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「虹プロ」が長くて無理だというあなたへ。人気の理由5つと大人が感じる違和感とは

2020年、世の中が新型コロナウィルスで大きな不安や混乱を抱えていた中、外出自粛の鬱屈とした空気が蔓延る中、それでも私のメンタルがすこぶるヘルシーであったのは、間違いなくエンターテインメントの力が大きかったんです。

同じような気持ちの人は、きっと多いはず。

中でも大いにハマったひとつが、「虹プロ」こと「Nizi Project」です。

毎週新エピソードの更新が待ち通しく、夢みる少女たちが少しずつ、時には圧倒的な振り幅で成長していく姿に、まるで我が子を見守るような気持ちで瞳を潤ませながら見守ったものです。

いやー、おばちゃん、久しぶりに胸が熱くなりましたよ。

その後「NiziU (二ジュー)」としてデビューした彼女たちの活躍っぷりは、すでに多くの人が知るところでしょう。ぜひ日本のトップまで駆け上がり、世界に羽ばたいて欲しいものです。

さて、ではなぜ今さら終了した「虹プロ」の話をしようと思ったかと言うと、少し前にビジネス界隈で話題になっていたのを見かけ、私の中でモヤモヤしたものがあったからです。

きっかけは元ZOZO執行役員である田端さん(@tabbata)の「J.Y.Parkのフィードバックがすごい!」というプッシュだと思うのですが、仕事に活かせるヒントを求めて、ビジネス系のツイッタラーに虹プロが波及していきました。

いろんな切り口でファン層が拡大していくのは素晴らしいことですが、「ちょっと見て離脱した」「ポイントだけまとめて欲しい」と言う意見がチラホラ。

そういったツイートを目にするたび、私は

「ちがーーーう!!そういうことじゃなーーい!!」と一人悶々としていたのです。

前置きが長くなりましたが、この記事ではその”モヤモヤ”の部分を言語化し、私自身がスッキリするために

「虹プロの流行メカニズム」と、

「なぜ一部のビジネスパーソンにはその魅力が理解されにくいのか」について

考察してみたいと思います。

虹プロが流行したメカニズム

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1)応援ポイントが明確な成長ストーリー

まず虹プロの魅力の根幹は言わずもがな、オーディションに挑戦した少女たちのひたむきな姿です。

正直言うと合格した9名を含め、当初はそこまで「この子たちはスゴイ!」とは思いませんでした。

もちろんJYP練習生たちのレベルは頭ひとつ抜けていましたが、素人目にはトップを掴める逸材なのか・・?とやや疑問が。

デビュー後はおろか、オーディション自体もコンテンツとして盛り上がるのだろうかと、おこがましくも懸念しておりました。もちろんそれは全くの杞憂だったわけですが。

回が進むにつれて各メンバーの持ち味、課題が浮き彫りになっていき、そこを軸に成長していくため、視聴側も応援ポイントがわかりやすく、

「リオ・・!苦手だった歌でついに褒められたね!」

と、感情移入しやすいストーリーがありました。

2)視聴者をナビゲートしたJ.Y.Parkの言語化力

次に、何と言っても虹プロを虹プロたらしめたのは、プロデューサーJ.Y.Parkの存在。

ある意味、参加者たちよりも主人公だったのではないでしょうか。

この人のスゴイところは、すでに各所でも話題になっている通り、鋭い洞察力とフィードバック力。

私からするとそこまでパッとしないように見えていた参加者も、J.Y.Parkの目にはキラリと光るものが確かに見えており、そこをきちんと言語化して伝える。

彼自身が現役のトップアーティストということもあり、プレイヤーに刺さる言葉の選び方を心得ているなと感じます。

例えば、東京合宿編で体型管理についてとあるメンバーを指摘した際。キレのいいダンスを踊るため、さらにはアイドルを目指す以上、美醜の観点での問題でもあったかもしれません。

しかしそこを直接「太りすぎだ」などとは言わず、「自分がアーティストとして一番苦労してきたのは、他の何よりも体型管理だ」と伝えたのです。

つまり”太っている体型”ではなく、”高いレベルを目指すためのマインド”に問題があると言いたかったのではないでしょうか。

言われる側としては後者の方がモチベーションが上がるのは当然です。第一線を走ってきた人だからこそできるフィードバックだと感じました。

彼がこうして参加者たちの課題と合わせてキャラクターを言語化してくれたからこそ、私たち視聴者も何を指針に応援したらいいのかが明確になり、より熱狂したのは間違いありません。

3)韓国エンタメの人材育成システム

3つめは、韓国エンターテインメントが持つ、人を育てるシステムです。虹プロ人気が明らかに熱を帯びてきたのは、韓国合宿編に入ってから。

参加者が絞り込まれてクライマックスが近づいてきたというのもありますが、それ以上に参加者たちのルックス、パフォーマンスがとんでもなくレベルアップしたのが大きかったのです。

この変化は本人たちの努力はもちろんですが、何よりも韓国のエンタメ事務所が持つレッスンの仕組みやスタイリングの力が大きいと感じ、それまでK-POPに興味のなかった私には衝撃でした。

