21世紀初頭、J-POPのカリスマになるはずのアーティスト達は迷走した。

2001年のミレニアム奉祝の最中に登場したDRAGON ASH、RIZE、椎名林檎、宇多田ヒカル、BUMP OF CHICKEN、そしてヴィジュアル系の最終形態・ゴールデンボンバー…みんな何処へ行った、見送られることもなく。

このPVは友人の映画監督が撮った2005年のPV作品。英語でラップをかまして、最新鋭アメリカ発ミクスチャーロックバンドシーンに追いつけ追い越せでやってるJPOPの伝統は変らず、だが肝心の民衆の心理はかつての吉田拓郎、かぐや姫、イカ天ブームで出てきたパンクバンド・へヴィメタバンド、打ち込みユニットが我が物顔でテレビに出まくることに陶酔する状況ではなくなり、前時代的なモノに成りつつあった。

お気に入りのバンドや歌姫のブロマイドを売る店は次々と姿を消し、バンギャのサロンの場であったライヴハウスもまた相次ぐ閉店に見舞われた。

著者のかつての主戦場、渋谷屋根裏が潰れる事になったのには驚愕した。一体どれだけの大物ミュージシャンを輩出してきたのだろうか…アングラがカウンターを覆す歴史的場面を幾度も造って来た、その郷愁も空しく解体したていった…。

「私たちにはもう、歌う場所が無いのか?」

全て、IT技術革命・WEB2.0の生活への躍進の所為。一億総評論家のテレビ一強時代から、一億総表現者のソーシャルネットワーク時代へ。その時代のうねりにかじをとれきれず、ポピュラー音楽で成功を夢見た、どれだけの若者がパソコンにひたすらかじりつくニートもどきと成って行ったことか。

「無感情に歌う音色なんてふざけんなよ」―初音ミクの存在に怒りを露わにしたディーバは少なくは無い。「レコードはモノとして手に取って欲しいんだ」―ストリーミング・動画再生回数なんていう金銭的無価値なサムズアップにプロの人達は口をつぐむ。

10代の頃に憧憬した20世紀型のJPOPムーヴメントを、筆者は経験しなかった。スキマ的な音楽活動をしていれば「あのバンドが社会現象を起こしてさ」なんて噂を耳にしていたはずだが、ポピュラー音楽の売れ方が全てSNSが発端になる売れ方に変わっていった。

「私はキガスさんの音楽がずっと好きになったんだ」―神聖かまってちゃんが無名時代に著者に送って来たメールだった。

まさかのまさかを起こすようなアマチュアが21世紀の社会現象を創っていくことになった、150年続いたポピュラー音楽の歴史が崩壊していく、匿名の時代。芸術と呼ばれるプロダクトを、人工知能によって破壊し造り変える事が可能になってしまった時代。

自分は今の「美」について想うーいくらなんでも「うっせぇわ」ではすまされないよ、と。


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