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ベルリン旅行記①2022/7/13曇り

 前日は早めに就寝したが、ソワソワしてあまり眠れず。それでもアラームの鳴る1時間前には目が覚めた。
 夫が作ったゲーム『SCOUT』がドイツ年間ゲーム大賞2022(以下、SdJ)の候補作となり、その授賞式に出席するため、ドイツ・ベルリンまで旅をする。
ノミネート作発表があった5月から約2ヶ月の間、毎日この日を想像してワクワク、ドキドキして過ごしてきた。
 夫婦ともに海外旅行は経験が少なく、ヨーロッパ圏への旅行はこれが初めてである上に、名誉ある賞の授賞式に出席するということもあって、緊張と不安で旅行を楽しむ余裕があるか、少し心配なところだ。

 成田空港までの移動は、家から約1時間半。交通手段を吟味した上で、日暮里駅乗り換えの京成線成田スカイライナーを利用することに決めた。

快適な京成ライナー車内

平日ど真ん中の水曜日、ちょうど通勤ラッシュの時間帯に大きなスーツケースを二つ持っていくことや、京浜東北線の遅延等を心配して早めに家を出たために、結局集合時間から1時間も早く、成田空港に到着することとなった。
 ソワソワしながら成田空港内をしばし探検する。国内旅行では我が家からほど近い羽田空港を利用しているため、成田空港に来るのはバリ島へ新婚旅行に行った時以来である。朝早いことと、コロナ禍であるゆえに、空港内はあまり人がいないし、店もほとんど閉まっている。仕方なくスタバでコーヒーを買い、座り心地の良いイトーキの椅子でぼんやりと寛いでいるうち、ぼちぼちみんな到着したとの連絡が来たため、オーストリア航空のチェックインカウンターへ。
 今回の旅をオーガナイズしてくださったのは、株式会社オインクゲームズの佐々木隼さんだ。5月のノミネート発表直後、浮かれるわたしたちにメッセージアプリで連絡を下さり、「ウチが出しますんで、授賞式ぜひ行きましょう! もちろん奥様も一緒に!」と、有り難すぎるご提案をしてくれた。その時は嬉しすぎて、つい「やったー! 行きます!」と二つ返事をしてしまったものの、滞在費の総額はいくらになるのか…? と想像して少し気が遠くなったものだが、佐々木さんはお会いするたびいつも柔らかい物腰で、なんでも「いいですよ~」と請けて下さる。こんなに懐の深い人はなかなかいないよな……といつも思う。
 待ち合わせ場所に現れた佐々木さんの荷物は、驚くほど少ない。機内持ち込みができるサイズのスーツケース1つで、「コロナ前は、結構あちこち行ってたんで~」とニコニコしている。旅慣れている人はやっぱり荷物が少ないのか…。夏場の旅行なのに、巨大なスーツケース一人ひとつで、それでも足りるか不安な我々は、典型的な「持ち物が多いオタク」であった。
 今回の旅に同行する何人かの方をここでご紹介する。
 まずオインクゲームズの広報・渉外担当(?)のIさん。Iさんは今回、息子のRくんと二人での参加となる。Rくんは若干4歳の幼稚園児ながら、末は大器を思わせる貫禄のある日本男児だ。実際、彼は飛行機に乗るのが人生初めてだというのに、離着陸の際も、14時間ものフライトにも、一度も泣いたり騒いだりしなかった。IさんもRくんの器量の大きさを信じているのか、あまり心配することなく片手間で仕事をしたりお酒を飲んだり、タクシーやお店の手配をしたりと八面六臂の大活躍であった。I親子は、母子ともにバイタリティあふれる人たちである。
 次に、SCOUTのデザインを担当されたKさん。小柄で可愛らしい見た目とは裏腹に、パワフルかつアクティブな女性である。口数少なく、あまり感情を表に出さない一方で、ときどきものすごい天然っぷりを発揮することがあり、つい目を惹きつけられてしまうような面白い人だ。
 そして、佐々木さんの片腕(?)とも呼ばれるオインクゲームズ古株のDさんと、その娘のLちゃん。Dさんは飄々とした雰囲気を漂わせるナイスミドルながら、全体に目を配り細かいところを配慮しサポートしてくれる凄腕を持ち、そして大変な酒豪である。旅の間見かけるたびにビールを飲んでいたが、ほとんど顔色を変えていなかった。その血を継いでいるためか、20歳になったばかりというLちゃんも「まだあまり種類を試してないので、いろんなお酒を飲んでみたい」と言いながら旅行中20度だの40度だののカクテルを、片っ端からオーダーしてぐいぐい飲んでいた。彼女も、非常にアグレッシブかつとても空気の読める人で、Iさんが忙しいときは幼いRくんの面倒をずっとみてくれた。
 このオインクゲームズメンバーに我々夫婦をプラスして、総勢8名の旅行団である。正直に言って、わたしは(去年仕事を辞めたのですが)内心、一泊二日の温泉旅行ならまだしも、会社の人と一緒にドイツ旅行とか、すごくストレスかかって大変なのでは?……と思っていたのであるが、オインクさんたちは皆ほんとうに仲良しで、まためちゃくちゃにチームワークが良く、いつもみんなで一緒に、楽しそうに行動していた。聞けば、普段から家族ぐるみのお付き合いだそうで、RくんとLちゃんもオインクのメンバーとは何度も顔を合わせており、まったく気兼ねしない関係のようだ。見識の狭いわたしは、こんなに仲良い会社ってあるんだ~と心底思った。わたしの知ってる会社と全然違う。こういう環境が、面白いモノ作りには必要なのかもしれない。