韓国エンタメ界では才能を見出した人材を練習生として所属させ、ダンス、歌、語学などトップレベルのレッスンを無償で投資する仕組みが出来上がっているそうです。

東京合宿からの成長度合いを見るに、人は環境が整えばこうも短期間で変わるのだと、まざまざと見せつけられました。

4)世代によって新鮮で、懐かしい韓国流演出

これは少し余談的な要素ですが、オリジナル版には韓国ならではの演出が盛り込まれていたことも、他の日本のオーディション番組との差別化ポイントになっていたのではないでしょうか。

ほっぺにピンクのうずまき、口から炎、心の声テロップ・・といった、

昨今の日本のバラエティ番組ではあまり見かけないエフェクトが多用されるのですが(韓国番組では一般的らしい)、これが多くの人には新鮮に映ったかもしれません。

ただ、今年33歳になる私としてはどこか既視感もあり、何だろう・・?と思っていたのですが、

そういえば2000年代初頭に人気だった『うたばん』なんかも、こういった演出が多かった気がします。

『うたばん』といえば、モーニング娘。が『LOVEマシーン』で一斉を風靡した頃に大人気だった音楽番組で、とんねるずの貴さんがメンバーをいじり倒してやりあう・・と言うのが恒例でした。(「ジョンソン!」とか、同世代の方は懐かしくないですか?)

その際に使われていた演出にどこか似ているような。

奇しくもモーニング娘。はオーディション番組『ASAYAN』の出身。これまた私が小学生の時に大好きで観ていた番組です。NiziUきっかけでモー娘。のデビュー当時に思いを馳せた世代もいるのではないでしょうか。

若い世代には今の韓国流の演出が新鮮に映り、30代以上の世代にはどこか懐かしさも感じさせたことが、幅広い世代の興味を引いた要因のひとつかもしれません。

5)メディア戦略

そして最後に、ここまで従来のK-POPファン以外にも人気を広げたのは、複数のメディアで展開したことが最も大きな要因でしょう。

・Hulu…先行配信されたオリジナル版。メンバーの関わり部分も含めたドキュメンタリー構成。

・スッキリ(日テレ)…特集内で主にステージ審査部分を編集して放送。本編にはない煽り演出やスタジオコメンテーターの反応もあり、初見でもわかりやすかった。

・虹のかけ橋(日テレ)…Hulu版とスッキリ版の間くらいの構成。本編とは別にJ.Y.Parkが韓国からリモート出演し、各回の裏話などをする。

・YouTube…オリジナル版を全メディアの中で最後に配信。『スッキリ』、『虹かけ』終了後に気になった人向けのアーカイブ的立ち位置。

といったように、各メディアごとに見せ方を変え、新規ファンを上手く取り込んで瞬間的なブームを起こしながら、後発で興味を持った人でも追っかけられるようになっています。

こういったメディア展開もグローバル戦略を掲げる韓国エンタメの強さと言えるかもしれません。

一部のビジネスパーソンには魅力がわかりにくい理由

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ここまでは、虹プロブームの理由をあらためて振り返りました。

しかし私が今回本当に書きたかったのはここからです。(にしては前半が長すぎました…すみません)

これほどの魅力を備えた虹プロであっても、一部のビジネス系の方には「面白さがわからない」という人がいる。それはなぜか?

もちろん、好き嫌いの主観は人それぞれです。ですが、私がTwitterが見かけた方々には好みの問題とは別の要因があると思えました。

それは、「虹プロが従来のテレビ的編集ではないから」ということです。

いま若者の間ではテレビ<YouTubeになってきていることは周知の事実です。

YouTubeとテレビの番組的な違いは、ざっくりいうと「リアリティ」「素人感」「気負わない」といった点にあると私は思っています。これは今やYouTubeに限らず、若者が好むコンテンツ全体に及んでいるのではないでしょうか。

虹プロのオリジナル版も例外ではなく、これらの要素を十分に備えていたと思います。

テレビ的でないYouTube的な編集の番組というのは、露骨な演出やカット割がなく、テロップも少なく、最初から流れで全体を見ないと良さがわかりません。「ちょっとだけ見てみようかな」で理解できる作りになっていないのです。

対して今の日本のテレビ番組は常にテロップで発言や流れが補足され、さらには必ず入るCMまたぎを作るために15分に1度くらいの頻度で盛り上がりポイントが用意されているように思います。

この作りに慣れている人にとっては、オリジナル版の作りはキツイかもしれません。いつまでダラダラ進むねん!と苛立ったことでしょう。

こういった人のために『スッキリ』や『虹かけ』があったわけですが、今から見ようと思うとHuluかYouTubeのオリジナル版しかないため、忙しくて要点だけ押さえたいという効率重視の方々から「長すぎて見てられない」「面白さがわからない」「誰かダイジェストにして」といった意見が散見されたのだと私は推測しています。

要するに、求めているものに対して、タイミングと見るべきコンテンツが違っていたということではないでしょうか。

まとめ

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ここまで書いてきましたが、最終的に私が何を言いたかったかというと、

「何かを本当に理解したいと思うならば、身を持って学ぶ他ない」ということです。

横着してはいけないな、と。

インフルエンサーがおすすめしていたからといって有益な情報が得られると飛びつき、手っ取り早く要点だけ知りたいというスタンスの大人が多いことに、モヤっとしたんです。(気持ちはわかりますけどね)

まだメソッド化されてない最新のトレンドを自分のものにするには、頭だけではなく、

まずは自分の感覚でキャッチしないといけないなーと、自戒の意も込めて筆をとったのでした。


最後まで読んでくれた方、ありがとうございました!

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