中野珠実

人間の心の仕組みを研究しています。趣味は読書と野菜づくり。

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そこはミラクル貸農園 最終話 ナスカの地上絵

最終話 ナスカの地上絵  皆の予想どうり、梅雨に入ると貸農園はまるで水田状態で、かろうじて畝の頭が顔をだしている。「もう稲でも植えようか」というのが、貸農園の挨拶言葉になっている。でも、着実に夏は近づいており、農園の周りには、小ぶりのひまわりが列をなして咲き始めた。このひまわり、農作業の暇にあかして、夫と二人で植えていた種が育ったものである。そこだけ切り取れば、なかなかフォトジェニックな風景となっている。  そんな畑に、突然、水路が現れた。岡じいの畑の周辺に、幅3㎝ほどの

    • そこはミラクル貸農園 その3 畑でシーフード

      その3 畑でシーフード  農園は、春先から初夏にかけて最もにぎわう。畑のあちこちで、トマトや茄子、ピーマンといった夏野菜の苗が植えられ、日差しをたっぷり浴びてすくすくと育っている。週末になると、次々と訪れる見学者たちが畑の様子を興味しんしんに眺めている。その横で、「雨がふった後に、もう一度見に来た方がいい」と岡じいがアドバイスしている。貸農園にしてみれば、まったくの営業妨害である。  そんな初夏の週末に、新しい契約者がやってきた。彫りの深い顔立ちに、大きい体躯、そして緩や

      • そこはミラクル貸農園 その2 粘土層を突破せよ

        その2 粘土層を突破せよ  急いては事を仕損じる。わかっているけど、人の10倍せっかちな私は、頭より先に手が動いて、失敗してばかりである。  案の定、晴れの日が数日続いたのに、いっこうに泥っぽさの抜けない畑に業を煮やして、畝を立てる作業にとりかかる。3メートルの横幅の区画の場合、3分割して、70㎝幅の畝をつくり、間を作業用の通路とする。通路の土を鍬で掻き出すことで、こんもりとした畝ができあがるのだ。  急ぐのには理由がある。じゃがいもは3月の半ばまでには植えないといけない

        • そこはミラクル貸農園 その1 沼にはまる

          第1話 沼にはまる 「悪いねえ、、、もう空きがないんですよ。  というか、何かあったんですか?   親が亡くなって相続したばっかりなので、なにもわかっていなのだけど。  このところ、貸してくれないか、って連絡が沢山きて、びっくりしているんだよ」  なるほど、考えることは皆、同じってやつである。収束の見えないコロナ禍で、”週末にやりたいことリスト”もとっくに底をつき、どうしたもんかと思っていた時、「そうだ!畑をやろう」と頭に電球が灯ったのだ。すべての動きが止まったような空気

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