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知識創造プロセスをレゴ®︎シリアスプレイ®︎で促進する

 1995年に発表された『知識創造企業』(英題:The Knowledge-Creating Company)は日本発の経営理論として名高い。

 イノベーション(技術革新)を中心とした、単純な環境適応能力を超えた競争優位性を企業がどう確保していくべきかということについて一つの答えを出した。すなわち、企業内で暗黙知と形式知の相互ダイナミクスを起こすことによって、新たな知識そしてその延長線上にある製品・サービスを生み出すことができるというものである。

 すでに発表されてから25年が経つが、企業が成功するには経営陣の合理的な意思決定だけではだめで、人々の中に蓄積された経験や知識を最大限に引き出して企業の強みにつなげていこうという観点は現代でも変わらず強く支持されている。

 その中核がSECIモデルと呼ばれるもので、知識創造の代表的な4つの段階を示したものである。

(1)Socialization(共同化):体験を共にして似た暗黙知を共有する
(2)Externalization(表出化):暗黙知を形式知(知識として伝えられるように)にする
(3)Combination(連結化):形式知を組み合わせ整理、体系化する
(4)Internalization(内面化):形式知を理解し、暗黙知(個人が行動の中で使うことができる)にする

 そしてこれらの段階は、(1)→(2)→(3)→(4)→(1)とサイクル型のプロセスを形成しているとされている。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎と知識創造

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、頭の中に浮かんでいるイメージや意識下での思考を作品として浮かび上がらせる(参考記事)。作品を作り、その説明をしているときにはまさに「表出化」を強力にサポートしているといえる。

 ただ、レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、作品を作り共有するだけでなく、それらの作品同士の関係性を探ったり、ときには一つにまとめていく統合化をおこなっていくこともできる。個々の作品を利用したさらなる大きな作品づくりはそうした、表出化された知識を「連結化」することを意味している

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作って説明するだけで終わらず、作品の関係性を探求する

 作品間の関係性を探るワークでは、作品の並びを実際に動かしてみて吟味するようファシリテーターから課題がでる。実際に、参加者がそれをすることができるためには、そこに参加したお互いの作品を自分の作品であるかのように理解する必要がある。つまり、全員の作品についてお互いに「内面化」がなされていないと、実際に動かしたり、関係性についての対話ができないのである。したがって、作品間の関係性を探るワークや一つにまとめ上げるワークのときには、お互いの作品が理解できているかどうか、ファシリテーターは相当に気を使うことになる。

 さらに参加者全員に個々の作品が「内面化」されたのちに、参加者は実際に作品を動かして全員でより大きなストーリーを考える。配置を入れ替えたり、一旦組んだものを作り直したり、そこでは体験に基づく暗黙知の共有、すなわち「共同化」が起こっている

 関係性の探求と表現のワークでは通常、最後にメンバー全員が一人一人、その作品が示すストーリーを語る。そこまで至って初めて作品の「連結化」がなされた(そして暗黙知レベルでの「共同化」も果たされている)といえる。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎は、自らの経験を作品を通じて表出させることから始まるが、その後、一つにまとめあげた作品や配置の表現とともにストーリーが語られるとき、そこに新たな知識を生み出されている。
 そしてそのワークは知識創造のプロセスを踏まえて進められているである。

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