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結局、最高のフィルムカメラってどれ?

年の瀬ですし、どうでもいい話題を。

フィルムカメラの中で「最高の一台」を選ぶとしたら何か。
これは難しい問題です。人気投票をしても票が割れる気がします。仕方ないので、わたしの個人的な見解で「2023年に選ぶ Best of フィルムカメラ」を決めることにしました。

「一生、EOS 6Dだけでいい」みたいなこと言っているわたしですが、もちろんカメラは好きです。学生時代から中古カメラ屋に入り浸っていろいろなカメラを手にし、そのおかげで(すごくマイナーなものを除けば)古今東西ほとんど全てのカメラの感触を思い浮かべることができます。これまでに出会った多くのカメラの中で気に入ったものを購入し、「それほどよくなかった」ものは手放してきました。つまり、手元に残っているカメラは数十年をかけて選び抜かれたものたち。その中からいいと思うものを並べれば、そこそこ信頼できるランキングになるはずです。

では、1位から12位まで順にいきます。

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1. ライカ M3

史上最高のカメラといえばM3と言わざるを得ません。巻き上げもシャッターも全てのフィーリングが最高で、ファインダーの見え味も素晴らしいです。寸分の隙も感じさせない精密感、漂う気品。その他の多くのカメラとは別物です。今はM6の方が人気のようですが、フィーリングと存在感の差は歴然としています。
ライカはそれまでのバルナック型から、このM3で大幅にモデルチェンジしました。既にある名声を捨てて一歩を踏み出したM3。そこにはライカの「最高を目指す精神」が詰まっています。いまのライカにその気概は残っているでしょうか。
(2010年に中古で購入)

2. キヤノン new F-1

わたしが中学生の時に父が購入して以来、ずっとメインで使っています。36年間一度も故障したことがありません。いや、不安を感じたことすらありません。「絶対の信頼を置ける」これ以上の性能があるでしょうか。あまりに身近な存在すぎて、多くは語れません。
(1987年に新品を購入)

3. ハッセルブラッド 500C

ハッセルへの憧れから、かなりくたびれたものを安く買いました。その後、シャッターが粘ってレンズを修理し、バックシャッターの根元が割れて本体も修理し、これまでの修理費用は購入金額を軽く超えています。
すべての動作が滑らかで、バシュッというシャッター音にしびれます。ハッセルのフィーリングは年代とともにガサついてきますので、うっとりするような滑らかさを味わいたいなら500系の最初の機種である500Cでしょう。スクリーンが交換できないのが難点ですが、後の交換用スクリーンを枠から外せば500Cにも入れることができます(ネジによる位置の微調整が必要です)。
(1995年に中古で購入)

4. ペンタックス ME

ペンタックスが好きです(益子の工場にあったカメラ博物館にも行きました)。そのペンタックスを象徴するカメラを1台選ぶとしたらMEでしょう。おそらく世界最小の35mm版一眼レフ。小ささは正義です。コンパクトながらもしっかりしたつくりで、愛情を持って作られたことが伝わってきます。倍率の高い大きなスクリーンで世界を見る感覚は今のカメラでは味わえないものです。スマートなスタイル、絞り優先オート専用という潔さ。こんな素敵なカメラが1万円しないのです。兄弟機として機械シャッターのMXがありますが、そちらはフィーリングもつくりも少し雑な印象で、デザインも野暮ったく、好きになれませんでした。
(2004年頃に中古で購入)

5. ニコン F

一眼レフの歴史上もっとも重要なカメラはニコン F。それに異論を唱える人はいないはずです。ニコン最初の一眼レフでありながら高い完成度。やわらかなシャッターフィーリングは後継機のF2では味わえないものです。モデルチェンジとは進化であると同時に(多くの場合)簡略化でもあります。最初の一台には全力を出し切った良さが詰まっています。
(ブラック:2005年頃に中古で購入, シルバー:1992年のいただき物)

6. コンタックス RTS II

カメラの命はファインダーです。そして、RTS IIは一眼レフ史上最高のファインダーを持つカメラです(デジタル時代になってからも「最高のファインダー」を売りにした一眼レフが出ましたが、まったく相手になりません)。デザインも文句なく最高の部類ですし、ニコン F3を少し危なっかしくした感じのフィーリングも悪くありません。ただし(コンタックスをお使いの方はわかると思いますが)故障が多いです。本当に多いです。ミラーは何度直してもずれてきます(レンズに当たって撮影不能になります)。巻き上げも壊れますし、謎のスタックで動かなくなったりします。大事な撮影には使えません。でも、ツァイスレンズの描写も含めて大好きなので、new F-1よりもよく使っています。
(1999年に中古で購入)

7. ペンタックス S2

コンパクトで凝縮感のあるボディ、実直で少し遊び心も感じさせるデザイン、ちょっと厚ぼったくて、だからこそ趣のあるブラック塗装。豪華ではないけれど、手を抜いたところが見当たらない、しみじみと良さを感じさせるカメラです。多くのカメラを手にしてきたわたしが自信を持って言います、ブラックのS2は「愛されるクラシックカメラ」が備えるべき特徴を高いレベルで持っている「まさにこれ!」的カメラなのです。欠点はシャッターのフィーリングがイマイチなことでしょうか。
(2022年に中古で購入)

