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美的性質(フランク・シブリー)

ソクラテス:本日は、美的性質についての対話のため、特別なゲスト、フランク・シブリーさんをお招きしています。シブリーさんは、美的判断の性質と基準に関する独創的な研究で知られています。シブリーさん、本日はようこそ。

フランク・シブリー: ソクラテスさん、お会いできて私も嬉しいです。美的性質についてですが、私はそれを特定の感性や感受性に訴える特質と考えています。この点で、美的判断は主観的ではあるものの、全くの主観性に陥るわけではありません。美的判断は、一定の訓練や感性を持つ人々によって共有されることが多く、それには理由が伴います。ですから、美的性質とは、感じる者に特定の美的価値や感情を引き起こすもの、例えば「優雅さ」「華麗さ」「荘厳さ」といった性質のことを指します。

ソクラテス: なるほど、美的性質は特定の感性に訴え、共有されうるものだと。しかし、これらの性質がどのようにして「美」と結びつくのか、もう少し詳しく教えていただけますか? また、美的判断がある程度共有されるというのはどのようにして可能なのでしょうか?

フランク・シブリー: 美的性質は、対象が持つ特定の特徴に基づく感性の応答です。たとえば、ある風景が「荘厳」であると感じる時、その感じ方はその風景が持つ特定の特徴、例えばその規模の大きさや自然の力の感じられる様子に対する応答として生じます。美的判断が共有されるのは、人々が類似の感性や感受性を育む文化的背景や教育を受けているからです。この共有される基盤の上で、人々は似たような美的価値を見出し、判断を下します。

ソクラテス: それは興味深いですね。では、美的性質を感じ取る能力は、文化や教育によって形成されるとおっしゃるわけですね。しかし、異なる文化や背景を持つ人々が同じ対象に対して異なる美的判断を下すことはどのように説明されるのでしょうか? また、美的判断には「正しい」や「間違っている」といった客観的な基準は存在するのでしょうか?

フランク・シブリー: 確かに異なる文化や背景を持つ人々が同じ対象に対して異なる美的判断を下すことはあります。これは、美的感受性や価値観が文化的背景や個人の経験に深く根ざしているためです。しかし、それでもなお、美的判断にはある種の普遍性があると私は考えています。美的判断が完全に主観的であれば、美術批評や美学の研究が成り立たないでしょう。美的判断には、対象に対する洞察や解釈、そしてその対象が持つ特定の性質への感受性に基づく「妥当な」基準が存在します。完全な客観性を持つわけではありませんが、共有されうる基準によって、ある程度の合意に達することが可能です。

ソクラテス: つまり、美的判断には全くの主観性ではなく、ある程度の普遍性や共有性が伴うと。しかし、この「妥当な」基準とは何でしょうか?そして、それが存在するとして、どのようにして私たちはその基準に到達することができるのでしょうか?

フランク・シブリー: 「妥当な」基準とは、美的体験や美的判断において重要な役割を果たす、対象の持つ特定の性質や特徴に対する深い理解と感受性を指します。この基準に到達するためには、教育や経験を通じて自らの感性を磨き、様々な文化や芸術作品に触れることが重要です。また、批評や議論を通じて他者の見解を理解し、自らの判断を深めることも必要です。これにより、美的判断の「妥当性」を高め、より豊かな美的体験へとつながるのです。

ソクラテス: 美的判断の「妥当性」を追求する過程は、まさに知的な探究そのもののようですね。しかし、私たちが美的性質について話し合う際に、文化や教育の差異を超えた普遍的な基準を見つけ出すことは可能なのでしょうか?また、そのような基準が存在するとしても、それが完全に普遍的であるとは限らないのではないでしょうか?

フランク・シブリー: 確かに、完全に普遍的な基準を見つけ出すことは困難かもしれません。美的体験は非常に個人的なものであり、多様な文化的背景や個人的経験が影響を及ぼします。しかし、それでもなお、美的判断においては共感を呼び、多くの人に受け入れられるような価値や感情が存在することも事実です。この普遍性の追求は、異なる文化や個人間の橋渡しをすることができ、美に関するより深い理解へと導くでしょう。

ソクラテス: あなたの言葉から、美的性質とは個人の内面と外部世界の間の繊細な相互作用の産物であり、その判断にはある程度の共有されうる基準が存在するものの、それが完全に普遍的であるわけではないことが理解できます。美的体験の多様性を認めつつも、私たちは共有される美の感覚を通じて互いを理解し合うことができるのですね。しかし、その過程においては、常に開かれた心と、異なる視点への理解を持つことが重要だとも言えるでしょう。フランク・シブリーさん、この貴重な対話をありがとうございました。

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