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ほぼマレーシアにまつわるショートエッセイ

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ちょっとした時間にサクッと読める、マレーシア生活などにまつわるエッセイ集です。
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記事一覧

最大規模の社交辞令

「また連絡するね!」と帰り際に言われて、実際に連絡がくることは少ない。 日本人特有の社交辞令だ。 あなたも何気なく使ったり、言われたことがあるかも知れない。 もちろん筆者も、このフレーズを何の意識もせずに使っていた。 海外生活を始める前までは。 外国語の習得に専念していると、言葉に敏感になる事がある。 筆者はある時期、自分が日本語で思ったり話した言葉を、英語で言い直す「ひとりワークショップ」をしていたことがある。 その時期に、この「また連絡するね」にとても違和感を

英語は簡単、と彼女は言った

全く大したことのない英語力だが、マレーシアの日常生活において、家を借りたり、クレームを入れたり、銀行口座を開いたり、学校で先生方と話したり、といったことは問題なく出来ている。 とはいえ、この程度の英語力では、北米やUKなど英語のお膝元では通用しないだろな、とはうすうす感じている。 なぜなら、マレーシアで暮らす人々は、英語が第二外国語同士なのもあり、多少の間違いには寛大だし、お互い理解しようとする姿勢があるからだ。 そうは言っても、生活をする中で、言いたいのに言えない単語

ディワリに思いを馳せたい:個性豊かなヒンドゥー教3大パワーカップルの面々

インドのお正月ディワリをめぐる物語は、インド国内や宗派によって異なるそうですが、共通しているのは女神ラクシュミーに祈りを捧げること。 ラクシュミーはヒンドゥー教のおもな女神のひとりです。 顔が象のガネーシャや、破壊の神のシヴァなど、ヒンドゥー教には個性的でユニークな神様が勢揃い。 そこで、2023年のディワリ初日を記念して、ラクシュミーを軸にしたヒンドゥー教のパワーカップル3組にせまってみたいと思います。 ビシュヌ神&ラクシュミー女神夫妻まずはラクシュミー夫妻からいきま

インター校で出会ったタイとインドネシアのお金持ちエピソード・ベスト3

インターナショナルスクールに子供を通わせていると、時折とんでもないお金持ちの話を聞くことがあります。 彼らの話は、分かりやすい高級車やハイブランド、別荘といったレベルではなく、いろんなメーターを振り切っていて価値観がゆらぐほど。 ダイナミックで面白いんです。 バンコクのインター校での経験や見聞きした話、知人の子供が入学したインドネシアのインター校のママ友エピソードも織り交ぜ、筆者が知る中でとっておきのお金持ちエピソードベスト3を紹介します。 1. 誕生日会の持ち物はパス

外国において、ある集団から瞬時に日本人を見分けるスキルについて

今年で、筆者の海外在住歴は6年になる。 それほど長いとは言えないが、あるスキルを会得してしまった。 それは、タイトルに掲げた「外国において、ある集団から瞬時に日本人を見分ける」スキルだ。 おそらく筆者だけでなく、海外在住邦人の中には、なぜだか分からないけどこのスキルをいつのまにかインストールしてしまった方もいるかも知れない。 筆者は、タイとマレーシアに滞在経験があるが、この両国は駐在者や移住者が少なくないので、街で日本人を見かけることが多い。 おぼろげだが、タイで暮ら

世界大学ランキングってホントにあてになる?

マレーシアの私立大学の学費について、記事を書こうと思った。 個人的に一体いくらかかるのか知りたかったのもあるし、マレーシア留学を検討している方の参考にもなるといいな、と思ったからだ。 マレーシアにもいくつか私立大学があるので、どの学校を選び学費を調べるべきか考えた。 人気といっても不確かだし、専攻によっても違うし…、という事でここは公平に第三者である大学ランキングを活用しようと思い立ったわけだ。 まずチェックしたのが、QSランキング。 ここでは、Malaya大学が堂

ハラル鼎泰豐の小籠包で豚肉の力を知る

クアラルンプール名所の1つであるツインタワー。 ここにはハイエンドのブランドショップだけでなく、有名レストランも軒を連ねている。 小籠包で有名なあの「鼎泰豐」も入っているのだが、ここの鼎泰豐はほかとはちょっと違う。 なぜなら、ハラル対応の特別な鼎泰豐「Din by Din Tai Fung」なのだ。 ハラルを一言でいうなら、イスラム経典に基づく豚肉とアルコールを使わない食品や料理のこと。 豚肉と酒類は使えないが、鶏肉や牛などの肉類や魚介類はOKなので、意外とメニュー

