫌いになってから振ってよ」と思う.

その当時の私には元カノからこれ以上嫌われることが耐えられなかった.
でも,今ならもっと嫌われたほうがマシだったと思う.

振られた翌日,元カノと電話した.
相手が「アフタートークをしたい」と言ったからだ.

電話で話している時間はやっぱり楽しかった.『花束みたいな恋をした』を思い出した.

これが楽しいからと言って,恋人として楽しくやれたかはまた別だということは分かる.でも,そうだと納得していない自分がいた.

相手が「やっぱりアフタートークって楽しいよね」と言ったので,「前の彼氏と別れた時もしたの?」と聞いた.図星だった.

これのせいで,未だに嫌われていないんじゃないか,という幻想を抱いてしまう.振るならもっと残酷に振って欲しかった.


あなたのことを嫌いになるために

世の中にはいろいろな辛さがある.私が今苛まれている辛さは三つだ.

一つ目は,締め切りに追われる辛さ.卒論だ.

二つ目は,好きな人に「好きだ」と言えない辛さ.

そして三つ目は,忘れられない辛さ,である.

私が今このnoteを書いているのは,二つ目の辛さと三つ目の辛さを忘れて,一つ目の辛さとちゃんと向き合うためである.

だから私は,今からの24時間だけでも,あの人のことを大っ嫌いになる.世界一嫌いだ.いや,宇宙一嫌いである.


あの人を家に送るために300kmくらいドライブした.あの人は助席に座るのが好きだと言っていたが,私は運転が嫌いだったし,運転をせがまれるのも嫌いだった.

ちょっと長めの旅行の途中に熱を出した.あの人は「洗濯物干しておくね」と言ったけど何もしなかった.結局干したのは私だった.やらないことをやると言って結局やらない君が嫌いだった.

男友達と飲みに行って終電で帰ってきたり電車がないから送ってもらっていた君が嫌いだった.

前に告白されたことのあるという男友達と二人で遊びに行く君が嫌いだった.

君は急に電話してくるのに,私が急に電話してみたら「なんで気を遣ってくれないの」と言ってくる君が嫌いだった.

過去のトラウマから逃げ回ってばかりの君が嫌いだった.

大事な話をし始めるとすぐに「眠くなってきた」と言う君が嫌いだった.

院試を前に控えた私に対して勉強しろよオーラを出していた君が嫌いだった.

精神状態が不安定になったときに,話をせずにただ私を遠ざけるだけ遠ざけた君が嫌いだった.

嫌な思い出ばかりを思い出して勝手に私を嫌いになる君が嫌いだった.

まだ嫌いじゃないよと言いながら私のことを振る君が大嫌いだった.


私は振られた側だけと,それでも嫌いな部分なんていくらでも出てくる.
誰が相手でも人と付き合っていれば嫌な面くらい,いくらでもある.

普段の私ならこの後に「でも」と相手の良い面も思い出してしまう.でも,今日はそれは無しだ.

友達が嫌いな人のことを話しているときに「私そんなに人を隅から隅まで嫌いになったことないや」と言ったら,「嫌いな人の話をするときに嫌いな相手のいい面も話していたらただ話が下手くそな人だと思うし,何よりそんなことを思いながら相手を嫌いになるのは辛いよ」と言われた.

それでも私は良い面とか好きな面を思い出してしまうし語ってしまう.だから辛いしこんなに苦しめられるんだなということがそのときによくわかった.

今日はそれは無しである.

「あなたのことは大嫌い」

これをあの人に面と向かって言いたい.



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