本麒麟2

本麒麟が大ヒットしたのは、〇〇広告活用のおかげ!?|マーケティング視点で解説

どうも、本麒麟が売れているらしい。

日経トレンディでは、2018年のヒット商品ベスト9位に選ばれています。

さらには、過去10年のキリン新商品の中で最も良い売れ行きらしい。(!)

本麒麟のヒットについては、検索すれば様々な情報が出てきます。

けれど、なぜ本麒麟が”こんなに話題になるほど”売れているのか。イマイチピンとこなかったので、#マーケティングトレースしてみた!

目次
(0)そもそも本当に売れているの?
(1)マーケティング分析(PEST分析 / 3C分析 / 4P分析)
(2)ヒットした最大の決め手
(3)今後の戦略を考える 〜自分がCMOだったら〜

遅れましたが、広告プランナーのきんちゃん(@kin_chan_chan)です。今後も面白い記事配信していきたいのですが、アカウント立ち上げたばかりで色んな人と繋がりたいです。フォローして頂ければお返しします!

(0)そもそも本当に売れているの?

実際に売れているのかどうか、公表されている範囲で調べてみました。

1年間の売上量を見ると、新ジャンル市場全体ではまだまだ6%ほど。

類似新商品の売上初速を比べると、確かにちょっと売れているのかな・・・?という印象。

(1)マーケティング分析(PEST分析 / 3C分析 / 4P分析)

さっそくマーケティングのフレームを使って分解!

公開されているIR情報やインタビュー記事等をもとに、素直に分解してみました。

なるほど、味がポイントだったのか!確かに、これまでの新ジャンルはビールよりも美味しくなかったもんな〜

・・・。

えっ、本当に味が決め手?

いや、もちろん”美味い”のは間違いないのでしょう。

しかし、人それぞれ味の好みは異なる。そしてこの飽和しきったビール市場。味へのこだわりだけで、商品が大ヒットするのだろうか?本当に??

ましてや「これまでより味が良い新ジャンル」なんて、各社新商品がずーーーーっと言い続けていること。


では、他の新商品たちと本麒麟は何が違ったのでしょうか。


(2)ヒットした最大の決め手

結論から言うと、本麒麟はPRに成功したビールだと考えます。

ポイント① 圧倒的CM出稿量

今回の本麒麟の発売背景に、1年前に起きたのどごし生失速による、新ジャンル市場の首位陥落という出来事があります。

首位陥落を受けて経営陣は、それまで25、26のブランドに投入していたCM出稿を、主力の5ブランドに絞る戦略への転換を決断。

その結果として、本麒麟は半年間で

10,000GRP

というキリン史上最大のCM出稿量を実現。(※参考)2015年新発売の のどごし生オールライトは1年間で2,500GRP

認知プロモーションの段階で史上最大のCMボリュームをかけたとあれば、販売初速が過去10年で最速になったのも頷けます。


ポイント② 「〇〇広告」の活用による空気づくりの成功

そして、もう一つ外せない点があります。

本麒麟は、世を席巻したヒット商品なので、すでに多くの取り扱い記事がインターネット上にあがっていました。

なので、今回のトレースは有り難くそれらをフル活用させてもらったのですが、そうしているうちに ある奇妙な違和感を感じ始めました。

話題になったとはいえ、いくらなんでも多い・・・

記事が、インターネット上にありすぎる。


「記事数」という切り口で調べたところ、興味深いことがわかりました。

本麒麟は、競合商品と比較して、「売れた」という内容の記事が明らかに多く検索でヒットします。(関連キーワードは、もう露骨な結果ですね。)

さらに、本麒麟が売れたとする記事の中には、キリンによる広告表記がある記事が多数見受けられます。

表記がなくても、記事が作り込まれていたり、なんだか怪しいものも多い・・・。


こういった記事広告のメリットとは、メディアが取り上げているなら本当だろうと、”信頼してもらえること”です。

自分たちがCMで「売れています!」と言うよりも、記事に取り上げてもらえたほうが、「そんなに売れているなら、自分も飲みたい」と生活者に思ってもらえます。

そしてもう一つ。記事広告は流通に刺さる。キリンのこだわりを営業マンが滔々と伝えるよりも、売れているという記事を見せたほうが、店長達も信頼して棚に置きやすいでしょう。

ビールのような日用品にとって、棚を制することは何よりも大切です。どんなに味にこだわっても、棚落ちすれば飲んでもらえないし、逆に棚に乗れば、リピートされます。

まとめるとこう。

ZOZOの田端さんが、「メディアとは、予言が自己実現するものだ」と言っていたのを思い出します。

いかに売るかのプロモーションではなく、いかに売れていると言うかのプロモーション。

「なぜ本麒麟が”こんなに話題になるほど”売れているのか。」のアンサーは「売れているという話題化そのものが戦略だったから」ではないでしょうか。


(3)今後の戦略を考える 〜自分がCMOだったら〜

最後に、本麒麟のこれからを考えます。

キリンの鮮やかな戦略で、本麒麟ブランドは確立できたのではないかと思います。競合他社がこんな商品をぶつけてくるくらいなのだから。

当面は、先行者として巻き起こした新ジャンル市場の盛り上がりとともに売上を維持できるのではないでしょうか。


ブランドとしての脅威は、2026年に控える酒税法改正でしょう。

ビールと新ジャンルの価格差が小さくなるため、本物のビールと競合していくことになります。

ビールありきで確立した今のブランドイメージだと、負けてしまう。


安さが競争力なのに値上げされてしまうのは、致命傷になりかねない。乗り越えるのは、とても難しいでしょうが・・・

例えば、タイミング基軸のブランディングに変えていってはどうでしょう。決まったタイミングに飲むモノとしてのイメージ付けをしていくのです。

一例としては、晩酌。
ビールより健康的であり、軽くスッキリした飲みごたえを逆手に取る。
「帰宅後の晩酌で、軽いおつまみとともにもう一杯」というポジショニング。
訴求には、シーンを想像させるCMや晩酌との相性の合うレポート特集や、お菓子サブスクとコラボして、晩酌おつまみが届くプロモーションなど。

今回、莫大な投資と見事な戦略で勝ち取ったブランドイメージ。

これで6年後の酒税改正までに、ビールや新ジャンルの枠を飛び越えたブランドになっていたら、本当に脱帽もののマーケティング戦略ではないでしょうか。

本麒麟、これからも一層見逃せません!

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