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婚活を10年以上続けた男の末路

 低年収、ゼロ貯金、童貞の三拍子が揃った私には一生無縁であろう“結婚”の2文字も、私のまわりでは真剣に考えている人がチラホラ居る。

 10月6日、友人が所属するサークルの飲み会に私も参加させていただけることになった。今回の参加者は少なく、友人と男性A・Bのみで私を入れても4人。全員アラフォーで、AとBは既婚者。Aは結婚後10年以上も経過し安定期に突入、Bには2歳の子どもが居る。

 このサークルではほぼ毎回、途中から友人の婚活の話題になるのだという。

 私とほぼ同い年、今春38歳を迎えた友人(便宜上“婚活男”と名付ける)の婚活歴は長い。かれこれ10年以上は余裕で続けている。初期はオフ会や婚活パーティーに出まくり、数名の女性との交際に成功したがいずれも長くは続かなかった。そこで5年前、最後の砦である結婚相談所に入会。何十人もの女性とお見合いし、10人ほどは仮交際、更にそのうち3~4人とは本交際にまで発展したが、未だに成婚には至っていない。たった200字ほどでまとめるには勿体なさすぎるほど波乱万丈の連続だった。もし映画化するなら余裕で三部作の長尺になるし、朝ドラなら『春よ、来い』以来の4クールぶち抜きも行けそうである。

 そして令和も5年目を迎え、婚活男はついに二人の女性(仮名C・D)とかなり良い線まで行くことに成功した。特にCとは成婚寸前まで到達している。

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 婚活男がお見合いで史上最も運命を感じたという“C”は、仮交際から僅か3週間で本交際に進出。その後も週1~2ペースで会い続け、2週間後にはCのほうから「来週、婚約指輪を買いに行こう」と言い出し、銀座のジュエリーショップを指定するのだった。

 プロポーズを女性へのサプライズとして行い、そこで初めて婚約指輪を差し出す時代は終わったらしい。現代では婚約指輪の購入から日時・お店の選定まで二人で話し合って決める“計画的プロポーズ”が主流らしいのである(それやる意味あるの?)

 つまり、女性の「婚約指輪を買いに行こう」は“確定演出”であり、成婚寸前の最終段階まで来ていることを意味するのだ。

 しかし、婚活男は思った。(早すぎるだろ……)

 出会ってからまだ一ヶ月ちょっと。いくら趣味が合う、気が合うなど運命を感じたとはいえ、相手のパーソナルデータをほとんど知らない状態でゴールへ突っ走る勇気を持てるわけがなかった。結婚してから何か不都合が発生しても手遅れなわけで、現にSNSは今日もパートナーの愚痴を書き殴る投稿で溢れ、半年や一年でスピード離婚するケースも珍しくない。婚活男は慎重に行きたかった。

 しかもCは「来月には両親へ挨拶しに行きたいなあ」とまで言い出すのだ。ちょっと生き急ぎ気味ではないだろうか。

「あの……あと1~2ヶ月で良いから、そういうのはもう少しじっくり付き合ってからにしたいんだけど……」

 婚活男の提案。決して不自然では無いと思う。しかし、それを聞いたCは号泣した。それを見た婚活男はドン引きした。かねてよりCへの小さな不満が積もりに積もっていたこともあり、号泣で完全に冷めたという。ジュエリーショップに行く予定日の数日前、散々悩んだ末に婚活男はキャンセルボタンを押した(結婚相談所のシステム上、いくら成婚寸前でもキャンセルはWeb上でポチるだけであっさり終了する)。

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 この話を聞いた既婚者のAとBは「結婚には勢いも大切」と意見を揃えた。確かに私のまわりには出会って2~3ヶ月でスピード結婚した男が二人も居て、いずれも現在も夫婦円満である。そう言えば私の父も「結婚自体は間違えても良い。相手や時期を間違えたとしても気にすることは無い。それよりも夫婦関係を長く続けていくことのほうが大事だから」みたいな深い話をしていた。この持論の是非はさておき、そう思うことで結婚に踏み出す勇気を持てるのかもしれない。

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 運命まで感じていたCとの別れにより、婚活を10年以上続けた男は「もう独身のままで良いのかもしれない」とまで嘆いてしまうのだった。婚活への意欲も低下してきており、もう少しで“独身”が末路になろうとしている。

 そんな気持ちの中、現在は“D”との本交際を数ヶ月も続けている。おそらく彼女がラストチャンスとなるだろう。生き急いだCとは対照的にDは急かさず焦らせず、ゆっくりじっくり関係を築いている。婚活男は年収600万円もありながら金銭面で将来に不安を感じており、思い切って「子どもを授かるのを諦めたい」とDに提案したところ「貴方が好きすぎるからOK」と言ってくれたそう。

 ようやく希望の光が見えてきた。10年以上も苦労してきたのだ。そろそろ報われても良いのではないか。

 婚活を10年以上続けた男の末路は是非“成婚”であって欲しいと切に願う。

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