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オフビートで踊る、考える、行動する

先日、渋谷のイメージフォーラムで「ルード・ボーイ トロージャンレコーズの物語」を観てきた。

この映画は、夏の公開中に何人もから同時多発的に勧められ、誰しも「バビロンが好きなのであれば、絶対これも観た方が良いよ」という文脈で語ってくれた。

その度に、「絶対観ます!」と答える反面で、いま諸々抱えてるものたちがあと2週間程度で片付くから、それが終わったらだな…と心の中で思っていた。

とうとう約束の2週間後、心が軽くなった私がイメージフォーラムのページに辿り着くと、そこにはあったはずのオレンジ色のフライヤーがwebページから消えていた。軽かったはずの心が重く地面に沈み込んだ。

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「28日にトロージャンレコーズの映画、イメージフォーラムでやりますよ」

誰から聴いたか記憶が定かではないが、28日限定での上映会を知ったのは、RRCのパーティだ。

恐らくDJ HOLIDAYによるトロージャンレコーズのミックスCDを買った時に教えてもらった気がする。いや、分からない。とにかくその日も、同時多発的にいろんな人から上映会の話を聞いた。

その日は上映後トークショーがあるということで、最前列の席を予約した。

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28日、年内最終営業日、仕事は問題なく終わったが、労組の会議やらが長引いた。

なかなか厳しい。誰も労組なんて必要としていない。住民サービスの新自由主義化に抗うために、連帯したいだけなんだけど。
連帯なんて、抵抗なんて、もう古いのかもしれない。

もうだめなのかなぁと思いながら、時たま意見をする。「当局は職員や住民をなんだと思っているんだ」と憤る。ほぼ反射的に。

こんな会議は放り出して、気の合う人たちとオフビートなテンポで踊りたいと思いながら。

結局、イメージフォーラムに着いたのは上映時間ギリギリだった。
最前列に滑り込んだ直後、アナウンスがあり上映が始まる。

その直後、私は異変に気付いた。
寒い。とてつもなく、寒い。

冷風が直にあたるのだ。
映画の序盤は、ジャマイカが舞台だった。キングストンで、警察官を辞め酒屋を開いたデューク・リードのエピソード。再現映像も含めて常夏のような雰囲気で、なんとか耐えられた。

その後、舞台はジャマイカからロンドンへ移り、一気に画面も寒々しくなり、私自身も現実の寒さと対応するように気が滅入ってきた。

しかし、気候は音楽に影響しない。正確には影響したのかもしれないが、とてもポジティブな方向で独自の発展を遂げる。
英国の労働者階級であるスキンヘッズたちがジャマイカンカルチャーに入り込む。
ワーキングクラスと移民の融合。

これがカルチャーが切り拓いた社会。

だいたい、あの会議の裏側にいる人たちは自分たちがワーキングクラスであるという認識あるのだろうかと映画の途中で思いを巡らした。

そんなことを考えていたら、現実に引き戻される。寒い。
ロンドンより寒い。

私の隣に座っている女性は、私に守られているからか、身体が強靭なのかびくともしない。

対して、その女性の隣の隣に座っていた男性も途中でコートを着込み出した。
私の感覚は間違っていないと安心して、手袋をはめる。

ようやく身体が正常になったが、家に帰るまで身体の芯から冷え切っていた。

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映画はトロージャンレコーズの歴史と盛衰がさまざまなアーティストが軸となり描かれているため、事前にQeticの今里さん・薮下さんの対談記事を仕込んでおくと、解像度が一気に上がると思う。

まだ観ていない人は、ぜひ記事を読んでから行くのが良いのかもしれない。

結局、寒さに震えていた感想が長くなってしまった。
身体が凍える時も、抵抗する時も、連帯する時も、オフビートなテンポで、身体も頭も動かしていたい。そう思えた時間だった。

(最前列が寒かっただけで、他の座席はふつうだったようです!!)


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