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002/お前を側で待つ

鬼丸とちょっと遠出して、一泊二日で温泉に。着いた先は癒しとかでなく鬼アクティビティ満載で、その中でも俺らがすげえ気に入ったのはジップライン。森や山の斜面に張られたワイヤーロープを滑車で滑ってくやつだ。二人して無言で延々と滑りまくってた。そのせいか宿に戻ってからずっと滑走。

滑走滑走言ってますがあれなんですよ、会話がジップラインのことばっかてことで。めったに熱くならない鬼丸が高揚してる。まあそれだけで俺の大部分が大興奮なんだけどな、何だろ、そういうのが入り込む隙がないほど楽しかった。ずっと森の木々の間を滑走してたまに滑って転んだり、腹減ったら戻って飯食って温泉入ってた。

千弦俺さずっと景色が動いて見える、流石の鬼丸も疲れたのか、10何回目かの滑走のあと、部屋で二人して倒れ込む。そういやもうすぐ夕飯じゃないか?グロッキーでも腹は減るので何も問題ない。飯は鬼丸とここのビュッフェで好きなものを好きなだけ食うんだ。

沢山食って部屋戻って、酒は部屋でゆっくり頂く。旅先って日本酒が合うよな、鬼丸の目元が珍しく染まっている。見晴らしのいい窓のそばにある謎のいいイスで、夜景を見ながらの晩酌。鬱蒼とした山々の所々が、ライトアップされてるのか赤や緑のライトに照らされて、綺麗すぎて却って頭に入ってこないな。二人とも考えることが同じ。

謎のいい椅子はくっついて座れるカウチ型、浴衣だからかな、体温がいつもより高く感じるな。千弦はビールの方がいいか?いや大丈夫。お前とこうしてられるなら、正直夜景も酒もどうでもいい。柔らかい焦茶の癖毛に、頬に、軽くキスを散らして、でも急かずに、鬼丸と色んな話をして。俺は待つ。お前の方から来てくれるのを。



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佐久イヌ140の日常
165-169まとめ 加筆修正
2024.1.17

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