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エレガントな日常/実直に答える癖と残念会

ナンパをされました。

いや。

それがナンパかどうかの確証はありません。

もしかしたらナニカを売ろうとしていた人かもしれないし、

春の陽気に誘われてつい誰かとおしゃべりしたくなったのかもしれません。

今日は美容院の日。

シャンプーとマッサージをしてもらい気分よくお店から出た1分後のことです。

「コンニチーワ!」

三揃いスーツがバッチリ決まっている黒人さんでした。

「Do you speak English?」

道でも聞かれるのだと思いました。

「a little..」

右手の親指と人差し指を狭めるジェスチャーをしながら答えました。

なぜならこれは私の条件反射だから。

「英語話せるか?」

「ちょっとなら(ジェスチャー付)」

上の句に下の句。

これでワンセットなのです。

以下日本語翻訳

「この辺に住んでるの?」

「名前はなんて言うの?」

「あなたと友達になりたいなぁ」

「こっちの道に行くところ?」

(あ、なーんだ、ナンパかぁ。1番髪に自信がある瞬間に声かけられてよかったー。私もまだまだ捨てたもんじゃないわね)

私の理想としてはこういう場合、

思わせぶりに、

でも凛としながら

颯爽とブローしたてふわふわのカーリーヘアをなびかせて

その人には目も合わせずに正面だけを見据えてツカツカ歩いてみたーい!

Days of coffe and roses
(ジャズの名曲タイトルのパクリ)


、、、でも現実は違うのよね。

この男性をスルーしたいのに英会話レッスンのように真面目に答えようとする私になってしまいました。

「はい。私はこの辺に住んでいます」

「名前はkinaです(1度目の質問の時には答えないで頑張ったのに)」

「いいえ、それはファーストネームです」

「はい。私はこっちの方向へ行きます」

しばらくQ&Aをしながらテクテク歩く私たちはまるで動く英会話教室。

同じ方角へ行く雰囲気だったので一緒にテクテクする羽目になりました。

さぁ。

私の頭の中の情報処理がすごいことになりました。

早くこの人から逃れなくちゃ。

髪が最高状態でのナンパはラッキー。

まてよ。

さっきの英語のフレーズ合ってるのかな、、、

アレは現在形じゃなくて過去形を使うべきだったのかな。

この表現はこの場面にちゃんと合っているのかな。

あぁ、なんで上手く喋れないんだろう。

いつしか私の脳みそは英語コンプレックスに支配されていきました。

私は誰かに質問をされるとちゃんと答えてしまう習性を持ち合わせています。

答えをはぐらかしたり、または答えなかったりというのがとてもストレスに感じます。

聞かれたら何も考えずにありのままに答えたい。

でもそうもいかない事が世の中にはたくさんあるのです。

体重とか生年月日とかありのまま答えると支障がでることもあるのです。

日本語なら一瞬考えて

(これは答えるべき?)

と相手との距離感やリスクを考えてからの反応が可能です。

(でもこの駆け引きが相当ストレス!)

でも英語になると色々崩壊。

まずは言語を必死に理解しようと頑張ってしまい、それに答えようとしてしまうことが分かりました。

個人情報的な質問責めの流れを変えようとやっと脳みそから絞りだした質問をしました。

「あなたはどこの国のかたですか」

「当ててみてよ」

会話の流れは思惑通り変わりました。

でも当初の目的

「この人から逃れる」

ということを完全に見失い、会話を成立させるモードになっちゃいました。

(どこの国の人かって?そりゃアフリカ系よ。そのプリプリした形の良いオケツと中肉中背の感じ、肌の色具合と英語の発音、、、)

(でもアフリカ系って言っていいのかな。どーなのかな)

