黄黒真直

小説を書いています。SFとかコメディが多め。あとミステリも。青春頭脳戦小説『QK部』は…

黄黒真直

小説を書いています。SFとかコメディが多め。あとミステリも。青春頭脳戦小説『QK部』は、KADOKAWA様より好評発売中。https://www.kadokawa.co.jp/product/321911000944/

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最近の記事

1つの定理を4通りの方法で証明した話

Twitterには面白い数学系botがたくさんいる。 最近見つけたこのbotも面白い。名前は「初等幾何bot」。 名前の通り、初等幾何の定理を淡々とツイートしているbotである。 結構知らない定理も多いので、気になる定理を見つけたら証明を考えたりもしている。たいてい証明を思いつかないのだが、証明できると嬉しい。 で、先日、1時間くらい考えてようやく証明できた定理がこちら。 あまり見たことないタイプの主張な気がする。典型構図も珍しい。三角形が二つ、食い違うような姿勢でくっ

    • 素数大富豪のミニイベントを開催しました

      こんにちは、素数大富豪小説『QK部』の作者の黄黒真直です。 この記事が公開される前日、2021年12月4日に、素数大富豪のイベントを開催してきました! 今回は簡単に当日の様子をお伝えします。 イベントを開催した場所は、都内を中心に展開されている「勉強カフェ」です。 ここはコラーニングスペースとでも呼ぶべき場所で、主に社会人が自習しに集まる空間です。 そこでは勉強っぽいイベントも開催されており、今回色々と縁があって、素数大富豪のイベントを主催させてもらえることになりました。

      • 11人の方程式

         カーマインは幼い頃から、星を見るのが好きだった。  色とりどりの星々の瞬きを見ているだけで、何時間でも過ごすことができた。  空を巡る双子の衛星の追いかけっこは、朝まで眺めることができた。  やがて成長し、科学の本を読み漁る年齢になると、カーマインは思った。  いつかあそこへ行ってみたい、と。  気が付くとカーマインは、それより遥か先へ行く日々を送っていた。 ***  壮年と呼ばれる年齢になった。宇宙運送会社に就職したカーマインは、毎日のように双子衛星よりも遠くの惑

        • ワクチン2回目でレアな副反応を引き当てた

          ワクチン2回目で副反応が全部来ました。1回目は副反応ゼロだったのに。おまけに、レア物も引いたようです。 1回目は2021年7月7日。 このときはほとんど何もありませんでした。ちょっと肩が痛かったのとダルかったくらいで、翌日はぴんぴんしてました。 で、2回目は8月4日。 1回目がほぼ無反応だったので、まぁ今回もなんともないだろうと完全に油断して行ったら、副反応全制覇。おまけにレアな副反応まで引いてしまいました。 ってことで、せっかくなので記録を残しておきます。 なお、私は

        1つの定理を4通りの方法で証明した話

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        • 短編小説
          7本

        記事

          完璧な天気予報を目指して

          天気予報に得点制が導入された。予報の精度を上げるため、国民が正誤を投票することにしたのだ。しかし実際には精度は上がらず、代わりに彼らは曖昧な予報ばかりするようになった。ついには「明日は明日の風が吹く」などと言い出したが、この予報すら外れた。翌日は、今日と全く同じ天気だったのだ。

          完璧な天気予報を目指して

          フェネックの黒い爪

          「なんで様式変えたんだ?」 部長がまた、俺の出した書類を突き返した。 「見づらいだけだろこんなの。いつもの様式で書き直せ」 「はい、すみません」 お前が変えろと指示したんだろ、とは言わなかった。誰もこの人に文句なんて言わないからだ。部署全体に、そういう空気が出来上がっている。俺は部長ではなく、その空気に従っていた。 疲れた足取りで席に戻る。隣の同僚が「大変そうだな」という目で俺を見た。 数分後、部長はおもむろに席を立ちあがると、 「じゃ、俺はそろそろ帰るわ。あとよ

          フェネックの黒い爪

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          『原論』第1巻の目的はピタゴラスの定理か?

          『原論』第1巻の目的はピタゴラスの定理か?

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          時計はどこだ

           何気ない日常が壊れるのは、いつだって突然だ。それは良い場合もあるし、悪い場合もある。ぼくの日常は、あのラビー君が転校してきたことで、大きく変わったんだ。  よく晴れた初夏の朝だった。クラス担任のクジャク先生が、新しいクラスメイトを連れてきた。 「さ、自己紹介をお願い」  先生にうながされると、彼はぼく達と同い年とは思えない大人びた声で自己紹介した。 「初めまして、帝都から来たウサギのラビーです。今日からしばらくの間、このクラスの一員となります。どうぞよろしくお願いいたしま

          時計はどこだ

          算法の村

           江戸から歩いて一日足らずの小山(おやま)村は、豊かで安穏とした村である。北に小さな山があり、そこから下る数本の細い川が、村を幾つかの集落に分けていた。  豊かになったきっかけを高村は知らなかったが、ちょうどこの春日神社を建て替えた頃からだと、祖父は語っていた。やはり氏神様のおかげなのかと幼い高村が尋ねると、いや境内を広くして、年貢免除地を増やしたからだと祖父は笑った。  代々神職を務めている高村家であるが、祖父がこの調子であり、どうやら他の世代も概ねこのようであるらしかった

          算法の村

          誰がケーキを食べたのか

           楽しみにしていたのに。  冷蔵庫の扉を開けた私は、そのまま硬直していた。入れてあったはずの私のケーキが、何者かに食べられ、なくなっていた。  いったい誰が食べたのか。そんなもの、妹に決まっている。うちの家族で、一度に二個も食べるような食欲があるのは、私を除けば妹しかいない。  いやいや、いかんいかん。私は頭を振った。  私はパズルとミステリを愛する文学少女だ。そんな状況証拠だけで妹を犯人と見なしてはいけない。物的証拠か、せめて論理的証拠をつかまなくては、私のプライド

          誰がケーキを食べたのか

          何かの手順書

          「S博士、お呼びでしょうか」 「おお、待っていたぞ、C君。実は、例の平成の頃に書かれた古文書が、ついに解読できたのだ」 「えっ、本当ですか!」 「この古文書は、ほとんど同じ内容のものが全国でいくつも見つかっている。これの解読は千年前の人達の生活を知るのにきっと役に立つ……と思ったのだが」 「だが?」 「解読できたのに、結局何が書いてあるのか、さっぱりわからんのだ」 「どういうことですか?」 「読めばわかる」 「どれどれ。両手でぐるぐると巻く……左右から力強く引

          何かの手順書