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石油価格は誰が決めているのか 2023/06/27

先日、ウイーンで行われた会合でサウジアラビアのみの追加減産が発表されたが、価格の上昇は文字通りの「サプライズ」で終わってしまい、現在のWTI価格は69ドル台で推移している。

さて、昨今減産することによって産油国は1バレル当たりの価格を維持しているようだが、原油の価格決定権は誰にあるのだろうか。

【結論:価格決定権は需要サイドに有り】

定義

供給サイド

産油国のことであり、OPECプラスなどの枠組みにいるサウジアラビアなどの中東諸国やロシアなどのことを指す。

需要サイド

消費国のことであり、中国をはじめとし、アメリカやヨーロッパ、日本などのことを指している。

市場支配力

競争的牽制からある程度自由に、単独又は協調して自己に有利に、価格、数量、品質を設定できる地位(公正取引委員会参照)
※今回は会社ではなく国であることに留意したい。

供給サイドに価格決定力がない理由

【結論:市場支配力が無い上に、各国が別々の方向を向いているから。】

価格決定力は市場支配力に依存する

価格支配力は、自己又は自分達以外の他グループや他国の状態にもよるが、ある市場においてシェア率が50%を超えている場合には存在しているとされている。

現在、産油国において1番大きな枠組みはOPECであるが、シェア率は50%に遠く及ばない。

2020年の世界全体の原油生産量は日量8,839万バレルであり、そのうちOPECは3,111万バレルである。

シェア率は約35%だ。

OPECプラスに参加している非OPEC産油国の生産率は約20%ほどあり、一見OPECプラス全体で史上支配力がありそうだが、実際は足並みが揃わないようである。

サウジアラビア独自の追加減産でわかること

6月4日ウィーンにて行われた会合では7月にサウジが独自に追加減産をすることと協調減産の枠組みを2024年まで延長することを発表した。

ここで注目すべきはサウジのみが追加で減産をするということだ。

OPECプラス全体で減産を維持する意志があれば、全体で減産をするはずである。つまり、OPECプラス全体が減産をし、価格を維持するという方向を向いているわけでは無いのだ。

会合前の状態を見るに、今回減産に踏み切らなかったのはロシアだろう。
日経5月17日の記事によると、IEAが公表した資料から4月の石油輸出量は過去最高になっていることがわかる。
OPECプラス全体としては減産しているものの、ロシアの輸出量は増えているのだ。

ロシアからすれば、割安感が高い今のうちに原油を多く売りたいわけで、原油価格の維持を至上命題とするサウジアラビアの目的とは相反することになる。

ロシアの原油生産量はサウジアラビアに引き続き世界3位であり、その影響力はかなり大きい。そのロシアとサウジアラビアが同じ方向を向いていないということになれば、なおのことOPEC、OPECプラスに市場支配力があるとは言えない。

供給サイドにできること

上述した通り、現在の価格決定力は需要サイドにあり、OPECをはじめとした産油国には市場支配力がない為、価格決定力はない。OPECプラスにできることといえば、協調減産などを行うことによって原油価格を維持することくらいである。
また、たとえ減産を続けても①産油量1位の米国が増産する ②追加減産ができなくなる といったシナリオが想定されるため、長期的には供給サイド、主に中東諸国は八方塞がりであるように思える。

その打開手段として筆者は2020年4月におこなった大幅な減産をもう一度やるべきと考えていたが、現状ではできなさそうである。



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