B'z DINOSAUR 12/30の記録

同じ日のことを共有されている方を見かけて触発され、「わたしもちゃんと書き残しておこう」と思った。まあ、このページを消したらなくなってしまうのだけど。

話は少し遡り、12/28のお昼。わたしは仕事を一段落つけて、ツイッターをころころしていた。自分が参戦しない現場のことには疎く、恥ずかしながらそれを開くまでは、B'zがフェスに出演していたことは失念していた。

わたしはお互いに古くから見知っているひとたちを少しフォローしているだけなので、入ってくる情報はそれに比例して少なかったけど、十分すぎるぐらいにみんなが狼狽していた。

「稲葉さんの喉が調子悪い。一時中断してる。」

すごく昔からB'zを知っていたわけではない。けど、わたしの知る限りでは、稲葉さんが自身の不調を理由にパフォーマンスを止めたことはこれまでなかった。

一瞬だけ、自分がとてつもなく脆くなったのを感じた。でもすぐに言い聞かせた。「わたしの知っている稲葉さんは、まぎれもないプロだ。どこが限界か知っているし、万に一つ狂いがあっても対処できる力がある。わたしの心配には及ばない。」と。

あまり詳細を知ろうとすると、この言葉の効力が揺らぐだろうと思って、そのまま前向きな言葉で埋め尽くしたツイッターを閉じた。

その夕方、わたしは閉じたはずのそれを何気なく開いてしまった。と同時に、そうしなければよかったのに、と後悔した。文字や言葉の力は本当に強くて、平均よりも頑丈だろうと踏んでいた自分の心には、あっけなくヒビが入った。

「今度の名古屋公演は中止にしたほうがいい、無理はさせたくない。」

名古屋が叶わなければ、もうB'zのステージに足を運べないかもしれない。そんな未来を選ぼうとしているのは、間違いなくわたしだ。だから自分勝手な言い分かもしれないというのもわかっていた。それでもわたしは自分のために言葉を連ねて、打ち消そうとした。

「稲葉さんはよくなる。わたしは絶対に稲葉さんに会える。」

その後も、自分の心が身勝手に傷つくことはあったけれど、わたしは弱くなってしまったそれに負けなかった。前を向いて、名古屋へと飛んだ。

30日、あんなに感情がぐちゃぐちゃになったまま席に着いた現場はそうそうない。むしろ初めてだった。不安な言葉は打ち消したものの、自分自身が会場の中にいることに驚きもした。

客電が落ち、映像が映し出され、ジュラシックパークさながらの仕上がりに笑みがこぼれた。やっぱり恐竜じゃん。

松本さんがリフターに乗ってせり上がってきたのは、モニターを見て知った。実際のステージでの立ち位置は見づらかったから、しばらくモニターを見ていることにした。

これは余談だけれど、1曲目はDinosaurだと決めつけていたので、声明というチョイスに鳥肌が立った。あのイントロには抗えない。もうすでにキャパオーバー。

そのとき、稲葉さんの声がした。わたしのよく知っている稲葉さんの声だった。

喜んで、泣いて、抱き合った。そのままわたしは席に座り込んだ。もちろん悲しい涙ではなく、嬉しい涙だった。言霊があったのだろうと思ったから。稲葉さんを信じていてよかったと思ったから。稲葉さんも、きっと何かを信じていたのだろうと思ったから。

冒頭のMCで、稲葉さんは28日の出来事について触れた。直接的な言葉はなかったけれど、ご迷惑おかけしてごめんなさい、という言葉にまた涙が溢れた。迷惑なんかじゃ全然ないのに。

そして彼はこうも言った。「もう気にしないで」と。

涙が止まらないままこの言葉を聞いたわたしは、思わず頷いて、負けじと盛り上がろうと決めた。のだけど、まさかFIREBALLを歌われるとは思わなかったので、選曲の素晴らしさと、まるで己を追い込んでいくかのような流れにまた泣いてしまった。

万全のコンディションじゃないことはわかってるのに、それすらも演出に見えてしまうぐらいのかっこよさに目が眩んだ。すごい高いキーの曲だけど、松本さんが何かの媒体で話していたみたいに、やはり最近の稲葉さんは高音が出しやすいのかもしれない。当時と遜色ないどころか、それを上回ったように感じられた。

「(声が)出ないと思ってるでしょ?出しますから!」

中盤からは、わたしはもう何も怖くなかった。純粋に楽しくて、その場にいられていることが嬉しくて、幸せを噛み締めてまた泣いた。泣きすぎた。

ずっとずっと、稲葉さんを尊敬して、大好きで、きっとこの好きという気持ちは変わらないと思っていた。増えも減りもしないと思っていた。それが、10年近く追いかけた今になって増すなんて、そんな幸せなことは本当にないから。

終わりに近づくにつれ、稲葉さんの調子はさらに良くなったように思えて、客席も負けてられないとばかりに歓声を強めた。わたしが今まで行った中で、2008年の日産スタジアム(9/21)での歓声がいちばん印象深かったのだけど、今回はそれとは違うエネルギーをたくさん感じた。

最後に稲葉さんは深く、長く頭を下げて、何かをこらえたようにしてステージを去って行った。涙をたたえたようにもみえた。真相は稲葉さんのみ知るところではあるけど。

わたしは名古屋公演のあと、奇跡的に1日だけまた会場に行けるとわかって、稲葉さんに宛てて手紙を書いた。『稲葉さんの、「また会いましょう、バイバイ!」が大好きです。』と締めくくった手紙。

これからわたしは「稲葉さんにまた会える」という言霊を信じていく。


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