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シニアはフリーアドレスに困惑する。

本日より居室の席はフリーアドレスにします!

と代表取締役社長からの指示が来た。

フリーアドレスとは
自分の固定された席がないということである。 

えっ? えー えーー えーん、、

「1時間以上、席を離れる時は、自分の私物は
全部持って、デスク周りは空にして」

「窓側の3席(見晴らしの良い)は、
ここ1番の時、大切な時、思索する時に
限って使用してください」

「キャスター付き引出しは撤去します」

「デスクや引出しの物はロッカーに」

堂々と使えるのは研究員だけとなる予想。
じゃあ、はっきりそう言えば
いいじゃないか。

ここ1番ってなんだよ。CoCo壱番?(笑)
思索って何よ。
大切な時って?

「敬老の日」に私は座っていいの?
いや、その日は祭日で休みだわ。

社長の指示は絶対である。
背くことは辞めること。

スタッフ全員、
タラタラ文句を言いながらも私物をまとめた。
みんな、困っていた。

人は困ると、少しでも自分にとって
良い方向へ向かおうと考える。
とりあえずは、諦めない。

「人間は考える葦である」と
パスカルも言ってるじゃないか。

なので、
この会社で最も弱い葦である私も考えた。

だから、辞めてやるっ。

うそ(笑)

だてに長く生きてる訳じゃない。
今までだって、さまざまな難局を
乗り越えてきたじゃないか、、、。
辞めるもんか。
しぶとく、出勤してやる。

社長の思惑にまんまと乗せられている。  

私は私なりに考え、あらゆる人脈を駆使し、
秘密の自分の場所を確保した。

は、は、は、、解決したじゃん。

と思い何気に居室を見ると
そこには、
社長以下取締役と頭脳明晰の研究員だけの
輝くお部屋となっていた。

この世は、学歴ですわよ、、と
部屋のゴミ箱が嘯いてる気がする。


たとえば、
家での自分の居場所は私の部屋だ。

家そのものが私の居場所なのだが
夫とふたりで暮らしている以上、
ひとりきりになれる空間は限られる。

自分だけの部屋がなければ、
きっと落ち着かないだろう。

自分の好きなものだけに囲まれる幸せ。

この部屋に戻ることが出来るからこそ、
働きにも行く。
海外旅行にも行く。
京都にも行く。


会社内で快適な居場所を作って欲しいと
ずうずうしく言ってる訳ではない。

見晴らしの良い特別席にいつも座らせて
下さいと言ってる訳でもない。

そんなこと、私も私以外の誰も望んではいない。
だけど、
小さな質素な自分の小宇宙があっても
いいのではないか。
デスクとイスとキャスター付き引出し、
たったそれだけで
みんなが落ち着けるのだ。

フリーアドレスについて賛否両論がある。
調べてみたところ、

メリットとして
空いたスペースの有効活用。
スタッフ同士の
コミュニケーションがとりやすい。
コスト削減できる。

デメリットとして
PC、事務用品などの管理や移動が面倒。
いちいち席を探すストレス。
誰がどこにいるかわからんじゃん。

ということらしい。

だけど、会社は、病院の待合室ではない。

入れ替わり立ち替わりって、どうなの。
地に足がつかないようなものではないか。

スタッフ全員がフラットな状態で
働ける会社であれば、自由席も良いと思う。
遠慮しないで物言える雰囲気であれば、
それはそれで楽しそう。

だが階級の存在する職場で
自由席などありえないわ。

個人的意見だが、
フリーアドレスって言葉を
かっこいい、、と思ってるんじゃ??
ここは、麻布台ヒルズのオフィスではないよ。

結果として、

下っ端はいつも立ちっぱなし。

力のある人が部屋に来ると、席を譲る羽目に。

ずるい人が出現する。
ある人が、
「1時間以上空けなければいいでしょ。
50分で一応席外してね、すぐに戻るの」
その繰り返しをするらしい。

また、ある人は、
「知らん顔して座り続ける。
だって、時間計ってる人、誰もいないじゃん」

という具合で
スタッフ同士のコミニケーションとか
言ってるけど、人の悪さが明るみに出て
余計に悪化してるじゃん。

どうするんだよ。

なんだかんだ言っても
所詮、働く人は会社のコマだ。
経営者側は、
そのコマをどうやって動かし、切り捨てるか
考えているよね。

などと、ウツウツ考えながら歩いていると
前方から
社長が歩いてきた。

おはようございます。

いつもより明るい声で挨拶する私であった。
ウフ、フ、フ、、。

権力に弱い私である。

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