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0807|小さなお店|その3

11月初め、月イチで参加していたワークショップで安曇野に行き、そのあと白馬でお店の物件を見せてもらった。

ワークショップは「心地よい暮らしを考える」というテーマで春からの連続講座。わたしは夏くらいから参加するようになった。ちょうど311のあと、参加者は関東や名古屋方面からが多くて、中にはマクロビオティック、ベジタリアン、ビーガンやローフードの食事を実践したり教えているひと、東京郊外でオーガニックなカフェを営んでいたひともいた。当時住んでいた鎌倉で仲良くしていた友人は「鎌倉ベジカルチャーMAP」というのを作っていた(今はない、少し早すぎた)。そんなことから、わたし自身はそうではないけれど、メニューはなんとなくベジタリアン・フレンドリーなものも取り入れようと決めた。

カフェを朝昼メインで運営する友人夫妻は関西出身。それもあってなのか看板メニューでたこ焼きを売る、という。カフェでたこ焼きとは、オサレ度に欠ける気もする。でもスキー場の目の前なのだから売れるのかもしれない。

物件を見せてもらって鎌倉に戻り、引っ越しの準備を始めた。鉄のたこ焼き用プレートを買って練習してみたが全然うまく焼けない。一方、ベジ(ベジタリアン・ビーガンの総称)のたこ焼きってできないのか、あるいは違うネタを使って、変わりたこ焼きができないか、などアイディアを膨らませたり、予定をこなしているうちにあっという間に12月も半ば過ぎ。結局は昼の部のたこ焼き材料をそのまま使う(仕入れる)ことになった。友人たちはオープンに備えて結構練習したらしく上手に焼けるようになっていたが、わたしは相変わらず、ちっともうまく焼けなかった。お店のガスは業務用で火も強く、慣れない手つきでさらにもたついた。

一番の売り商品、たこ焼きを焼ける自信がないまま、オープンの日がやってきた。たこ焼きだけじゃない、メニュー表とか色々ちゃんと作りたかったけど、とりあえず手書きでできるとこまで。あれこれ完璧にしたい主義だけど、そのわりに実務スピードが遅い。そのギャップにさらに落ち込んだり、たこ焼きは上手くできないしでここまできても逃げ出したくなった。だからきっと、ひとりじゃできなかった。実際に夜の部はわたし一人なんだけど、段取リストで肝が据わった友人たちに助けられた。

オープンして数日後、関西弁のおにーちゃんが店にやってきた。しばらくして気がついたが移住者と来客が多い土地柄、関西弁とオージー弁が白馬の方言みたいなもんでもあった。話していると、今は在阪の鉄道会社に勤めているけど学生時代は阿倍野か上本町だったかの有名なたこ焼き屋さんで何年もバイトしていた、という。
「わたし実は全然うまくたこ焼き焼けないんですよ〜ちょっとキッチン入って教えてください」(←関西弁イントネーションで)

「まず油を引いたら、最初にタコを入れる。生もんやし(←そうなのか?)先に油で焼くと美味しいねん。それから生地を入れて天かすでボリュームを作る。これで丸い形ができる…一番最後に油を回してちょっと揚げ焼き風にするとカリっと美味しいでしょ」

思いがけないなりゆきで、本場大阪の有名たこ焼き店元スタッフの指導を受けて一気に自信がつき、それからのたこ焼き屋さん営業も楽しくなった。


翌年3月、シーズン終わり間近のある日、関西弁の女性がやってきて、たこ焼きを注文した。「美味しいわぁ。粉とか何使ってます?うち、大阪で小さいお店やってるんですけど今度、店の中でたこ焼きやろうと思ってて」。数ヶ月前はド素人やったんが、にわかプロになって開店アドバイスした。笑 (つづく)

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