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HAPPY BIRTHDAY50 母

11月29日tue

美咲はこの思いをどうまとめようか迷っていた。率直に言えば、ある人の言動がこのところ気になる。

やたらと子どものことに口出ししてくる。しかも直接ではなく、遠回しに。美咲がそのことを知るのは必ず隆からで、美咲の旦那である隆が自分の手前でせき止めてくれれば、美咲もこんな思いをすることはないのに、と矛先をその人に向けるべきか、旦那に向けるべきか、それともこんな気持ちになる自分が悪いのか、着地点を決めあぐねていた。

美咲がこんな気持ちになるのは、たいてい深夜の授乳中か、ふとんに入って眠りにつく直前で、それはスマホもテレビも手放して、自分自身と向き合う唯一の時間だ。できれば、1日でもっとも穏やかに過ごしたい時間。そこを汚される嫌悪感が、日増しに大きくなっていることを自分にすら隠し通せなくなっていた。それほど背を向けたいことなのか、それとも単に育児疲れのせいなのか、答えはでない。

ただひとつ、この子の母親はわたしだ。子は、どんな親であっても親を嫌いになることはできない。だから、やきもきすることはないのだ。だれになんと言われても、この子を育てていくのはわたしで、なぜならこの子を産んだのはわたしで、その立場になれない人が知ったかぶりをして、その肩書きだけをふりかざして、わめいているだけなんだから。

どうやら美咲はかなりの鬱憤がたまっているらしいということに、ようやく気付いた。



#小説 #美咲  



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