 ともあれ、無事集合時間に全員集合し、チェックイン・荷物預けの手続きとなる。
 出国手続きは、非常にスムーズであった。成田空港では顔認証システムでパスポートチェックができるため、列に並ぶことも少なく、すいすいと搭乗ゲート付近までやってきた。ボディチェックを抜けた先にある免税店などはさすがに営業しており、「AKIHABARA」とぎらつくネオンで書かれたお店などが、ギラギラ日本酒やキャラグッズなどを売っている。中でも、飛び抜けて列が出来ていたのが一風堂であった。日本を離れる前にラーメンを食べておきたい気持ちは分かる。しかし飛行機に乗る直前に並んでラーメンを食べるというのは、なかなかの勇気である。いろんな意味で。

商品はアニメグッズに留まらず免税品全般


 オインクメンバーはセブンイレブンでおにぎりなどの軽食を買い、各々ベンチに座って食べている。わたしと夫もセブンイレブンに向かう。夫はそこで、フリーズドライの豚汁と鮭雑炊に、お湯を注ぐお吸い物の粉末を購入していた。預け入れ荷物の中に既にカップヌードルが二つ入っているにもかかわらず、更に日本食を購入しようとする夫に、わたしは「さすがにやりすぎでは? まあ余らせても日本帰ってきて食べればいいか…でも荷物増えるなあ」などと思っていた。その時は。
 のちにわたしは、この時の自分を回顧しては深く反省することとなる……。

 そうこうするうちに日本時間の12時を回り、ついに搭乗時間となる。乗り込んだ飛行機では、有り難いことにわたしと夫が二人席で、Iさん親子がその後ろ、佐々木さん含むオインクメンバーは機内の真ん中、四人並び席であった。ロングフライトに慣れていないわたしたちは、この配慮に本当に助けられた。トイレに行くにしても何にしても、お隣を気にしなくていいというのは大変に楽だ。わたしなど、途中足がだるくなって立て膝をついたりもしていた。隣が夫でなければ、14時間ものフライトには到底耐えられなかったと思う。着圧靴下を穿いて備えたものの、やはり14時間座りっぱなしはつらかった。腰も痛くなるし、あまり眠れなかったし、正直しばらく飛行機には乗りたくないなと思う。しかし四人並び席のオインクメンバーさんたちは機内でもSCOUTを遊んで盛り上がっており、元気で凄いし有り難いな……と思う。

ちょっと小さいサイズのビール(冷えてて美味い)
機内食(お米!貴重!)

 ここからはわたしが機内でどう過ごしたかをつらつら書いていきます。(読み飛ばし推奨)

 村上春樹『シドニー!』を再読。

 旅行記ということで旅にふさわしいかと思い選んだが、自分が旅の最中だと逆に没入できない。なかなかにバッドチョイスであった。普通に小説にすればよかった。知らない物語の世界に行きたい……そう思い、機内で観られる映画のリストからなんとなく『ナイル殺人事件』をチョイス。

 全然知らずに選んだのだが、これは名探偵ポアロの物語のようだ。ポアロは昔子どもの頃にドラマ版を観た気がするが、容疑者全員をまず疑ってかかる姿勢(あなたがこういう動機でこういう風に殺したんでしょう! と全員を一度問い詰めてみるやり方)にモヤつく。最終的に判明した真犯人についても、あまりに身勝手な動機で犯行に及んでおり、被害者がとにかく気の毒でならない。これは化けて出るしかないだろうというくらいに可哀想だ。とにかく救いのないお話であった。ただ、場面の見せ方やカット割が印象的で、エキゾチックな雰囲気と舞台設定を引き立たせていた。

 『ファイアーエムブレム風花雪月』の黒鷲ルートをクリアする。正直に言ってもやっとする終わり方だった。あともう一面、真の敵と対峙するラストバトルがあるものと思っていたのに、その憎き「内なる敵」とはなあなあの関係のままエンディングに入ってしまった。また、1周目に金鹿編からスタートしたせいか、エーデルガルトちゃんの覇道思考にうまく共感することができなかった。現実に戦争が起きていることもあるのだとは思う。

