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着物専門店のこだわり-⑥「コーディネート」

「コーディネート」を大事に!

これまでの着物専門店としてのこだわりは、お客様からは見えない部分であるが、譲ることのできない見える部分の私たちのこだわりがある。最終章は、着姿のポイントとなるコーディネートについての話をさせていただく。

冒頭に述べたように、私は「着物しか着ない」というシンプルな生活で「和の世界」に浸っていった。茶道と能楽を学び、日本の美に目覚めた。関連本を買い求め、「美術館」での催しや「古美術品」を見て回った。

何に対しても、美をくみ取る努力を重ねていたからだろうか。知らない世界が多すぎたからだろうか。知らないことを知ることの楽しさや喜びがまし、
プライベートな時間や趣味全てが、美を育むことへと繋がっていることを知った。

少しずつ審美眼(しんびがん)が磨かれてくる中、その美意識は海を超えて、西洋絵画・ラリックなどにも広がり、世界の美からたくさんのヒントを頂き、店作りの礎ともなっていったと感じる。

そんな中、やはり原点は「自然の美」だ。僕は男性着物なので、「素材」や「色」で季節を少し先取りするくらいである。一方、女性の着物姿は、帯揚げ・帯〆などの小物があるので、日本ならではの四季折々の美しさを、小物で表現しやすい。最も近くにいるカミさんの着物姿に、季節感をどう活かしていくかを考えるようになっていった。コーディネートの会話が楽しい。自分でも不思議な価値観だ。

例えば、ひな祭りの菱餅の色は、下から緑、白、ピンクとなっているが、その三色を自然界では、緑は「植物の芽吹き」、白は「残雪」、ピンクは「桃の花」という景色を表現していると言われている。これをヒントに、雛の節句頃の着物姿は、うす緑の帯揚げで生命の誕生を待ちわびる思いを込め、ピンクの帯〆で春の到来を祝うような、自然に感謝する思いやりのコーディネートをするのもお洒落である。気づいてくださった方と話が弾む。

また、春は桜色。夏は涼やかな水色。秋には柿色で表現。ボジョレヌーボの解禁日には、ワインカラーの帯〆でセンスアップ。自然界や節目の行事を着物のコーディネートに生かすことは、季節を待ちわび自然賛美にもつながるので、そういったことを思い浮かべるだけでも、日本人ならではの誠にゆかしい時間だ。

松尾芭蕉が提唱した「不易流行」という言葉があるように、和の國は流行を追うのではなく、「品良く美しく」・「品良く楽しく」というような、変わらない美しさを追求している。ご本人が気付かれていない、内面の美しさ・豊かさをより最大限に引き出すこと、さらに周りの方に配慮したコーディネートをご提案し続けたいと考えている。

また、叙勲式や結婚披露宴では、周りも華やぐような格調高い装いを。ホテルでの食事には一幅(いっぷく)の絵画を見るような男性らしさや女性らしさを見出す着こなしを。普段着には誰もが笑顔になるような楽しい取り合わせを。それぞれのシーンシーンに合わせたコーディネートを心がけている。

僕たち日本人を育んでくれた大自然から学び、これからも大切にしていきたいもの、それが「調和の美」だ。僕たちの店の屋号「和の國」は、「和を尊び、皆さまとともに日本の國を作っていきたい」という思いがある。また、日々の暮らしの中に日本伝統の和を取り入れ、着物で心を調える「調和の國」でもありたいと思うのである。

現代社会の中での着物姿だからこそ、着物・帯・小物などが目立ちすぎることのないよう、それでいて貴方らしく、個性を大切にするコーディネートを、私たちはこれからもお届けしていきたい。

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