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こいつには脱帽だ!と、言われる日

 毎月、ダ・ヴィンチの発売日になると、書店に行く。
「短歌ください」に投稿しはじめて二年近くになるけれど、採用されたことはない。

素敵な投稿歌を読みながら思う。
ああ、私には、才能がないんだな。
がっかり、というほど大きな心の動きではなく、ただ一瞬、心が、しん、となる。

才能がないのを言い訳にするな。
才能溢れる人々も、日々の鍛練によって、それを磨き、育てているのだから。凡人なら、その何倍も努力を。
そう自分に言い聞かせつつ、心まで届いていないことも、分かっている。
正しさは、救いではない。

そんなときは、グランのことを、考える。
グランは、カミュの「ペスト」に出てくる、公務員。
彼は、夜な夜な小説を書いている。
いつか、自分の原稿を読んだ編集者が立ち上がって、「おいみんな、こいつには脱帽だ」と叫ぶところを夢想する。
肝心の小説は、美しい女性が馬に乗ってやってくる冒頭のシーンを何度も書き直して、そこから一向に進まない。
推敲しすぎて、「黒い栗毛の牝馬」になってしまったりする。
この感じ、分かるなあ。

選者をうならせる歌は、作れそうもないけれど。
採られなくても倦むことなく学び続け、自分なりの表現を見つけていきたい。

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