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【3泊4日・18切符とさるびあ丸で行く!伊豆諸島・神津島の旅】2日目・いよいよ神津島へ......!島に着いてもトラブル連続!?

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伊豆諸島各島を巡りながら神津島へ

 朝6時前、何やら周りの部屋が騒がしいのを感じ、目を覚ます。部屋のモニターを見てみると、この船がちょうど最初の寄港地・大島に到着するところであった。あたりが騒がしかったのは、下船の準備をしていたからだったようだ。
 眠い目をこすりながら朝食や歯磨きを済ませ、しばらくゴロゴロした後、デッキの外に出る。船は利島を過ぎ、新島へと向かっているところだった。そういえば前日、(神津島と同様に)利島にも接岸できないかもしれないと言っていたが、無事に接岸できたようだ。この調子なら神津島にも接岸できるかもしれない。少しだけ安堵する。
 にしても、昨日の快晴とは打って変わってどん曇りである。風も強く、体を持っていかれそうになる。

さるびあ丸の屋外デッキ
左から利島、鵜戸根島(無人島)、新島
新島
式根島

 その間にも、「神津島には港の状況により、接岸できない場合があります」というアナウンスが繰り返し流れる。神津島の前の最後の寄港地、式根島を過ぎてもまだ寄港できるかどうかわからなかった。

ついに神津島へ!

 10時前になってようやく、「まもなく神津島に到着します」というアナウンスが流れ始めた。神津島上陸が叶いそうだ。

部屋のモニターに到着の案内が表示された

 神津島に近づくにつれ、波が一層高くなる。船体が大きく揺れ、酔い止め薬を飲んだのにも関わらず吐き気が催してくる。
 さるびあ丸は無事、神津島・多幸湾に接岸した。

 そして10時20分、名古屋出発から実に28時間7分……ついに、神津島に上陸!!!数か月前からずっと行きたいと思っていた島についに上陸できた喜びと感動で、さっきまでの吐き気が嘘のように消えていた。

多幸湾とさるびあ丸
多幸湾
もし晴れてたらさぞ美しかったろう

 多幸湾は神津島の中心集落から離れているため、そこまでは村営バスに乗って向かう。1乗車200円。

神津島村営バス

 ここで、今回訪れた神津島について説明しよう。

 神津島は東京から南におよそ180km、伊豆諸島に9つある有人島のひとつである。18.6平方キロメートルの島におよそ1,700人(R6 3/1現在)の島民が暮らしている。その昔、事代主命(ことしろぬしのみこと)が、伊豆の島々を作るために神々を集める拠点とした島で、「神集島」と書かれていたものが転じて「神津島」という名前がついたそう。海の透明度も高く、夏にはマリンレジャー目当てで多くの観光客が訪れる。(参考: 神津島村 神津島村について https://www.vill.kouzushima.tokyo.jp/about/ )
 ちなみに、今回乗ったさるびあ丸のほかにも、下田港からのフェリーあぜりあや、東京竹芝フェリーターミナルからのジェット船、調布飛行場からの飛行機でも神津島を訪れることができる。(お金をかければ)意外と手軽に訪問できる島だ。

 小さな峠を越え、10分ほどで集落のすぐ近く、神津島港のバス停に到着。この日は波が高かったため船は多幸湾に到着したが、普段はここから船が発着する。

神津島港

大荒れの神津島、赤崎遊歩道へ

 まずはここから、島の北側にある「赤崎遊歩道」まで歩いていくことにした。マップで調べてみると、およそ5km。1時間もあればつくだろう。
 しかし、歩いていくにつれてだんだん風が強くなってきた。そして雨も降りだした。差していた折り畳み傘が何度もひっくり返るのをその都度直しながら歩いていく。

風が強い海岸沿いの道
奥に見えるのは島の発電所

 途中で気になるものを見かけた。「えんま洞」という洞穴。中に入ってみると、えんま様の石像と数体のお地蔵さんが鎮座していた。

えんま洞

 ふたたび海岸を歩き始める。「うず巻岩」という岩があった。流紋岩が海で急速に冷やされる過程で渦巻き状の模様がついたらしい。神津島が火山島であることを実感させるものの一つだ。
 地学の素養があれば、この岩を見たときにもっと様々なことに気がつけたのかもしれないが、こんな模様の岩が自然に形成されることがあるんだ、ぐらいの感想しか出なかった。来年からの地学の講義、ちゃんと聞こう。

