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ベルリン旅行記⑤2022/7/17 晴れ

※この日の後半は割としんどい記述が多いので、無理して読まなくて大丈夫です。

 あまり眠れなかったが、朝はやってくる。
 いやむしろ、どんなに悔しくても横になっていれば多少の眠気はやってくるものだ、という感じだ。ウトウトしては起き、目が覚めると(ああそうか…終わったんだな……)とがっかりするのを何度か繰り返し、つらい朝だ。
 でも外は晴れ。今日はベルリンコンに行く予定なので、雨に降られるよりはずっといいけど。

 よろよろと起き出し、気を取り直して朝食を摂りにいく。nhowホテルはパリピ御用達仕様のため、日曜日の朝食会場を12時くらいまで開けてくれているらしい。我々はたしか7時くらいに朝食をとりに行ったが、既に席はかなり埋まっており、わりとみんな早起きだった。
 見れば、SdJの審査員たちの顔もちらほら。やはりみんな、このホテルに泊まっていたらしい。目が遭うと、軽く挨拶をする。

オシャレに飾り付けされた朝食ビュッフェ
やっぱりハムがたくさん
ヨーグルトが猫足のバスタブに

 nhowでは初めての朝食だったが、メルキュールホテルとラインナップがほぼ同じで、少しがっくりする。ハム・チーズ・パン、少しの野菜に、卵料理。今考えればもう少し自分でバリエーションをつければよかったのだが(シリアルをとってみるとか)考えるのが面倒で、いつもと同じような内容の朝食をとった。日本のホテルの朝食ビュッフェが、少し恋しくなる。せめて、あたたかいスープの一つでもあれば違うのだが…。

オムレツ美味しかった
あとヨーグルトがメチャでかい
紅茶のラインナップは大変充実している

 空いているテーブルがなくて席を探しうろついていると、Dさん父子が二人で4人席についているのを発見し、有り難く相席させていただく。
 オインクゲームズさんたちの今日の予定は、ベルリンコンの参加と、ベルリンコンの打ち上げを兼ねた夕食会。わたしたちも行き先は同じであるが、昨日のダメージが尾を引いているため、夜まで別行動にさせていただく。
 食事の後、部屋に戻ってのんびり着替えをし、ベルリンコンに向かう。オインク勢は我々より先にホテルを出て会場へと向かっており、ラウリーさんに至っては、ベルリンコンで販売のリーダーを務めるため、朝早くからもうイベントブースを切り盛りしているのだ。本当に頭が下がる……。

 nhowホテルから最寄り駅までは、歩いて5分程度。そこからベルリンコンの会場まで、電車で乗り換えなしの6駅移動である。シュプレー川沿いの道を歩いて駅に向かう。大きな川のそばを歩くのは、なかなか気持ちが良い。犬の散歩をしている人もいる。

大きな橋のかかるシュプレー川
Warschauer Straße駅(何故か大型犬がいる)
駅構内にいろいろなお店が入っている

 電車に乗ってしばらく、車窓からの風景をぼーっと眺める。Uバーンは地下鉄ではあるが、途中地上の駅に出る区間もあり、nhowホテル最寄り駅のWarschauer Straße駅からベルリンコン会場のU Gleisdreieck駅までは、地上を走っているのである(東京メトロでいう、丸ノ内線のような感じだ)。アパートの5階部分の壁面にもスプレーで落書きがされていて、あれはどうやって描いているんだろうなあ……等と考えているうち、気づけばもう7駅くらい過ぎているのに、一向にU Gleisdreieck駅に着く様子がないことに気づく。
 見れば、電光掲示板の行き先表示がさっきからまったく変わっていない。どうやら、線路工事か何かで電車の行き先が変わってしまったらしい。
 慌てて次の駅で降り、Googleマップと乗り換え案内図を繰り返し見比べて、なんとかルートを脳内で検索し、目的のU Gleisdreieck駅に約10分遅れで到着した。
 このリカバーに成功したことで、「海外旅行でトラブルが発生しても、少しのことなら自分たちだけで対処できるぞ」というほんのりした自信をつけることができた。(※別にこれはフラグでも何でもないです。念のため)

