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ハマかぶれ日記173〜舌福の浪速路

 15日の月曜日から今日まで4日間、福岡、大阪と渡り歩いてきた。久しぶりに会った人たちとの会食は楽しく、帰って恐る恐る体重計に乗ったら2キロも増えている。まあ、これぐらいは仕方ないかと呟きつつカレンダーの予定を見ると、明日はかかりつけの病院での月に1回の定期健診の日だった。すっかり忘れていた。糖尿病の世界では結構、名の知られたK先生は、体重の増減には一際うるさい。このままでは何を言われるかもしれないと、今から戦々恐々としている。
 そのかたわら、思い浮かべるのはこの旅の間に食べた美味しいものだから、始末におえない。とりわけ昨夜、大阪・西天満の蕎麦屋「なにわ翁」で胃袋に収めた料理のラインアップを頭の中でたどると、改めて大量に涎が湧いてくる。
 「翁」を知ったのは古く、10年前になる。2014年夏から1年間、仕事の都合で大阪に単身赴任していたことがあり、その当時、何回か足を運んだのだ。全般につけ汁が甘い西日本の蕎麦屋さんの中にあって、江戸前に近い醤油のこくのしっかりしたつけ汁を供してくれるので舌の好みにあった。それ以来の訪店とあって、大将や女将さんの面貌など様々な記憶が朧になっていたが、向こうは覚えていてくれて「笑った顔を見てはっきり思い出しました」と言ってくれる。きっと我を忘れてうまそうに蕎麦をすすっていたのだろうなと、何となく面映かった。
 昨夜は、とりあえずのビールから信州・佐久の蕎麦焼酎「峠」の蕎麦湯割りへ。それに寄り添って登場したのは、「焼き味噌」「焼き海苔」「身欠きニシン」など蕎麦屋の定番から、「ホタルイカと胡瓜の酢味噌あえ」「桜エビの玉子とじ」「筍とワカメの煮付け」といった季節感あふれる品々。ありがたいことにお造りまであって、ヒラマサの白身、マグロの赤身が色鮮やかに食欲を刺激する。「うまい、うまい」とひたすら箸を動かし、杯を傾けた。
 蕎麦もしっかり酒のつまみになる。「池波正太郎さんなんか、まずは蕎麦で一杯だったというからな」などと半可通のしたり顔で、料理の合間に1枚、終盤にもう1枚と、何んと大盛りを2枚も平らげたのだから、体重増の根拠は明確に説明できる。一緒に飲んだかつての会社の後輩も同じ量を食べ、「こんなことは初めて」と文字通り腹を抱えて、女将たちともども大笑いしていた。
 そんな楽しくも破天荒なひと時を旅先で積み上げているうちに、わが横浜ベイスターズは連敗街道を爆進していた。先週末、案じていた通りだ。伝統的に連敗が始まると長引く傾向がある。試合内容をスポーツ紙などでチェックすると、走行守の全てに精彩を欠くが、特に守備の乱れは大きく、毎試合のように2つ3つとエラーを重ねている。どん底がまだしばらくは続きそうな嫌な予感がして、今夜、試合の予定がないのを情けないことにラッキーと歓迎するぐらいだ。
 本当は試合があった方が良かったかもしれない。明日の健診を思うなら。きっと冷汗三斗、身の細る思いがしただろうから・・。
 

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