ネトゲ婚した人にインタビューした話!(4/4話)
(前回のつづき)
■驚きだけど納得の秘訣
「僕が考えるネトゲ婚がうまくいく秘訣は、ネトゲをやめることですね。」
?????
「もう少し正確にいうのでしたら、ネトゲ婚が決まった時点でどちらかがやめるか、二人とも辞めることが大事だと思います。」
ネトゲ婚したら、どっちかがネトゲやめた方がいい。
ネトゲ婚したら、ゲーム内で遊ばない方がいい。
なんじゃそりゃ!?とほとんどの人は思うことだろう。
私も一瞬面食らったが、『たしかにこれは真理だな』と思った。
これも完全な独自研究になるのだけど、ネットゲームがきっかけで交際・結婚した人はネットゲームが原因で破局するケースが多いように思う。
好きな人と一緒にネットゲームを遊ぶのは、とても楽しいことだと思う。
しかし、2人ともゲームにのめり込み過ぎてしまうことでリアルがおざなりになってしまったり、
ゲーム内のトラブルに巻き込まれた結果、気がついたら関係が冷え切ってしまうこともあるかもしれない。
だからこそ、交際や結婚が見えてきたのであれば、ネットゲームを何らかの形でセーブすることが大事なのかもしれない。
「僕の場合は、交際が始まってしばらくしたら妻(マロニーさん)のゲームのプレイ時間が減っていきました。そして自然とリアルでの交際が中心となったことが、ネトゲ婚して上手くいった秘訣であると今も思っています」
マロニーさんのゲームプレイ時間は減り続け、入籍する頃には全くネットゲームをしなくなってしまった。
しかしそれがあったからこそ、ノウキンさんは自分たちの関係が非常にうまく行っていると信じている。
「ウチの場合は妻のほうがゲームを控えてくれたので私は偉そうなこと言えないんですが、そういった態度から学ぶところがとても大きかったです。妻には感謝しきれません」
ネトゲ婚の秘訣、それがまさかネトゲから離れることだとは予想だにしなかった。
ちなみにノウキンさんも、一時に比べるとかなりゲーム時間は少なくなっており、リアルの家庭に使う時間が増えていることを補足しておく。
■リアルを大切に
ゲームで知り合った人との交際を考えているような人に対して、何かアドバイス的なものはありますか?
「交際するのであれば、ゲーム外でコミュニケーションを取ったほうがうまくいくと思います」
「ゲーム内チャットやDM(ダイレクトメッセージ)ではなくて、LINEや電話のほうがいいですね。ゲーム外での時間を大事にしてほしいと思います」
「ゲームで出会うからこそ、私はゲームよりもあなたを大切にしていますよ。という愛情表現が必要なんだと思います」
ゲーム内の機能を介したコミュニケーションは便利だし面白いのだけど、せっかく交際したのならば対面や電話に勝るものはないのだろう。
2人の今後を考えるならば、なおさらゲーム外での時間を作るべきなのかもしれない。
「それと、興味のある場所には積極的に出かけることも大事だと考えます」
ノウキンさんは、交際時・結婚後も含めてドラクエ関係のイベントにはマロニーさんと一緒にたくさん足を運んだ。
ルイーダの酒場や期間限定のドラクエ展やコンサート、ドラクエ10の公開イベントなどなど。
ふたりともドラクエが好きなので、とてもいい思い出になったという。
■ネットの出会いだからこそ
ネットがきっかけで出会った関係だから、交際中に気をつけるようにしたことなどはありますか?
「気をつけていたことといえば、自分のネット上の友だちや交友関係などを包み隠さず教えていたことです」
「ネットでつながっている人たちだからこそ、ネットの人間関係はつまびらかにしたほうがいいと思っています。変に隠したりするのは絶対にやめたほうがいいですね」
「だから自分のネットゲームのフレンドだったり、オフ会仲間のみんなについてどんな人だよと教えたり、一緒に会ってもらってしていました」
「交際中も含めて、妻に隠れて絶対にゲームはしませんでした。同棲するようになってからは特にそうしていましたね」
相手に隠したり誤魔化したりすればするほど、?(クエッションマーク)マークが増えていくことになるので、ノウキンさんは自分の友人関係をマロニーさんに隠すことはなかったようだ。
この?マークを作らないことがとても大事だとノウキンさんは語る。
「交際関係を長く続けていくと?マークは火種になってしまいます。」
「?マークは疑いに変わってしまいます。できる限り?マークを無くす努力をしたほうがいいと思います。それをなくしていけば、2人の結びつきは強くなりますね。」
乱暴な言い方になるが、ネットゲームで相手を見つけたということは、またネットゲームで別の相手を見つけることが出てきてしまう。
設定を変えればログアウト状態しながら、隠れてゲームを遊ぶこともできてしまう。
だからこそ、相手に不信感を抱かせることを絶対にしてはダメというわけだ。
余談だが、実はマッチングアプリでも同じような悲劇が多発している。
マッチングアプリがきっかけで交際を始めた二人が別れてしまうパターンの一つに、交際後も隠れてこそこそマッチングアプリを続けていることがバレて険悪になったり、新しい異性を見つけてしまい破局するというケースがかなりある。
隠れてコソコソすることが最終的に2人を不幸にしてしまうのだ。
■私とあなた
「それに結婚後も二人で同じゲームを続けてどっぷりになってしまうと、私とあなたが希薄になってしまうと思っています」
