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感情のまま書き上げた紙を「声」で読むことの大切さ。相手への伝えかたに向き合った朝

平日の朝に少し早く起きてみる。物静かな朝に好きな音楽を聴きながら日記をつけてると、感情のインクがダーと流れるように紙面をなぞった。一気にA4用紙が黒く染まるのがわかる。赴くままに書き上げた一枚を読み返すと、全く何を書いているかわからない。でも、、なにかスッキリする感覚がある。この感覚はなんだろう。

ふと自分の生きてきた人生の中で同じくらい文章を書いた頃を思い出す。自分の結婚式に、父と母に感謝の手紙を書いたときだ。「これまで沢山の時間を共にしたんだ。きっと時間のかかる作業だろう」と思っていたが、ペンを向けるとPC上でキーボードを叩いているかのように文字が浮かび上がる。10分くらいで書き上げてしまった。そして自分で読み返してみる。実際には感情も何も起こらなかった。

当日の式、僕は手紙を読み上げてみた。父と母は目の前で腰をかけている。ゆっくり言葉を噛みしめるように読むと、自分のはなった言葉が耳に入り、頭の中で子供時代がよみがえる。父とのキャッチボールの玉が速すぎて拾いにばかり走ったあの日。母の運転がひどくて、食べていたアイスクリームが車窓にベッタリ付いた思い出。家族で盛大に祝った仲睦まじい誕生の日。涙を流してもらいたかったのは両親のはずだが、涙腺が緩むのは自分の方だった。後日談を両親に聞いたが、目一杯の涙をこらえるのに必死だったとの話だ。なかなか私と顔を合わせなかったのはそういう理由だったのか。

先ほど書いた早朝の1枚を読み上げる。声は小さく耳に届く範囲でつぶやく。そうすると、音楽を聴いて心地よい時間に浸る自分や仕事の人間関係に傷つく自分、家族と過ごす将来に向けた言葉が連なり、色々な感情が混ざり合っていて、自分で「ハッ」としてしまうのだ。

感情を吐き出した紙には、声で拾い上げることで自分の中に、または相手の中へ感情を呼び戻す/起こすことができる。書き言葉と話し言葉は違うけれど、書いた言葉を話してみると感情がくっついてくるのがわかる。ゆっくりと声に出すことで自分には伝わった。声に出せば相手にもどう伝わるのかを理解できた。さて、朝の時間で書き上げた5段落と50分。そろそろ腰を上げないとまもなく就業時間だ。スタコラサッサ。

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