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東野圭吾「危険なビーナス」「悪意」

こんにちは、ぱんだごろごろです。
最近、娘が、読み終わった文庫本を、私のテリトリー(食器棚のスライドテーブルの上)に置いていくので、私は黙ってそれを読み、読み終えたら、娘のテリトリー(二階のベッドの上)に戻しておく、という、交換読書のようなことをしています。

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気が向いたら、感想を言ったり、聞いたりします。
娘と私とでは、好みが若干違うので(ぴったり合うこともありますが)、ぴんと来ない作品の時もありますが、それはそれ、世間を拡げる意味も込めて、批判的なことは言わず、娘が私に読ませようとした意図を汲み取ろうとしています。

まず一番には、せっかく文庫本を買ったのに、自分一人で読んだだけではもったいない。
採算を取るために、誰か別の人間に読ませよう、という、功利的な理由によるもの、と考えて、間違いのないところでしょうが。

しばらくは、現代日本の中堅の女性作家作品が続いていたのですが、最近は、ミステリーの東野圭吾が何冊か届きましたので、自分の頭の整理も兼ねて、あなたにお話ししたいと思います。

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東野圭吾作品はお好きですか?

私としては、面白いものが多い作家だと思います。
「白夜行」や「幻夜」は良かったですね。
「パラレルワールドラブストーリー」も、SF仕立てですが、面白い作品でした。

ただ、時として、やや薄味かな、と思う作品もあるので、そういうものは、上手く避けて頂ければ、と思います。

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「危険なビーナス」

さて、タイトルに上げた「危険なビーナス」ですが、簡単に言うと、アメリカから帰国した弟が失踪したため、弟の新妻と一緒に、兄である主人公が弟を捜そうとする話です。
ただし、失踪ものによくある、ハードボイルド系ではなく、遺産相続のからんだ、家族、親族間の確執がメインストーリーです。

獣医師という、捜査には素人の主人公によって、事件の様相が語られて行くので、深刻な話というよりは、コメディ要素のある、読みやすい作品になっています。
ただ、この獣医さん、惚れっぽい、という設定だけあって、弟の新妻に心を奪われてしまい、彼女に近付く男性ことごとくに敵意を示し、嫉妬するので、そういう部分を読んでいると、謎が解けるのを期待している身としては、主人公がうっとうしく感じられて、この点は、何とかして欲しい、と感じざるを得ませんでした。

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「悪意」

二冊目の「悪意」は、刑事の加賀恭一郎シリ-ズのうちの一冊です。
人気作家が殺されますが、犯人は早い段階でわかっており、では、なぜそんな犯行を行ったのか、という動機の解明に焦点が当てられた作品です。

実は私は、この作品を読み始めてすぐに、犯人が誰かわかりました。
そして、おそらく作者が張っているであろう伏線の手がかりにも気が付きましたが、そこまででした。

ラストの加賀刑事の慧眼には恐れ入りました。
読んでいない方のために、「プランター」とだけ言っておきます。
なるほど、これにはすっかり騙されてしまいました。

これ以上は書けないので、私がなぜ横道に逸れてしまったのか、というお話をしておきますね。
それは、この本の中の、ある設定に、強い既視感ならぬ既読感を感じたためです。

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その、かつて読んだことのある中編の題名は伏せますが、横溝正史の、あまりメジャーではない作品です。
登場人物のうち、男性は有名な小説家です。
元妻は、児童文学作家です。
実は、男性が書いたことになっている小説は、元妻の書いたものでした。
彼は、妻が自分のゴーストライターだったことが世間に知られないように、元妻に、大人向けの小説を書くことを禁じます。

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「悪意」で、殺された人気作家と、子供向けの作品を書いているその友人、という登場人物の設定を見た途端に、この横溝正史作品が、頭の中に蘇ったのです。
この友人は、いずれは大人向けの小説を書きたい、という願望を持っている。
ならば、すぐにでも書けばいいのに、なぜ書かないのか。
もしかしたら、横溝正史作品と同じように、友人の人気作家から止められているのではないか?
なぜ、止める?

と考えて行き、そこから、東野圭吾の手中に閉じ込められてしまったのです。
もしかしたら、東野圭吾は、読者が、この横溝作品を思い出すのを想定した上で、罠を仕掛けたのでは・・・・。

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先にも書いたように、この横溝作品は、あまり知られているものではありません。
もちろん、文庫本には入っていましたから、横溝正史ファンなら読んでいるでしょうが、それでも範囲が狭い。
こんな少数の読者相手に、わざわざ東野圭吾が罠を仕掛けることもないか、と思い直しました。

まとめます。


今回は、東野圭吾作品を取り上げました。
エンターテインメント作品の「危険なビーナス」と、叙述トリックと動機の解明にスポットが当てられた「悪意」。
あなたはどちらを読みたくなりましたか?

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