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ベロア耳の妹と再会


6:39


幸せな気持ちをぎゅっと抱き寄せて目が覚めた。

夢にあの子がでてきたからだ。

小学校5年生から高校1年生の
わずか5年ほどしか
いっしょにいられなかったけど

我が家に鮮烈な印象を残して
この世を去った、あの子が会いに来てくれた。



黒のラブラドールレトリバー
ベロア耳の私の妹
「ウェンディー」だ。


ウェンディーは多分、人だった。
そう思うくらいに何でも理解をしていて

「でっかいうんこ!」と
散歩中、知らんおっさんから
デリカシーのない言葉を浴びせられた時には

耳をぺたんと後ろに寄せて
「でっかいうんこしか出ないんです…」と、
今にも泣きそうな顔をしていたし笑



ハリーポッターを家で観ていると
オープニングの雷の映像が怖かったのか

ハリーポッターのあの不吉でワクワクする
テーマソング「ヘドウィグのテーマ」を
口ずさむだけで
逃げる、あるいは怖がって
膝に乗ってくるほど
感受性の強い子だった。笑


Hedwig's Theme

↑ここから聴けるよん。



夢の中で
私は、床も壁も天井も
全てが真っ白な風のない空間にいた。

ここはどこなのか、と不安に感じていると

艶々黒々した巨体のウェンディーが
突進するように
私の胸に飛び込んできて

思いっ切りハグをした。

ウェンディーはごついので
強目にハグをしても余裕。


「久しぶり!!会いに来たよ!!」

ハグをすると、ことばが伝わって来た。


痛くないの?と思うほど
しっぽを壁に叩きつけながら

懐かしい、リズミカルなしっぽリズムを刻んでいる。



その後ろから
今もわが家にいる
黒いトイプードルの「アニー」がちょこちょこと
走って来た。


アニーは今は走れない。
だっておばあわんだから。


ウェンディーの目をまっすぐに見つめながら
お願いした。

「ウェンちゃん、寂しいかも知らんけど
 まだ、アニーを連れて行かんといて?」

ウェンディーの茶色い瞳に
ぼさぼさ頭の寝起きの私が映っている。


「わかったよ。
 もうそろそろかなと思ったけどやめておくね。」


ウェンディーはそう言って
どこかへ走っていった。




目が覚めても、夢じゃない気がした。

ウェンディーが夢に出てきたのは
初めてではないからだ。


ケンタッキーのチキンみたいに細くなって
骨が剥き出しのアニーの足

歯茎で噛み噛みするドッグフードも
今では柔らかめ。


あと6日でアニーは18歳。


ベッドから出たら、アニーを
抱っこしてあげよう。



どろん。





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