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飛行機と一緒なら死ねる。

突然ふと、自分が死ぬ時のことを想像してみた。

隣に母がいたので、聞いてみた。

「もし死ぬなら、どんな死に方がいい?」と。

母は昔から「長生きなんてしたくないし、死ぬのも怖くない」というタイプだから、こんな話も大して驚くことなく答えてくれるので、その点理解があってありがたい。

母は「そやなー。老衰が1番ええけど、何かしら病気にはなると思うから難しいやろな。少なくとも水に溺れて死ぬのだけは嫌やなー。」と言った。

わたしもできれば老衰で死ぬことを所望する。

でも、もしそうでないとしたら。
母が言うように水死は苦しいから嫌だし、焼死も死ぬ前から死にそうになるし、病気で数年苦しんで何もできないまま死ぬのも生きてる感覚を無くしそうだから、やっぱりそれも嫌。
だから、いっそ、楽しい思い出の中で死にたいなと思った。


そう思った時、「あ、飛行機で死ぬなら後悔しないかもしれない。」と思った。

もちろん、これまで飛行機事故で亡くなった方やそのご遺族の方にとっては、何を言ってるんだ、いい加減にしろ、本当の辛さを知らないんだと思われるかもしれないし、堂々と言って良いことでもないと思うんだけど。

でも、この間飛行機に乗った時も、やっぱり同じことを思った。

「今日この瞬間、飛行機事故に遭っても、わたしは後悔することなく死ねる気がするな。」と。


昔から飛行機が走り出す瞬間の、「よし、行くぞ!」と言わんばかりのエンジン音と、一瞬ずしっと重くなるあの感覚が大好きだった。

地上を離れた瞬間の、今自分が上空何メートルまで上がっているのか目視では理解できないあの感覚、景色が一気に見渡せる壮大さ、雲をまっすぐ切り裂いていく強さ、一定の距離まで来るととても穏やかに飛行する優しさ、全てが愛おしく、嫌なこと全てを無にしてくれる飛行機が好きだった。


あまり近い存在でもないから、今まで気づかなかったけど、どうやらわたしは想像以上に飛行機が好きだったようだ。

わたしが母に、「わたし、飛行機の中でなら死ねるかも。」と言った。

そしたら母は「やろうな。だって、あんた、飛行機好きやもんな。」と。


あら、わたしが自分で気づく前から母はわたしが飛行機が好きだったことを知っていたみたい。

「あ、そう見える?わたし今気づいたんやけど。」と言うと、

「え?昔から空飛んでる飛行機見ては嬉しそうにしてたし、飛行機飛行機!て小さい時から大人になっても、最近までずっとそうやったやん。」と言った。

これにはびっくり。
無意識に飛行機がすごく好きだったみたい。

飛行機に乗る時は、大抵心に余裕がない時だと言うことも、最近気づいた。
飛行機に乗ることで、そのストレス解消をしていたんだ。
(もちろん、飛行機を乗ることだけが目的ではなく、その先の目的地へ着くためではあるんだけど。)


わたしにゆとりや強さ、優しさを与えてくれて、最後は一緒に死んでいくのなら、まあ、それはそれで有りなんじゃないか、と。

飛行機と一緒なら、死ねるかも。

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