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「トリガーポイント」の発生原理

今年の1月にドライ・ニードリング(略:DN)の資格を取ったので、今年のスプリングトレーニングから選手たちにも鍼を打てるようになりました。個人的にはホワイトソックスに入る前から興味があった資格だったので、今回球団から資格取得の許可が出たのはとてもラッキーでした。

というのもアラバマ州にある前の会社に勤めていた時はアスレチック・トレーナーはDNをできないという制約がありました。現在も州によってはDNの資格すら取れない所もあるようです。

そもそも”ドライ・ニードリング”という単語は日本ではまだ馴染みがないように思えます。アメリカでは20〜30年前からDNと鍼灸と違いの論争が起こっていますが、それについてはここでは割愛します。

DNの定義によると伝統的な鍼治療では鍼灸師は経穴に鍼を打つのに対して、DNは主に理学療法士が筋筋膜トリガーポイントに対して治療を行います。僕もアメリカの大学に通っていた時に初めてこの”トリガーポイント”という単語を耳にしました。これは1993年にTravel氏とSimon氏らよって造られた言葉で、後にGerwin氏によって一般に広められたそうです。

トリガーポイントは一般的にいう”しこり”や”コリ”のようなもので、これが筋筋膜上にできるメカニズムの理論は次のとおりです。

過剰に発生したアセチルコリンとその後に起こるカルシウムイオンのリリースが局所的な筋収縮を起こす。筋小胞体から放たれたカルシウムイオンは主に過緊張やオーバーユースの結果である一方、筋肉に対してのオーバーロードや打撲などによるダメージがある場合は細胞外にカルシウムイオンが見られます。こうやって局所的に強張った筋肉は他所よりも血流が悪くなって一種の酸欠状態になります。

酸欠状態になった箇所では炎症を誘発するいくつかの化学物質が放出されます。それらはブラジキニン、プロスタグランジン、セロトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、サブスタンスPに加えて、腫瘍壊死因子α、インターロイキン1β、インターロイキン8などの炎症性サイトカインです。さらに細胞外では水素イオンとATPが大量に放出されます。水素イオンの放出で細胞外のpHレベルが下がり、神経筋接合部からアセチルコリンを剥がす際に使用されるアセチルコリネステラーぜの活動に直接影響を与えます。酸性の環境下ではカルシトニン遺伝子関連ペプチドの放出が促されて、アセチルコリネステラーぜの活動が鈍ることが分かっています。

Germin氏らによると、カルシトニン遺伝子関連ペプチドはアセチルコリンに対する筋繊維の反応を過敏にさせます。上昇した代謝要求が細胞内のATPを枯渇させると、カルシウムイオンーアデノシン・トリホスファターゼ(Ca2+ATPase)ポンプの活動を効率的に抑えてることによってカルシウムイオンが筋小胞体に再吸収されるのを抑えます。

抑制されたアセチルコリネステラーぜは筋繊維鞘上にある過敏になったリガンド依存性受容体のアセチルコリンに対するアクセスを許容し、不正に活動しているCa2+−ATPaseポンプがカルシウムイオンとトロポニンとの結合を継続させます。結果、筋肉の拘縮と代謝危機の伝搬が起こります。

Shah氏らの研究によると、僧帽筋上部にトリガーポイントがある患者はそれらがない患者達と比べて水素イオン、ブラジキニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、サブスタンスP、腫瘍壊死因子α、インターロイキン1β、セロトニン、ノルエピネフリンの上昇が見られた記しています。これらの炎症誘発性物質が体内で継続的に一定以上のレベルも保つことで、末梢痛覚過敏になるための下準備となってしまいます。

とまぁ今回はこんか感じでまとめてみました。
大学の生理学の授業で聞いたことがある単語が多く出てきましたが、身体に起こる全ての現象には必ず原因とメカニズムがあって、それらを理解することで治療の質もあがるものだと思ってこれからも学び続けます

それでは、

参考文献: https://spinalmanipulation.org/wp-content/uploads/2017/07/peripheral-and-spinal-mechanisms-of-pain-and-dry-needling-mediated-analgesia-a-clinical-resource-guide-for-health-care-professionals-butts-et-al-2016.pdf



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