うず巻岩

 歩くにつれ、雨風がさらに強くなってくる。風が強すぎて、もはや折り畳み傘が使い物にならない。まだあとここから数十分歩くことになるのか。赤崎遊歩道に徒歩で行くと決めたことを後悔し始める。そこへ行きたいと言ったのは僕の方なので、Kにも申し訳なくなってくる。

 そこへ、一台の青い車が通りかかる。

「どこ行くの?」

 運転席を見ると、さっきも見た顔。話しかけてきたのは村営バスの運転手のおじさんだった。赤崎遊歩道に歩いて行こうとしていることを伝えると、運転手は驚き、「乗っていくか?」と聞いてくれた。バス停でもなんでもない場所なのに、雨風にさらされながら歩く僕たちを見てバスを止め、声をかけてくださった運転手のおじさんの厚意に感謝しつつ、お言葉に甘えさせていただくことにした。

 そこから数分で赤崎遊歩道に到着した。
 「折り返しまで10分ぐらいあるから、その間に見てきな」、と運転手のおじさんは言う。荷物を持って出ようとすると、荷物は車内に置いて行っていいと言う。この人優しすぎる。

赤崎遊歩道の入口

 赤崎遊歩道は、島北部の海岸沿いに整備された木の遊歩道である。夏場はダイビング客などでにぎわうらしいが、こんな冬の荒天の日にここにいたのは僕たち2人だけだった。

赤崎遊歩道から島の海岸線を眺める

 晴れた日に来たらエメラルドグリーンの美しい海が眺められたのかもしれないが、流紋岩のごつごつした海岸線に荒波が打ち付けるこの日の景色も、これはこれで良い眺めだった。

飛び込み台もある
雨天でもわかる海の透明感
遊歩道自体は奥にも続いていたが、
どこかが崩落したのか立ち入り禁止になっていた
村営バスが待ってくれている

昼食探しと雨宿り

 折り返しの村営バスで神津島港に戻り、宿に荷物を置く。そして、昼食を食べられる店を探しに外に出る。

高台から集落を見下ろす

 Googleマップで探した店に行ってみると……開いていない。どうしたものか。すると、通りかかった男性がこう言った。

 「今停電してるから店開いてないかも」

 ……えっ?停電??
 よりによって今日停電か……困ったなぁ。

 その近くには他の店はなさそうだったので、雨宿りがてら近くにあった神津島郷土資料館に入ることにした。しかし、入り口が開いていない。扉をノックしても反応は無く、資料館のホームページに書いてある番号に電話してもつながらない。しかし、定休日ではないはずだ。なぜ開いていないんだろう。全く見当もつかない。
 それからしばらくして、村内放送で、停電が解消されたことが知らされた。すると、一台の車が資料館の駐車場にやって来た。中から出てきた人はここの館長のようだ。鍵を開けて、中に入れてもらえた。

 中に入ると、神津島を構成する火山岩の展示があった。

神津島を構成する火山岩(流紋岩)

 なかでも黒曜石は、良質な石材として旧石器時代には神津島から船で伊豆諸島各島や本土各地へ運搬されていたらしい。神津島の発展の礎となった岩石、と言ってもいいかもしれない。

神津島産の黒曜石

 ほかにも神津島の漁業や祭りなどの展示も充実しており、軽い気持ちで入った割にはけっこう長居した。

漁業に関する展示

 資料館を出た。結局、昼食は島のスーパーで購入し、宿で食べることにした。

島内の道路。
島内では主要道を除き、コンクリート舗装だった。
神津島唯一のスーパー

 島のスーパーの中に入ってみたが、(この時代ではもう当たり前かもしれないが)品ぞろえは近所のスーパーとほとんど大差なかった。異なる点を強いて一つ上げるならば、米が10kgで5500円もすることぐらいだろうか。火山性の土壌に急峻な地形を持つ神津島、米など栽培できるはずもない。

