【読書感想文】『いやはや熱海くん(1)(2)』(田沼 朝著)
中学・高校と週刊少年ジャンプを愛していた。
いや、一方的な恋だったか。
『SLAM DUNK』『るろうに剣心』『NARUTO』「シャーマンキング」…
「今ここ」自分の事に全集中の男子はまぶしくて目が離せない。
発売日を待ちわびる日々。
合併号(次週の発売がない)なんて出ようものなら、何を目標に次の一週間頑張ればいいんだ!と途方にくれていた恥ずかしい過去を思い出す。
そんな漫画ばかり読んでいただろうか。
ずっと、大学生以上の歳にはなりたくないとぼんやり思っていた。
自分がどんどん漫画の「彼ら」からかけ離れ
「普通」の大人になっていくのが不安だった。
でも、あの頃から20年以上経ち
「いやはや熱海くん」を読んだとき、大人になってよかったなと思った。
きっとあの頃の自分には、この漫画の良さは分からないだろうな。
ムフフというかんじ。
主人公は美形で物静かな熱海くん。
彼が友達やその家族、同級生と繰り広げる日常は、淡々としていてだいぶ面白い。
ギャグマンガではないけれど、関西弁で飛び交う日常会話の中には、小さなノリとツッコミが満載で、ニヤニヤしてしまう。
作中、取り立てて大きな事件が起こるわけではない。
いたって普通の毎日だ。
でも、熱海くんは考える。
自分の気持ちの変化、少しの違和感、ささいな出来事について。
その一つ一つに立ち止まって、ぐるぐる考える。
その不器用さ、それを見守る周囲の何気ない温かさにグッと心をつかまれる。
心理描写はとても繊細だが、過剰にドラマチックにしないところもいい。
あくまで普通の日常の一コマとして描かれているのも好きだ。
あの頃不安だった「普通」の生活って、意外と奥が深い。
なんでもないような些細な出来事で、人の頭の中には、お花畑が咲く時もあるし、台風のような嵐が吹き荒れている時もある。
読み終わった後、ニヤニヤしながら、「いやはや…」と言いたなること必須だ。
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