のんびりしたベルリンコンの入り口広場
入り口広場のフードワゴン

 ベルリンコン会場は、U Gleisdreieck駅すぐという好立地である。というのも、この会場(STATION Berlin)はそもそも古い車両倉庫をイベント会場に改装したもので、交通アクセスも広さも抜群に良いのだ。東京ビッグサイトの(今は無き)青海会場のような感じである。
 入り口ゲートでオインクさんが手続きしてくれた出展者PASSを提示すると、にこやかに通してもらえる。開催2日目となる本日は、やはりギークが多く集まる1日目と比べて家族連れが多く、全体的な集客は少なめのようだ。そこはゲームマーケットと概ね同じらしい。

 会場入ってすぐのところで、佐々木さんと合流。連れ立って会場内を移動し、奥のエリアにあるオインクゲームズブースへと到着する。

試遊が途切れず、賑わっているオインクブース
SCOUTにはSdJのポップが

 2卓ある試遊コーナーは埋まっており、ラウリーさんや2日前に夕飯をご一緒したトビーさんら、オインクTシャツを着たイベントスタッフの面々が、忙しく立ち働いている。
 オインクブースのそばに机と椅子の設置された広めのプレイスペースがあり、そこで佐々木さん以外のオインクメンバーズとも合流する。なんと、Lちゃんは自腹でSCOUTを購入してくれたとのこと! ドイツ語版なのに…! 本当に気に入ってくれたようだ。ありがとう!

 13時頃から『暮しとボードゲーム』さんのツイキャスに夫と佐々木さんが生出演するとのことで、配信できる環境を探して移動。会場内はざわついており、PCのマイクが雑音を拾ってしまうため、ウロウロ彷徨った挙げ句、会場入り口近くの広場まで移動することとなった。
 配信中、ちょうど夫が喋っている間に近くにいた子が地面に身を投げ出して大泣きするわ、頭上を電車がガタゴトと走っていくわで、結局こちらでも周囲の雑音に悩まされることになった。
 イベント会場での生中継というのは、なかなか難しいものだ。

配信中のお二人。後ろのお子さんが、のち号泣する

 生出演終了後は、佐々木さんたちと再び別れて、夫と二人でベルリンコンの会場内をウロウロしてみる。

大箱ボードゲームが平積みされてる
企業の試遊エリア
レゴで出来たポルシェ!もしかして走るのかな?
レゴでできたチェス
ハリーポッターみたいだ
コナミブースでは遊戯王が大々的に販売されている

 いろんなブースが出ているが、当然というか、9割方が大手アナログゲーム会社や出版社、グッズ会社の出展ブースであり、残りの1割は中古品の販売ブースといった感じである。個人制作のゲームを売っているブースは、ざっと見た感じ見当たらなかった。
 日本のゲームマーケットでは個人制作のゲームが大量に売られているが、これは世界的に見れば本当に特殊なのだということを、強く感じさせられる。やはり「同人」という概念が根付いている日本ならではの現象なのだろう。

 また、オインクゲームズのブースは会場の最も奥まったエリアに配置されていたが、他のSdJ・KeSdJノミネート作は軒並み入り口近くに配置された巨大なブースで販売しており、会社の規模の違いも強く意識させられた。
 この状況でSCOUTがSdJにノミネートしたことは、本当に凄いことだったのだ。
 何から何までお世話になりっぱなしのオインクゲームズさんに、少しでも貢献できたらいいなと思うと同時に、個人で好きなゲームを作って頒布できる日本のシーンの面白さも痛感する。
 そんな日本の同人ゲームが今回、世界のマーケットで勝負する大手資本のゲームと対等に肩を並べて評価されたのだから、胸のすく思いだ。これでもし大賞を獲っていたら、一体どんな世界が見られたのだろう?

