「ノルウェーでサバを買っていたはずなのに、気づいたら厨房でビリヤニを作っていたんだ。」 【短編エッセイ】
私は新卒で入社した会社で、ノルウェーの企業からサバの買付をする仕事をしていた。世界を股にかけた仕事。長期の海外出張にも行くチャンスに恵まれ、夢にまで見た仕事だった。
しかし、そこにいた2年間、私はまるで悪魔に取り憑かれてしまったかのような顔で日々を送っていた。理想と現実のギャップ。責任と重圧からの逃避。何より、人間関係の苦しみを耐え凌ぐ術しか日々考えられなくなっていた。
そんな私は現在、東京郊外にあるカフェで働いている。厨房で炊飯器を開けて、クローブやシナモン、ローリエの香