「南のほう、、?」

「南のどのへんだと思う?」

「....(英語が出てこない)」

「僕はアフリカから来たんだよ」

「(ホッ)アフリカはたくさん国がありますよね」

「その通り。チョコレートは好き?」

「はい。私はチョコレートが好きです。」

どこまでも教科書のように実直に答える私。

昭和の日本の英語教育のたまものですね。

チョコレートと聞いてピーンときた国名を言いました。

「その通り!」

「日本にはお仕事ですか?日本には慣れましたか」

「仕事だよ。○年住んでいるから慣れたけど日本語は難しいよね。でも食べ物はとても最高だよ」

私はすっかり会話が通じることだけに集中していました。

「君の英語は上手だね。僕の日本語の先生になってくれない?」

そこで一気に目を覚ましました。

(そーだ。これはナンパだったんだ。私のバカバカ。なんで会話を膨らませてしまったのだ、、、しかも国名を一発で当てて喜んでしまったではないか!)

英語が上手と言われ内心はムフフとしたものの、すぐに我に返ります。

海外では英語が話せる、上手というのは案外ハードルが低いのです。

少なくともこの数分間の意思疎通が出来るなら

「英語が上手な人認定」

になって当たり前なのでした。

「snsやってる?LINE?インスタグラム?」

私はダメ元で

「No.Anyway It’s nice to talk with you」

(あなたとのおしゃべり楽しかったわ。じゃあね坊や。←のつもり)

おっ?

通じたぞ?


脈なしと感じ取ってくれたようでした。

その人は急に、どう見てもなんにもない路地を指差して

「僕はこっちに用事があるからここで曲がるね。LINEはしてないの?」

「No」

(本当にLINEはしてないもんね)

お互いに距離が離れたのにも関わらず、去り際にダメ押しにてLINEを聞く気骨はさすがサバンナ育ち。
(なのかな)

その人は

「O.k..maybe next time」

と、言ったので、よっしゃーバイバイじゃー!

とばかりに最後にカッコよく言葉をかけようとしたら「バイバイ」の言葉が出てきません。

口から出てきたのはまたしても

「nice to talk with you.(手を振りながら)」

このフレーズ。

さっき通じたもんだから、またリピートしたくなったのかもしれませんね。

最後の

「with you」のあたりでその人は完全に後ろを向いて向こうへ歩いていました。

私はナンパされた(してくれた)人の背中へ声をかけて見送る形になっていました。

(これぞ日本のおもてなし。相手の背中へ深々とお辞儀をするお見送り芸よ!)

夕方5時。友人待ちに耐えきれずつまみ食い

帰宅して部屋着に着替えずにそのままで過ごします。

今日は友人が近くで仕事があるとのことで早く終わるからお茶しようということになっていたのです。

ソワソワ。

ウキウキ。

新しいジーンズとセットしたてのヘアスタイル。

どう考えても人と会うには最高の日です。

3時ごろに仕事を終えるとのことでしたが、待てどもくらせども連絡が入りません。

(あー。延長したんだな。かわいそうに)

、、、遅い、、、。

大変だなぁ。

友人の仕事がハードなのは知っているので時間が押すのは気にしませんが、あまりにも遅すぎる。

6時を過ぎてしまいました。

苦渋の決断。

メールをしました。

「今日は遅くなったから次回またの機会にしよう」

しばらくして返信がきました。

なんと友人はスマホを家に忘れたまま仕事へ行き、私への連絡手段がないから直接マンションに来たとのこと。(予定時間に)

ところが!

部屋番号を間違えて暗記していたそうで応答がなかったから帰ったそうです。

あーん。

私ちゃんと出動準備万端の体勢だったのに〜。

こんな日もあるのですね。

お互いにトホホという感じでした。

パスタの具を炒めたものの放心状態で力尽きる。


気力がなくなり具をそのままオカズに


しばらくして気力回復。アボカドパスタ。


粕汁も作る気力振り絞る


美容院帰りの髪は本当に柔らかくってふわふわしてツイストカールが贅沢に出ています。

その髪を友人にドヤ顔で見せたかったのに残念でした。

でもナンパ黒人さんにはお披露目できたからヨシとするか。。。

私は今日もエレガント。

1人残念会

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