 その後、『ペルソナ4ダンシングオールナイト』を久しぶりにプレイ。あまりに音ゲーの腕がなまっていて驚く。ノーマルモードでもブリリアントが取れない。これは久しぶりにやりこみたくなってきたぞ。よし、まずはイージーモードから練習だ……等としているうちに、外の景色がヨーロピアンなことになっている。

風力発電が均等に配置されてゼビウス感ある
畑の規模がでかい

 太陽とともに飛んでいるため外がずっと明るいので、時間経過の意識が湧かない。体内時計がバカになりそうだ。

 オーストリアはウィーン空港で、ベルリン空港まで乗り継ぎとなる。ここで、EUへの入国手続きを行う。
 受け答えの練習などしつつ緊張して審査官の前に立つが、何も言わずにパスポートに入国のスタンプを押されて終了。早くて助かるが、こんなにすんなり行っていいのだろうかとも思う。(その辺りの伏線回収は、帰りの飛行機を待つことになる)
 ウィーン空港でSIMカードの差替え等行いながら、次の飛行機を待つ。ベルリン空港まで、約1時間のフライト。あともう少しで到着だ、となんとか気持ちを奮い立たせ搭乗までの時間を過ごすが、この時点でだいぶ疲れは溜まっている。一番元気なのは、一同のうち最年少の4歳児Rくんだ。ハッピーセットでもらったらしいマクドナルドの冊子を片手に、みんなにマクドナルドクイズを出して回っている(第一問。マクドナルドの一号店は、どこに出来たでしょうか? 答え:東京・銀座)。
 アナログゲーム会社勤めの母の影響か、デジタルゲームや動画より、クイズや塗り絵が好きみたいだ。現地時間的は既に22時近くなっており、家なら彼はもうとっくに眠っているはずの時間だ。飛行機でもほとんど寝ていなかったようなのに、元気っぷりがすごい。同じ飛行機には眠くなってぐずる子もいた中、本当にタフな子だなあと思う。
 1時間の短いんだか長いんだか分からないフライトを終えて、ようやくベルリン空港に着いた時には23時を過ぎていた。

ベルリン空港は日本からの直通便はなし
22時近いのにこの明るさ

 ウィーン空港で入国審査は終わっているので、預け入れ荷物を受け取って後はホテルへ移動するだけ。EU・特にドイツではロストバゲージが頻発しているらしく、2日分の荷物を手荷物として分けるなどの警戒体勢をとっていたが、無事全員の荷物を受け取れてほっとする。
 ベルリン空港からの移動では、二手に分かれて呼んだUberタクシーの一台とうまく連絡できないというトラブルが発生。お互い慣れない英語でやりとりしたものの、広い駐車場のどこにいるのか確認できず、やむなくキャンセルして現地のタクシーに乗り込む。
 もう疲労困憊で、早くホテルに帰って休みたいの一心であるが、それでもタクシーの窓から見える異国の風景には心惹かれる。
 空港を出てすぐ目を引くのは、巨大なメルセデスやBMWのショールームだ。すれ違う大型トラックにもベンツのマークがついていて、ここはドイツなのだと強く意識させられる。町中に入ると、車に混じってたくさんの電動キックボードが、夜更けの街をびゅんびゅん走っていくのが見える。あちこちにグラフィティアートが点在している。
 タクシーも結構なスピードで疾走し、30分ほどで最初の宿泊先・メルキュールホテルベルリンミッテへ到着する。先着していた佐々木さんたちが、先にチェックインの手続きを始めてくれていた。

メルキュールホテルベルリンミッテ
フロント横のスペース 奥の冷蔵庫で高価い水が買える
フロント アクリルボードに手書きの文字がオシャレ

 結局午前過ぎの到着となってしまったが、Rくんはひどく眠そうにしているものの、ついぞ泣いたり愚痴を漏らしたりすることはなかった。本当に偉いねと彼の頑張りを讃えながら、それぞれ部屋に別れていく。
 佐々木さんとDさん、Kさんから、これから隣のホテルのバーで一杯寝酒を飲まないかと誘われたが、さすがにクタクタなので遠慮させていただく。みんな元気すぎる……。

やっと着いたー…

 とはいえお腹はペコペコなので、持ってきたカップヌードル(シーフード味)を夫と二人で啜る。至高の味である。それとホテルのロビーで販売していたビールでささやかな宴とする。交互にシャワーを浴びて、ようやく就寝。ホテルの部屋には、ハンドタオルやバスタオルの類いがひとつも置いていない。こんなこともあろうかと、タオルを沢山持ち込んでいたので事なきを得たものの、疲れがどっと押し寄せる。とにかく、無事に着くことができた。あとはもう何も考えず、泥のように眠ろう。

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