心の瞬発力

 「文章を」書こうと思った時、

その時はほとんどアイデアは浮かんでいないことが多いです。

でも、手を動かしているうちに色んなことが浮かんできたり、時の偶然でおもしろい、素敵な言葉がぽーんと飛び出てきたりします。

それは大概荒削りで、支離滅裂な、論理構造もくそもない、文章というには恐れ多いくらいめちゃくちゃな、言葉の塊になってることがほとんどです。

でも、とりあえず、その時はそれで良くって。思い浮かぶもの全て、先に形にしてしまった方が良いんじゃないかと思っています。

衝動が瞬間的なピークを迎えるように、感動が最大値のまま持続しないように、言葉にだって鮮度があるのです。アイデアにも鮮度があるのです。

ちょうど、魚のお刺身みたいに、冷凍保存すれば質は落ちるし、放置しておけば腐ります。アイデアは、言葉は生物みたいなもんです。

もちろん、生のままでは食べられません。

食べられませんというと語弊がありますね、おいしくいただけません。笑

美味しくいただくには調理が必要です。それは、文章構造的なレシピだったり、比喩みたいなスパイスだったり、言葉選び、組み合わせ、足りないものを足したり、粗や雑味を削ってみたり、いろんな調理法があります。

だから、先に、全ての言葉を、食材を揃えてしまえばいいのです。必要ないもんは後で削ればいいし、完成系なんて見えてなくたっていい。

レシピもそうだけど、言うなれば、彫刻みたいな作業になってしまうのが、理想的なのかもしれないなぁって思ってみたり。

ではここからが本題です。

そんな食材を、言葉を、アイデアを、どうやってかき集めるか、アウトプットするか。

保存のきく食材があるように、長持ちするアイデアもあります。

でもそんなものは、メモっておけばいいのです、忘れないように書き出してみて、一度それで覚えているなら、それはきっと長持ちするタイプの言葉。

ストックしていいアイデアと、そうじゃないものがあります。

"そうじゃないもの"の方はきっと、その感情が心の底から湧いてきた時、その瞬間に書いていくからこそ、大きな意味を持つ言葉になるんじゃないかと、思うのです。

大事なのは、その感情を、いかにして鮮度の高いままの言葉にするか。体系化していくか。早さが、時間だけがものをいう世界。

言うなれば、「心の瞬発力」を、持っていなければいけない。

言葉の数だけ、アイデアの選択肢が増えるなら、

心の瞬発力を活かせるだけ、言葉が書き出せるのだとしたら、

本当に必要なのは、心の瞬発力をもって、思い浮かぶもの全てを言葉にしてしまうこと。

瞬発力とは、すなわち反応速度である。

沸騰しそうなお湯をみて、そろそろ沸騰するな、って思って次の段階を準備できたらベストだし、

突然起こったできごとに対して、直感的に、その場で素早く判断を下したり、何かをもって挑んでみたり。

いろんな場面があって、その度に心の瞬発力は試される。

でも、それと同じくらい、言葉にしたければ言葉に書き出す速度だったり、

音にしたければ、作曲する速度だったり、

絵だって、写真だって、表現するものはなんでもそうで、

ココロを、爆発的な感情をカタチにするための速度が問われる。

そのために、僕らは技術を身につけなきゃいけない。

知識だったり、セオリーだったり、歴史や先人の知恵だって、自分の経験だって糧にして、技術を体系化しなきゃいけない。

そうして初めて、自分の技術が、言葉にしたいものを、表現したいものを書き出す速度に追いつくことができる。

自分の言葉を、表現を、感情が溢れ出す波に乗せることができる。

それはきっと、本当に魂を削るような過酷なものになるかもしれないのだけど、

それでもその先に見える景色は、きっとその人にしか見えないものになるんだ。

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