葉っぱの話

画像1 親が話したことで、覚えていることはありますか。 私はたくさんあります。 その中で一番心に残っている話なのですが…。 あまり話し上手じゃない父が、話してくれたことです。 「子供は、山の上の湧水に落ちた一枚の葉っぱなんや。 山を下る綺麗な水に浮かんで、人生が動き始める。 時には、石に乗り上げたり、何かにひっかかったりして、動けなくなることもある。 そんな時でも、親は葉っぱを指で持ち上げて本流にもどしてやれる。 そのうち、小さな山のせせらぎは、紀ノ川みたいな大きな川になる。(実家は和歌山なので)
画像2 葉っぱは、どの流れに乗るのがいいのかが分からなくて、悩むと思うよ。 向こう岸まで行ってしまったり、ぐるぐると渦に巻き込まれたり…。 手が届かなくなった親も助けることが難しくなるけど、それでも、石を投げて動かしてやろうとか、枝で突いてみたりすることはできる。 衝撃はあるけど、まだ本流に戻すことはできると思う。 それから川は海に流れていく。 海に出たら、もう親が手助けはできないなあ。 葉っぱは、自分で航路を決めんとあかんようになるんや。」 私が二十歳になった時でした。
画像3 父が願ったように、自分で航路を決めながら生きてきたかなあ。 父がこの話をしてくれた年を、すっかり超えた私ですが、何かある度に思い出す話です。 結婚をし、一緒に舵を取ってくれる人と良い船旅をしています。 子供達は、それぞれが海に出て行きました。 穏やかな日ばかりではないでしょうが、望む航路を、これからも進んでいけるように努力したいと思っています。

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