父が死んだ時から決めていた。

この日には必ず手を合わせに行くと。一周忌が土曜日だったのも父の計らいだろうか。往復8時間の運転で疲れた体を休めてから月曜日になる計画を立てられた。

ただ、この日が来るまでは憂鬱だった。どうにかして行けない用事ができないかとも期待したこともあった。だが、半年前から決まっていた父の一周忌には何の予定も入らず、前の日から睡眠もたっぷり取れ、清々しい気持ちでハンドルを握れてしまった。ノスタルジックになるかと思ったが、ドライブと小旅行が合わさったような子どもの頃の感覚に戻った。

手荷物は少ない。

昔、父が吸っていたタバコ。
缶ビールは近づいたら買おう。天気が良さそうだから、できるだけ冷えたほうがうまいだろう。

母や妹、弟たちに顔を合わせる勇気はない。すまない。
だが、不器用なオレを認めたから赦してくれ。その証にこのタバコと缶ビールを残していく。

#T男の場合
#聞いた話をもとにしたフィクションです