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PFFで観た『あみこ』と『おやすみ、また向こう岸で』、そして山中瑶子監督のこと。

今更だけど、第45回ぴあフィルムフェスティバルで観た『あみこ』と『おやすみ、また向こう岸で』、そして山中瑶子監督のことを。

そもそも私が絶対に『あみこ』を観ようと思ったのは今年の2月で、ライターとして参加させていただいているCINEMAS+で河合優実さんによるこんな記事を読んだから。

記事では、河合さんが女優になるまでの決断、そして彼女の「人生を変えた」『あみこ』と出会ってからのことが綴られていた。文章から滲み出る情熱に圧倒されて、読み終わる頃には泣いてしまっていた。

それから2ヶ月後の4月、坂本龍一氏の関連作品をオールナイトで上映するイベントに運良く当選し、参加した。

この時のトークイベントに登壇していたのが、山中監督である。なんという偶然…!!と、1人で客席から盛り上がっていた。(そしてこの時、「インドに呼ばれた」とインド旅行の話をしていて、まさに最近インドに行きたいと思っている自分には刺さりまくった。個人的にもっと話を聞きたかった)

オールナイト上映から4ヶ月経った8月、またCINEMAS+で、こんなスペシャルな対談を読む。

2人の映画に対する思い、行動力の凄さに慄き、またうるっときてしまった。同世代の女性ということでぶっ刺さったのもある。

このタイミングで、今年のぴあフィルムフェスティバルで『あみこ』を上映すると知る。チケット販売開始時間の前からPCの前に張り付いて、無事にチケットを入手。初めて「観たい」と思ってから6ヶ月後、満を持して鑑賞する。

『あみこ』について

「わかる〜!」と心の中で1人で盛り上がったのが、あみこがアオミくんとの会話を「魂の会話」と表現し、尊く感じていたところ。アオミくんはサッカー部で見るからにモテそうで、教室でちょっと浮いている私にも気さくに話しかけてくれる。しかもその会話が学校の話ではなく少し達観したような内容なのがまたいい。普段家族や友達としない特別な話が、アオミくんとだけ共有される。目に見えない、他の人よりも深いところで繋がっている気がして、ドキドキワクワクしちゃうのだ。

だがアオミくんも呆気なく学校の可愛い瑞樹先輩と付き合ってしまう。あみこはアオミくんに「なんで付き合ったの?」と問い詰め、瑞樹先輩のことを「大衆文化」と表現していた。かっこよくてスマートで、でも裏で自分と「魂の会話」をしていたアオミくんは、他の男とは違うはず。勝手に期待して、妄想の中でどんどん自分好みに変化していったアオミくんは、まさか誰もが憧れる「大衆文化」の瑞樹先輩と付き合うわけがないと思っていた。しかし現実は、アオミくんは瑞樹先輩にベタ惚れ。ここで「裏切られた」と感じるあみこの気持ちが痛いほどわかる。

ここまでが私が共感できた部分。だが『あみこ』はそれだけでない。街中で大声で叫んでいる「ちょっとヤバそうな人」と一緒になって叫んだり、カップルと駅でダンスしたりする。知っている感情もありつつ、ちょっとだけ非日常な場面も描かれていて、観ていてずっと楽しかった。ふふふと笑顔にさせてくれた。

『おやすみ、また向こう岸で』について

私がいいなと思ったのは、ナツキとカナコの連帯。長い期間一緒に過ごしていた友達だとしても、その子に恋人ができると、なぜか自分は2番手以降になってしまう。そして友達の恋人も我が物顔で堂々と横に居座り、「いつも〇〇と仲良くしてくれてありがとう」と上から目線で言ってくる。実際には上からではないかもだけど、余裕のある感じが腹立つのだ。

『おやすみ、また向こう岸で』でも、ナツキの現在の恋人であるヒロキは、カナコには負けないと思っている。そして「3人で暮らそう」というぶっ飛んだアイディアに渋々賛成する。この関係がちょっとシュールで笑ってしまったのだが…。段々と良くない方向に向かう関係、そして衝撃的なクライマックスまでの怒涛の展開。たった30分でここまで撮れちゃうのか、と色々な意味で驚いた作品だった。

2本立て上映後のトークイベント

2本立て上映後のトークイベントで、『おやすみ、また向こう岸で』に出演していた古川琴音さんと山中監督が登壇。

古川さんと山中監督はオムニバス作品『21世紀の女の子』の「回転てん子とどりーむ母ちゃん」でも監督とキャストという立場で共に作品を作ったと話していた。(『21世紀の女の子』は公開当時テアトル新宿で観たので、ここにも勝手に運命を感じてしまった)

2人が『おやすみ、また向こう岸で』の撮影当時のことを振り返る中で印象的だったのは、作品に出演した古川さんと三浦透子さん、そして山中監督の3人は、全員同い年らしい。「若い世代で新しいものを作りたい」と山中監督が話していたのが印象的だ。『あみこ』を撮った時は、その時でないと生まれない感情を原動力に作品づくりに励んだという。今、現在進行形で生まれる喜怒哀楽を大事にしていきたいと考えさせられた。

河合さんとの対談もそうだが、同世代で、同じ女性で、映画が好きという共通点を持つ彼女たちがここまで素晴らしい作品を生み出したということに、まずは刺激を受ける。私も、映画を観たり文章を書いたり好きなことを続けていこうと改めて思った。そしていつか山中監督にお会いして、直接お話ししてみたい。その時自分は、映画好きなライターとして対話できたらいいなと密かに願っている。

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