日本とちょっと違うマレーシアの点心

点心や飲茶と聞いて、思い浮かぶ場所はどこだろうか。 香港や中国本土、横浜中華街かも知れない。 マレーシアで暮らし始めるまで、まったくイメージはなかったが、意外とここは点心(Dim Sum)天国だ。 美味しくて種類豊富で、そして驚くほど安い。 点心専門の大型店はもちろん、コピティアムと呼ばれる街の食堂兼カフェでも気軽に点心を頂くことが出来る。 日常に溶け込んでいるマレーシアの点心だが、日本とは大きく異なる点が2つある。 ここでは、その文化的差異を2点紹介したい。 文末

クアラルンプールのチャイナタウンは中華街じゃない

中華街と聞いてなにを思い浮かべるだろう。 極彩色で手の込んだ模様の大きな中華の門や、蒸籠から湯気をあげる点心店かも知れない。 または、壁一面が引き出しになっている漢方店や、中国茶の専門店かも知れない。 しかし、KLの中華街はそれとはちょっと様子が異なる。 中国っぽいモニュメントや活気あふれる点心店はなく、いかにも中国らしさを感じるものはほとんど見当たらない。 そもそも、マレーシアはマレー系・中華系・インド系が混ざり合っているので、街中に中華系の飲食店はそこらじゅうにある

5年経って反論したい言葉

別に、今さらその発言に反論しようとは思わない。 当時の私は、そういうものか、と分からないままも何となく納得したのは確かだ。 しかし、あれから5年が経った今は、きっぱりと「それは違う」と言うだろうし、理由も山ほどあげることができる。 それは、どんな発言か? 海外移住や転勤を経験したり予定しているなら、もしかしたら言われた経験があるかも知れない。 それは、「子供は慣れるのが早いから、英語はすぐ話すようになるよ」だ。 私はそれを2018年のバンコクで言われた。 発言者はA氏

Bukit Bintangで中東小旅行

ブキ・ビンタン。 日本語で「星が丘」という意味のそこは、その名の通り煌びやかなクアラルンプールの中心地だ。 いつも人で溢れる場所であるが、正直なところ筆者にとってはそれほど魅力を感じない。 何故なら、することがないのである。 ブキ・ビンタンの中核をなすパビリオンは、所狭しとブランドショップが軒を連ねているが、それほどブランド品に興味はない。 台湾の誠品生活は同じような品揃えだし、ファーレンハイトは薄暗く他でもよくある店舗が続いている。 ドンキが店舗を増やす前、唯一L

キャメロンハイランドの老舗ホテルSmoke House Hotelにて

キャメロンハイランドに、Smoke Houseという名のホテルがある。 おとぎ話に出てきそうな、とんがり屋根に蔦が絡まる洋館。 ピーターラビットがすぐにでも顔を出しそうなイングリッシュガーデンが色を添えている。 ホテルの近隣はゴルフ場しかないため、そこだけ切り取ったように、空間まるごとがイギリスだ。 ヨーロッパのアンティーク好きなら、館内に足を一歩踏み入れると同時に、歓声がもれるだろう。 ビクトリア朝を思わせる家具、市松模様の床、暖炉、バラ柄のファブリック、真鍮製のア

海外生活でわたしを助けてくれる唯一無二のもの

いつもの点心の店で、水晶餃子、粽、鉄観音茶を注文すると彼女が言った。 「結構昔のドラマなんだけど、高校生と女の先生が恋愛するの。えーっと、なんだっけ?」 「日本のドラマ?」 「そうそう、なんとかの条件」 「魔女の条件?」 「それそれ!」 「私あのドラマ好きだった。歌も良かったよね。" You are always gonna be my love〜♩"」 という会話の相手は、中華系マレーシア人の友人だ。 彼女が大学の時、ちょっとした日本ブームが起きた。 日本のアニメのみなら

ソウルの旅が全然楽しくなかった

2023年8月にソウルへ行った。 旅行というより乗り継ぎを利用したトランジットステイだ。 筆者は映画ファンの端くれとして、韓国映画のみならず韓国ドラマにも随分楽しませてもらっている。 むしろ良すぎて、我が国のエンターテイメントの将来を憂うほどだ。 それら映像作品の中でソウルの風景や地名は溢れているし、マレーシア国内でも韓国料理は人気なので、いつしかソウルは親しみやすく好感度の高い同級生的存在になっていた。 また筆者の周りの韓国フリークから、異口同音に賛辞を聞いていたのもあ