信じられないレベルの人。
地元の友人からかかってきた電話の第一声が
「あれ? なぜだ?」だった。
札幌市内のスターバックスで作業をしていた私のスマホがブーッと鳴って、画面を確認する。
画面には山本元太(仮名)と表示されていて「おや、珍しいな」と思って電話に出た。時刻は16時。
友人「あれ? なぜだ?」
私「え、なにが?」
「いや、今さ、桑園のスターバックスにいるんだけどさ、ダーキが目の前にいてさ」
「え、おれ、桑園にはいないよ。たしかにスタバにいるけど、桑園にはいないよ」
桑園駅は札幌駅のひとつ手前の駅である。
私の現在地からは、数キロは離れている。
私は座っていた席を立って、できるだけ電話が迷惑にならない場所に移動した。
友人は言う。
「おかしいな、ダーキだと思ったんだけど……」
「……そっくりな人がいるってこと?」
「うーん、そうなるね。目の前にいるんだけど」
「目の前に?」
「そう」
「でも電話をかけたけど、目の前にいる俺(ニセモノ)が電話に出ないから、おかしいってこと?」
「そうそう」
「そんなに似てんの?」
「似てるなんてもんじゃないよ。マジで『あ、ダーキだ』と思って、『ダーキ、おーい、ダーキ』って小さく呼びかけてみたんだよ」
「呼びかけるほど? そんなに?」
「もう、信じられないくらい似てるよ」
信じられないくらい似てる人には、
いまだかつて会ったことがない。
となると、気になる。
「信じられないくらい似てるって、なかなかないよね」
「もう、マジで似てるんだって。ちょっと待って。写真撮るわ」
「……攻めるねぇ」
写真は3枚送られてきた。
あまり褒められた行為ではないけど。
その写真には、ネイビーのコートを着た男性が席に座っている様子が映っていて、なにやら紙に文字を書いている。横顔の男性だ。
(……う~ん)
(……う~む)
よく見えないので、顔を拡大してみた。
……
…
「……ファッ!?」
そっくりだった。
信じられないくらい似ている。
たしかにこれは私だ。
親兄弟がこの写真を見ても
「あぁ、これはダーキだね」となるレベル。
「……ちょ、これは、似てるわ」
「でしょ? だから何回も呼んだんだけど、シカトされたから、これはおかしいと思って」
「いやぁ、すごいなぁ」
「ほんとにすごいよ。でも今こうやって電話してるわけだから、目の前にいる人はダーキではないね」
「だね」
「ドッペルゲンガーってやつだ」
「ってやつだなぁ。この人に街中で会ったら、恥ずかしくてたまらんよ」
電話の向こうの彼とは小学校以来の仲で、
今でもたまに連絡を取り合う。
電話をしたのは3か月ぶりくらいだった。
彼は言う。
「……にしてもダーキは元気?」
「あ、うん、元気だよ」
「そうなんだ、いいねいいね」
「そっちはどう?
そういえばこの前結婚したんだよね?」
彼が私を見習って交際1か月で結婚を決め、本当に入籍したのは彼自身の口から聞いていた。大体半年前くらいだった気がする。
「おれもダーキを見習って、交際0日で結婚することにしたよ」なんてニコニコ言っていたから「そんな、見習うようなことじゃないぜ(キリッ)」と話してた。
「いやさ、それがさ」
「むむむ」
「離婚だわ」
「はやっ」
なんとも信じられないレベルの電話だった。
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