売り子として奮闘されているラウリーさん
昨日の授賞式でも大活躍でした
オインクゲームズはグッズも可愛い
楽しく試遊してくれており感無量

 いろいろ考えつつ、ベルリンコンの会場を見て回る。衣料品を販売しているブースで、ミープルプリントのTシャツや靴下を買い、ホクホクと会場を後にする。

今回の戦利品!
ドイツ語ではルールが読めないためゲームは購入せず

 できたらまた午後も会場を見て回りたいため、会場付近で昼食を摂ろうと近くのお店に入ると、なんと、オインクメンバーズも同じお店に食事をとりに来ていた。
 ビアガーデンのようで気持ちよさそうだからここで食事にしたかったが、「売り場が滅茶苦茶混んでいて、料理を取りに行くだけでかなり並ぶよ」という情報をもらったので、この店はやめておくことに。
 疲れているし、とりあえずどこか冷房の効いた場所で涼みたい。幸い、ベルリンコン会場は昨日まで泊まっていたホテルの道向かいであるため、さんざんお世話になったメルキュール隣のホテルのロビーで休憩することにした。

 スターバックスのテナントが入っていたので(ドイツではスタバ以外の喫茶店には存在しないという)アイスコーヒーを注文する。
 冷たいアイスコーヒーが、疲れた身体に染みる。

一息ついているムーミンさん
スタバのサラダすら相変わらずの大きさ

 アイスコーヒーを飲み、サラダボウルを食べながら、ベルリンコンの会場に入っていく人々をぼんやりと眺めているうち、唐突に目眩を感じた。
 やばい、と思って向かいに座る夫にその旨を告げると、ほとんど同時に夫も危険なレベルの肉体疲労を感じたとのこと。このままベルリンコンに再突入したら、二人して倒れそうだ。

 下げ膳をして、駅に戻り再び電車に乗り込む。車内は混んでいて、空気が淀んでいる。周りの人熱、強い香水の匂いに、頭がクラクラしてきた。
 早く着いてくれ…と念じながら電車に揺られ、なんとかWarschauer Straße駅に戻ってきたのは、多分16時過ぎだったかと思う。
 駅で炭酸なしの水を買い、重い足取りでホテルへ戻ってくる。ベッドに倒れこみしばし横になるも、頭はぼうっとするし、ぼろぼろと涙が勝手に出てくる。

ムーミンに助けてもらっている様子

 これは本当にやばい。少しでも眠らなければ、と思うのに、なんだか頭が冴えてしまって眠気もやってこない。
 オインクゲームズさんがとってくれたお部屋にバスタブがあって、本当に助かった。お湯に浸かり、身体を伸ばして、なんとか人心地ついた。
 ベッドに横になり、しばし仮眠を取る。この状態ではとても夕飯に繰り出すことは無理だろうと思われたので、申し訳ないがドタキャンさせてもらうことにした。ラウリーさんがせっかくお店を予約してくれたのに、大変申し訳ない。彼女が一番疲れているはずなのに、「大丈夫ですよ。お疲れでしょう、ゆっくり休んで」と優しいメッセージを頂いて、情けなさがMAXになる。
(結局、ラウリーさんとはベルリンコンでちょっと挨拶したのが最後になってしまった。また近いうち日本に来られるということなので、お会いしてちゃんとお礼が言いたいなと思っています)

 少し寝ては起きる、を何度か繰り返す。
 眠りは浅く、精神状態はいつまでたっても浮上しない。こんな状態で食事会に参加してもきっと楽しめなかったし、気を遣わせてしまうだけだったろうから、キャンセルして良かったのかもしれない。
 お腹は空いているはずなのに、全然食欲が湧かない。もうすぐ店が閉まってしまうし、この辺りはあまり治安が良くないから、暗くなってから繰り出すのもしんどい。でも、今は動きたくない。何も食べたくない。考えるのも面倒くさい。なんか、もう疲れた……。
 早く帰りたい。日本が恋しい。お米が食べたい。広い湯船に浸かりたい。ウォシュレットが欲しい。日本に帰りたい、でも飛行機乗るのやだな。いや、もうそれでもいい。ここでドロドロになっているよりマシだ。いっそ予定繰り上げて帰っちゃおうか。ああ帰りたい、日本、日本…………

