『進化思考』批判を読み解く。〜備忘録として〜

『進化思考』という本について、「日本デザイン学会」にて提起された批判と、それを受けて、ある生態学者?(研究者)さんがブログにて指摘したことをシェアしておきます。他のSNSなどでも話題なので、既にご存知の方もいらっしゃるかと思います。

フォロワーさんの中には、この『進化思考』や、その著者の関係者・信奉者の方(ファンやコミュニティメンバーの方)もいらっしゃるので、気分良くないかもしれませんが、一つの考え方として記録しておきます。

「日本デザイン学会における『進化思考』批判」
https://youtu.be/iFAO_-PSxDI

「指摘リスト」https://zenn.dev/xerro.../books/9d41f9b4f1701f/viewer/29314a

「『進化思考』における間違った進化理解 の解説」
http://kamefuji-lab.seesaa.net/article/489743059.html

これらの指摘は、出版直後に僕が心から期待して買い、あの分厚い本を繰り返し読んだ上でガッカリし、Facebookなどで指摘・コメントしたことに通じます。「用語の使い方が恣意的でミスリーディング、ときに明らかに間違っている」点、「進化学自体をきちんと理解していないのではないか」という点、そして「アナロジー※に終始している」点と、解像度・本気度は違えど、ほぼ同じことを仰っています。

※アナロジーは類推(類似点を見出す、または類似しているとの想定下で推論すること)だから、まったく科学的なものではないです。極論すれば「著者の(勝手な)見地・想定」です。

むしろ著者が「イノベーションやクリエイティビティの再現(可能)性を、進化の概念を使って分かりやすく説明しようとした」だけなら、それはただのメタファー(比喩)ですし、比喩なら比喩で用語・定義を正確に使おうよ、程度の話で済んだようにも思います。

しかし、著者はこれを、進化学の適用(応用)に向けて、(過去の議論をご自身が分かっている、という前提で)自らが初めて構築した新しい”学説”や”メソドロジー”のように発信していることもあり、学会や研究者さん達からの指摘・批判が広がっているんだろうとも思います。残念ながら、著者の「既知へのリスペクトが欠けていた結果」と言わざるを得ません。

念の為、著者ご本人による「批判に対する意見書」なるものが公開されていますが、正直に申し上げて、これを読んで心底ガッカリというか…これは僕個人の感想なので、皆さんも読んでみてください。https://docs.google.com/document/d/1wKacpCXHtoqQPabA6Fy_Hzciz0dL_cCAvSZTbVajGpo/edit

大半の読者は、あれだけ分厚い本だと流し読み一回で、何度も読み返したとは思えませんし、用語や概念なども「ふーん、そんなもんか…」くらいだったかも知れません。同時に、この識者達の指摘・批判も小難しくて「どうでも良いこと」なのかも知れません。しかし、

個人的な感想としては、この出版物のおかげで「進化、変態、成長」や「適応、変異、遺伝」などの言葉の意味・概念について、研究者、デザイナー、読者も混ざって改めて議論・確認したという意味においては(それにおいてのみ)、社会インパクトはあったように思います。

そして。大切なことは、上記の動画の後半にありました。

少なくとも、この本の内容は「科学」ではありません。擬似科学か否かを判断する"免疫ができていない”世代に向けて、こうした書籍や考えを推奨・普及しないように、という学会発表者のメッセージは”超!”大切です。早いうちから子供に刷り込もうとする他の”トンデモ”と同様、ですね。

これを肝に銘じるとともに、僕らの手がけるLIFE Universityのミッションでもある、科学的なリテラシーの高いエデュケーター(教育者、学習支援者)やコミュニケーター(発信者、通訳者)をもっと増やしていかなければいけないな、と改めて思いました。

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