どういうことだろうか。
ノウキンさんいわく、例えば2人でゲームにどっぷり状態だと
・チームメンバーの××さんがさ~
・開発者の〇〇さんが~
・ブログ書いてる◎◎さんが~
という具合に、自分たち以外の第三者が会話の主役になりやすくなってしまう。
交際や結婚した後は、『私とあなた』が生活の中心になるべきなのに、その概念が崩れてしまいかねないというのだ。
ネット上の誰かさんよりも、主役は自分たちなのだから話題を『私とあなた』に向けることが必要だという。
たしかに友達同士なら共通の趣味を語り明かすのもいいかもしれないが、共同生活を送るパートーナーとならそうはいかない。
まずは自分たちを大切にすることをノウキンさんは教えてくれた。
■周りの反応は
ネトゲで結婚したことについて、ご両親や友人など周囲の反応はどうだったのだろうか、
「両親は高齢ということもありまして、ネットゲームの仕組み時代がよくわかっていないようでしたが、結婚できてめでたいという感じでした」
これは確かにそうだろう。
ネットを通じて出会うなんて、昔では想像すらできなかった出会いの方法だ。説明するのも難しいと思う。
それでも、とにかくめでたい!というご両親のスタンスは見習いたいところだ。
「同僚や知人たちはIT関係が多かったので、ネトゲ婚について全然抵抗や心配の声もありませんでした。むしろ、そんなこともあるんだ!?どうやったんすか!?と驚いている人が多かったですね。」
今よりもネットでの交際がまだ多くなかった時期だけに、結構食い気味に聴いてくる人もいたらしい。
そして結婚式では、ゲームがきっかけで出会ったことを伝え、式で流すムービーにも、
ノウキンさんとマロニーさんのゲーム内キャラクターが仲良く映る写真を使ったそうだ。
ネットゲームならではの演出だと思う。
■マッチングアプリについて
そういえば、マッチングアプリについてはどう思われますか?
マッチングアプリで結婚した身として聴きたかったことを厚かましくも尋ねてしまった。
「出会いのプラットフォームとしてはすごく優秀だと思います」
「昔から男女の出会いはいろんな手段や方法がありました。最新の出会い方じゃないかなと思います」
「出会いの方法は変化し続けているので、もう何年かするともっと別のものが生まれてくるんじゃないでしょうか」
非常に鋭い分析をしてくれた。
お見合い結婚が主流だった昔と比べて、出会い方はバリエーションは大きく広がっている。
これからしばらくはネットがきっかけの出会いがしばらく主流になるかもしれない。
■マロニーさんの強さ
結婚して5年ほど経ったころ、ノウキンさんが疑問に思っていたことをマロニーさんにぶつけたことがあるという。
「そういえば、どうして怪しいと思っていた俺と結婚したの?」
今でこそ仕事が安定しているが、交際時にはそれほどでもなかったし先行きがどうなるか全く分からなかった。
ノウキンさんは、そんな状態の自分と入籍までしてくれたマロニーさんの行動をある意味不思議に思っていたのだ。
この問いかけにマロニーさんは平然と答えた。
「別に怪しいとも危ないとも思っていなかったし、最悪、あなたがどうにもならなくなっても私が頑張ればいいだけじゃない。
私、仕事辞めてなかったでしょ?だから、危険な賭けをしたとも思ってないわよ。」
マロニーさんも、これから始まる新婚生活を真剣に考えていたのだろう。
この答えをもらったノウキンさんは、改めてマロニーさんを尊敬したという。
なかなか言える言葉ではないと思う。
素敵な夫婦関係だなと私は羨ましく感じてしまった。
■お店を出てから
こうして私の厚かましいインタビュー(?)は終わり、ノウキンさんと連れ立って喫茶店を出る。
すっかり雨は止んでいた。
それからはドラクエ10のファンが集まる居酒屋に移動して、喫茶店よりも長い時間、幅広い話をした。
しかし不思議なもので、しばらく話していると自然と話題はドラクエ10の話に戻ってきてしまう。
サービス開始当時の失敗談、思い出深い敵やイベント、そしてゲームで交流を持った人たちの話まで話は尽きない。
実のところ、ドラクエ10が原因で辛い体験をしたり、私生活に暗い影が落ちてしまった人がいるのも事実だ。
だが、そういった場所でも、使い方や自分の行動次第で素敵な出会いを見つけることもできるし、幸せを築くこともできる。
ノウキンさんがその最たる例であるし、私もドラクエ10で知り合った写真に詳しいフレンドさんに撮ってもらった婚活用の写真がきっかけで、無事に結婚することができた。
「ネットは便利すぎる道具のようなものですが、使う人次第で大きく変わってしまうと思うんです」
IT関係のお仕事をされるノウキンさんらしい締めの言葉に、私も深くうなずいた。
わざわざ店員さんに外まで見送っていただき、店を出る。
なんとも名残惜しい。
しばらく歩いたのち、駅の改札で別れることになった。
その刹那、ノウキンさんから手が差し出された。
素敵なお別れの仕方だと思う。
キャロさんもこんなところに惹かれたのではないだろうか。
そういえば人と握手をしたのは何年ぶりだろう。
新鮮で温かい気持ちになってノウキンさんの手を握った。
きっと家に帰って、マロニーさん、いや素敵な奥さんとお子さんと楽しい時間を過ごすのだろう。
何から何まで懐が深く、見習うべきところばかりだったなぁ。
私は頭をポリポリと掻きながら、帰路へとついた。
(了)