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上場企業にかかるプレッシャーに変化はあるか?

日本企業において、上場企業に対する市場や規制当局からのプレッシャーは高まる一方ですが、日本よりも早い時期から、資本市場やアクティビストからの洗礼を受けてきた米国市場における、JP Morgan ChaseのDimon CEOによる最近の発言に注目します。

「より広い視野に立てば、我々は企業を株式公開市場から追い出しているのではないかと懸念している。その理由は複雑で、報告義務の強化(環境、社会、ガバナンス情報に対する投資家のニーズの高まりを含む)、訴訟費用の増加、コストのかかる規制、型にはまった取締役会ガバナンス、株主アクティビズム、報酬の柔軟性の低下、資本の柔軟性の低下、世間の監視の強化、四半期決算の執拗なプレッシャーなどの要因が考えられる」「もう一つの例は、根拠なく会長と CEO の役割を分けようとする一部のプロキシーアドバイザーによる絶え間ない戦いである」「上場企業であることが好ましくない理由のひとつは、年次株主総会の軽薄さが渦巻いているからだ」「 ISS(Institutional Shareholder Services)は Deutsche Boerse によって所有されて、Glass Lewis はカナダのプライベートエクイティ会社である Peloton Capital によって所有されている。アメリカのコーポレートガバナンスを、良いコーポレートガバナンスとは何かについて独自の強い感情を持つ可能性のある営利目的の国際機関によって決定されるべきか、私は疑問に思う」「さらに、企業はデータを訂正してもらえないことが多く、そのため投票が訂正されずに終わることがあると不満を漏らしている」「J.P. Morgan Asset Management は、2024 年末までに、社内で開発した議決権行使システムから、第三者のプロキシーアドバイザーによる議決権行使推奨を排除する予定である」

JP Morgan Chase, James Dimon

多くの日本企業は、コーポレートガバナンス・コードが出来、アクティビストが積極的に活動するようになるまで、資本コストに対する意識や株主に対する対応に問題があった事は否定できません。

しかしながら、資本主義の先進国である米国において、このような上場会社に対する行き過ぎたプレッシャーに関する議論が持ち上がってきている事は注目に値します。欧州においても、2000年代に株主資本主義が広がり、資本コストへの意識が高まった事で、市場の平均PBRが大幅に上昇する一方、上場企業数は減少しました。
日本においても、今後、過剰な株主資本主義が広がれば、この様な副作用が出る可能性があることは、意識しておいた方がいいと考えられます。先行事例を踏まえた適切な対応が必要でしょう。

また、議決権行使に関しては、日本でも議決権担当者を中心で形式基準を重視し、柔軟性に欠ける対応が多くなっているとすると問題です。
英国スチュワードシップ・コードでは、議決権行使の場面で議決権行使の担当者が最終判断をするのではなく、運用担当者が最終判断を行う事をベストプラクティスとしています。
ポートフォリオマネージャーは日々運用パフォーマンスの向上を最優先に取り組んでいるため、議決権行使にまで手が回らない事情も理解できます。ただ、議決権行使の一次判断は議決権行使担当者が行うにしても、アクティブファンドで投資する企業に対する議決権行使の最終判断は、アクティブファンドマネージャーの義務の1つであることを理解する必要があると考えます。

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