 と、最底辺に落ちているとき、唐突にはっと気づく。
「そうか、これがホームシックか!!」
 そうだ。考えてみれば、昨日の授賞式でのダメージや生理による精神不安定など、ホームシックにかかるだけの条件は揃っている。

 というわけで、お湯を沸かして、夫が成田空港のセブンイレブンでご購入下さった豚汁を作り、食べてみた。
 う……うま~~~~~い!
 命を助ける味噌の味…!
 二人で交互に、うまいうまいと言ってひと口ずつ大事に食べる。
 その後、フリーズドライの鮭雑炊もいただく。
 あ……お……美味し~~~~~い!!
 お米のありがたさが五臓六腑に響いていく。

 誰だ、こんな手軽で美味しいものを買うのに渋っていたクソ野郎は!! わたしだ!!!! すみませんでした!!!!(ローリング土下座)
 お腹が温まると、心も安らぐ。横になると、先程より確実に深く眠れた。

 夜中の1時くらいに、再び目が覚める。
 横になったまま、Twitterのタイムラインを眺めて、心を癒やしてくれるような優しいツイートを探し、片っ端からいいねをして、その後自分のいいね欄を見返して癒やされる、というセルフヒーリングを行う。
(※あの時いいねをさせてくださった皆様、その節は本当に有難うございました。あなた方の優しさのお陰で、今のわたしがいます)

 夫も起きてきて、「お腹減ったね」と言い合う。カップヌードルを作ることにしたが、先程駅で買ったお水だけでは足りない。
 もう夜中なので、2人で1階の売店に買いに行くが、水は売り切れである。
 フロントスタッフにその旨伝え補充してもらおうとしたら、タダで2本くれた。嬉しいけど、よく見たら炭酸水だ。カップ麺て炭酸水でも食べられるのか? ネットで調べたら、沸かせばいけるらしい。OK、なんでもいい。やってみよう。
 3分待って出来たカップ麺を、二人でまた交互に啜る。
 阿呆すぎる過去のわたしは、こういう時のためのカップラーメンだというのに、何故か「トムヤムクン味」をチョイスしていやがった。
 なんでだよ。「わたしは日本食恋しいとか、絶対ならないも〜ん」なんてイキりやがって。スタンダードな醤油かシーフードか、せめてカレーヌードルにしとけよ。…と、1週間くらい前の愚かなわたしを二人で罵りながら、深夜にカップヌードルを食べる。
 なんだかんだでちゃんと美味しいから、日清は偉い。でもトムヤムクン味は、日本で食べるのに限りますね。

一番の推しヌードルではあるのだけども…

 昨日のKさんのポテチ落下事件を思い出し、「このテーブルは角が丸いから、端の方に置いたらだめよ」と戒めつつ、食べる。あの落下の光景を思い出すたびに笑えて、心が助かる。
 ここまで来ると、だいぶ気持ちが浮上してきた。どうやら、一番やばいメンタル状態は抜けたらしい。
 冷蔵庫の中に残っていたビールを飲み、昨日買ったけど食べきれなかったナッツを摘まみながら、二人でポツポツといろんな話をする。

 我々はサッカーファンで、主にJリーグをよく見ているが、たまに海外移籍をしたもののホームシックになり、古巣チームに戻ってくる選手がいる。
 今まではそんな選手たちを「せっかく挑戦しに行ったのに帰ってくるの早すぎる」とか言ってたけど、もう二度と彼らのことを悪く言うのはよそう。たった一人で海外に渡って、周りのチームメイトもみんなライバルで、言葉が満足に通じなくて、実力を示すまではパスも回してもらえなかったりして、そんな中で毎週毎週、勝ったり負けたりを繰り返すのなんて、精神を病むに決まっている。たった一週間しかいない我々がこんなに病むのに、一人で何年も孤独に戦い続けるなんて凄すぎる。……というようなこととか、まあ、いろいろなことを話し合った。

 少しずつだが、ようやく元気を取り戻しつつある。とにかく今は何も考えずに、ゆっくり眠ろう。

癒し……

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