8. ニコン F3

え?あんなにF3を嫌ってたのに?!
はい。最愛のnew F-1のライバルということもあって手を出さないようにしていたのですが、「フィルムが使えるうちにちゃんと使っておくべきだ」と思い最近買いました。あまりいいとは思えないファインダー、嫌がらせか!というレベルに見にくい露出表示、(わたし目線では)不恰好なデザイン…こんなのがnew F-1のライバルなんて笑わせるぜ!そう思っていました。
すみません。噂通りのいいカメラでした。巻き上げやシャッターのフィーリングは絶品です。色気のある官能的なカメラで、多くの人に愛されるのも納得できます。嫌なやつだと思っていたのに付き合ったら虜になるタイプの彼女。やられました。
(2023年に中古で購入)

9. コンタックス G1

コンタックスGシリーズは奇跡のカメラシステムです。京セラという、カメラに関しては弱小なメーカーが、よくこんな全く新しいものを作ったと感心します。愛と希望にあふれた美しい佇まい。そして、全てのレンズが(コンパクトなのに)トップレベルにすごい。G2の方がAFが迷わず、動きがキビキビしていて圧倒的にいいのですが、コンパクトでかわいいG1のほうが好きです(G2は手放しました)。
(1996年頃に新品を購入)

10.  ペンタックス 67

おおらかだった日本が作ったおおらかなカメラです。持って歩いているだけで身の回りのものがドラマチックに見えてきます。大きなファインダーをのぞけば、世界のすべてが生きていることに気づきます。そして、バシャコンという大きなシャッター音は「この世界で生きている自分」を実感させてくれるのです。何を撮ってもいい感じに撮れてしまう怖いカメラでもあります。
(2018年のいただき物)

11. オリンパス OM-4Ti

わたしにとってはじめてのオリンパス。なんと言ってもサイズが最高です。MEのほうが小さいのですが、OM-4Tiは手のなかで収まりのいい、最適な大きさなのです。柔らかいシャッターの感触も好印象。マルチスポット測光は、使ってみるとあまりの便利さに感動します。
故障してサービスセンターに持って行った時、すでにOM-4Tiはブラックしか修理受付していなかったのですが、窓口のおじさんが「大丈夫、わたしにはこのカメラは黒く見えますから」と言って受け付けてくれました。修理伝票には「OM-4Ti ブラック」と書いてありました。
(2000年頃のいただき物)

12. フジ CARDIA mini TIARA

まず、大学時代に友人が買いました。新品で2万円台とお手頃にもかかわらず、単焦点の28mmによるコントラストの高い魅力的な写り。それを見て自分でも買い、別の友人が買い、妹も買いました。これがあれば高級コンパクトカメラなんて必要ありません(わたしはコンタックス T3より好きです)。お弁当箱みたいなデザインも気に入っています。唯一の欠点は明るくても積極的にフラッシュが発光すること。そして、発光禁止の設定が電源をオフにするたびにリセットされることです。
(1995年に新品を購入)

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1994年の「田中長徳と読者が選ぶベストカメラ」では1位から3位にライカ M3、ニコン F、ニコン F3が選ばれています。今、同じようなアンケートを取ってもこの3台は上位に入るのではないでしょうか。もしかすると相変わらずトップ3を独占するかもしれません。

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もし、「フィルムで写真を撮りたいんだけどおすすめは?」と聞かれたら、(ある程度お金を出せるなら)new F-1かF3をすすめます。トラブルが少ないことは何より大事な性能だからです。ただ、以前ならレンズ付きで5万円以下で購入できましたが、最近はフィルムカメラの中古価格が上がっているのでそれを超えてしまいます。

できるだけ低価格で、あるいはもっと軽いものをということなら、ペンタックス MEに50/1.7とかニコン FEに50/1.8(どちらもセットで1万円台から2万円台?)あたりはいかがでしょう。機械シャッターがよければオリンパス OM-1やニコン FM、ペンタックス SPなら簡単に見つかると思います。

オートフォーカスの一眼レフについては所有したことがないので、コメントできません。以前ならコンタックス G1をおすすめできたのですが、G2に続いてG1も急激に値上がり気味なのですすめづらくなりました。

中判(ブローニー)もメーカーを問わず大きく値上がりしているので、いま買うのは躊躇します。プラウベルマキナなどの数が少ないものはなかなか下がらないかもしれませんが、ペンタックス 67やハッセルはそろそろ下がり始める気がします。

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それにしてもフィルムカメラは今でも惹かれるものが多いのに、デジタルでは欲しいカメラがありません。本当にずっとEOS 6Dでいいと思ってしまいます。

2024年、魅力的なカメラの登場に期待しましょう。


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