 宿に戻ってきた。紹介が遅れたが、今回の宿は「ゲストハウス テラマチ」さん。神津島の他の宿が軒並み素泊まり1泊1人当たり1万円以上する中で、ここは1人1泊5000円。破格の安さである。

宿の外観(2日目夕方に撮影)

 スーパーで買ってきた寿司を頂く。

寿司
マグロは神津島産

 サラダ巻きは本土のものと変わらない。しかし、マグロの寿司のネタが肉厚で、しかも味も濃い。本土であれば回らない寿司店で出てくるような寿司がスーパーに売られているから驚きである。同行者のKはマグロ丼を食べていたのだが、「ご飯よりマグロの方が多いし、容器はご飯のほうがかさ上げされていた」と言っていた。

 外を見ると雨風は一層強くなり、台風のようになっていた。天気が落ち着くまで、しばらく宿の中に籠ることにした。

ついに念願の晴れ……!

 夕方ごろになり、部屋に明かりがさす。窓の方を見ると、雲の隙間から夕日が顔をのぞかせていた。待ち望んでいた晴れだ。
 宿の外に出て、海の方へ歩く。夕日が海と山を照らしていた。まさに絶景だ。この時の感動を表しきれる言葉は、この世に存在しないだろう。

夕焼けの神津島
夕日に照らされて輝く海

 「あっ」、Kが指をさす。後ろを振り返ると、虹が出ていた。

神津島に架かる虹
「水配りの像」
伊豆諸島各島の神が神津島に集まって水の分配の会議をした、という伝説に由来する。神津島は湧き水が豊富な島だ。

 その後、漁港近くの物忌奈命(ものいみなのみこと)神社という神社を訪れた。

鳥居は港の近くにある
物忌奈命神社の拝殿

 本土の神社とは異なり、拝殿には赤い瓦が使われており、どこか南国情緒を感じさせる。

 その後、夕食の店を探すことに。しかし、火曜定休の店が多く、そうでない店に電話をかけても、予約必須だったりすでに席が埋まってたりでなかなか見つからない。基本下調べをあまりせず、行き当たりばったりで楽しむのが猿人の旅のスタイルなのだが、この時ばかりは下調べしていくべきだったと思った。

夜の島を歩く

 結局、昼と同じスーパーでピザを購入し、宿でピザパーティーをすることにした。宿の電子レンジやオーブントースターが自由に使えたのでよかった。ピザパ自体はなにも島じゃなくてもできるのだが、なぜか普段よりも何倍もおいしく、楽しく感じた。きっとこのピザには、旅情というスパイスがかかっていたのだろう。

2人だけのピザパーティー

星空を見に

 ピザパもお開きとなり、サークルのオンライン会議に神津島から出席した後、再び宿を出た。星空を見に行くためだ。
 神津島は「星空の島」としても知られており、2020年には国際ダークスカイ協会によって「星空保護区」に認定されている。「星空保護区」は2024年現在、日本全国でわずか4か所。まさに日本でも屈指の星空が見られる場所なのである。(参考: https://kozushima.com/star/hogoku/ )
 宿から徒歩数分、星空観察地の一つ、よたね広場に着いた。

 広場の真ん中に寝転がって空を見上げると、満天の……


 雲。


 ……。
 まあそうだろうな、と思っていたことが現実となった。空を見上げて呑むつもりだった息が、ため息として出る。
 しかし、時々雲が途切れて暗い空がちらりと見える。そこには街中では見られないほど多くの星。

雲の隙間から見える星空

 吸い込まれるような感動の星空、とはいかなかったかもしれないが、それでも星空保護区としての底力は十分に感じることができた。満天の星は、いつかまたここを訪れたときのために取っておこう。そんなことを思いながら、星空の下、宿へと戻る。

 2日目、最後まで読んでくださりありがとうございました。
 楽しかった神津島もいよいよお別れ……のはずが、この旅最大のピンチ!?次回もお楽しみに!

追記: 旅行記3日目公開しました。
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