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高校美術教師を辞めて画家になる離任式の言葉

 私は,これまで美術の教師として働いてきました。教師として18年間です。
 高校生の皆さんを見ていると,自分の高校生の時を思い出します。
 私は,美術の教師をしていますが,その美術の素晴らしさに出会ったのは,皆さんと同じ高校生の時でした。当時,それほどやる気のなかった自分でありましたが,高校で美術の世界を知り,美術を学べる大学に進みました。大学生になって美術の面白さを知ると「画家になりたい」と希望を抱きました。それからフランスパリに3年間の留学もしました。帰国後に,美術教師として美術を教えてきました。
考えてみると,私が高校生の時に出会った「美術」をずっと今までしています。ですから,そのときに「美術」に出会わなければ,今の自分とは全く違ったものになっていたでしょう。以前,両親に相談したことがあります。「画家になりたい。絵を描いていくのを仕事にしたい。」と。でも,賛成してくれませんでした。「無理だ。美術の先生なら食べていけるが,画家なんておまえができるわけない。無理だ。」と。そのときの「無理だ。」という言葉は,決して悪気はなくて,私のためを思って考えてくれて言った言葉だと思います。特に,私の父親は小学校の先生でした。校長までなり退職した人でしたから,自分の体験や過去の人々を見て先生になることのアドバイスしてくれたのだと思います。ですから,私に教師の道をアドバイスするのはごく当たり前のことですし,私もその時は「絵を描いていくのを仕事にするなんて無理だよな。」と自分で思っていましたから,どこか諦めていたのかも知れません。しかし,その時自分の心に引っかかりがあったのを覚えています。
 今になり,美術教師として働き始めてからも,作品を制作したり毎年個展を開催したりしながら,ずっと「美術」を続けて深めてきました。その中で,たくさんの繋がりを感じ,私を応援してくれる人もいることを知り「絵を描いていくことを仕事にする」ということは,今の時代,今の私には,そんなに難しいことではないのではないかと思うようになりました。つまり,今の私なら「画家」や「美術」のことを仕事にできるのではないかと考えました。そう思うと,「やりたい。出来る。」という気持ちが今になってようやく芽生えてきました。私は,教師としての仕事をここで辞めて,これからは,さらに美術の道を深めていくように進んで行こうと思っています。
周りの人のアドバイスに耳を傾けることは,とても大切なことです。素直に聞いてやってみるということも大事なことです。しかし,今,私が思うことは,自分自身の心で感じている「やりたい。出来る。」という夢や希望があるならば,「不可能。無理だ。」という言葉を,他の人の言葉や自分自身の言葉も含めて,聞き入れないようにしてください。なぜなら,可能なことでも,出来ないと考えた瞬間に,不可能なことになってしまうからです。

世の中には,世間から絶対に不可能だと言われていたことを,可能にしてきた例は探せばいくらでもあります。
そして不可能を可能にしてきた人達に対して共通して言えるのは,「あきらめない」ということです。
本来目指すべき自分の「やりたい。出来る。」という思いにチャレンジする場合,まず諦めない限り,道は必ずあると思っています。

(※ ”” ””の間は、当日読みませんでした。)

””もちろん,その中で制約や制限はそれぞれの人にあります。私たちの世界は,たくさんの制約や決まり事も多いですから。ただ制約は,ひとつの才能や可能性を深く追求していくことで,包み込んで,越えていけるものだと思っています。全くの無制約の中に,放り出されると結局何も出来ずに終わるものですから,むしろ焦点を絞り込んで追求していくほうがチャンスだと捉えた方がいいと私は考えます。また,自分が深く追求して諦めていなければ,苦手なことがあっても,それを得意にしている人が補ってくれることもあるかもしれません。
こんなことを言うのは少しはばかられますが,私たちはいつか死を迎えます。今,生きている時間には限りがあるということです。その時間を最大限有効に活用するには,ひとつのことをどこまでも深く探求していくことだと思います。そして,一点の追求は可能性を狭めるものではありません。 深く追求していくほどに,可能性が広がっていくものだと思います。中途半端で諦めたり,妥協したり,それまでで満足しているとそこに広がっている領域まで辿り着けないかもしれません。””


 一度しかない限られた時間の,自分だけの,自分のための人生ですから。皆さんの心が感じる「やりたい。できる。」という夢を,ぜひ実現していってください。深く追求したその先にある,大きく広がる世界がもしかしたらあるかも知れません。
 今はSNSの時代です。会おうと思えば,連絡を取ろうと思えばいつでもつながることができます。 
また,会いたいな,話したいなと思えばいつでも私に連絡してください。どこかできっと会うことができますので。その時は楽しく笑って話しましょう。 
 この高校で,みんなと一緒にかけがえのない思い出をたくさん作ることが出来ました。
 みんなと会えてとても嬉しかったです。楽しかったです。
 お世話になりました。
 ありがとうございました。
   
木 原  剛(きはらごう)

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