人生初の草木染め講師は、ヨロヨロリ。
「えーっと……今年の母親部会の活動は、開催しますか……?」
PTAの活動の「母親部会」。夜集まった10数名のお母さんたちと担当の女性の先生二人。
担当の先生が困っていた。
集まったお母さんたちは、ほぼほぼマスクをして下を向いたきり、シーンと静まっている。
「PTA活動縮小により、今回が最後の活動となりますが、みなさんお忙しそうなので無理はしなくていいんですが……いかがでしょうか?」
重苦しいPTA活動の会議の雰囲気が苦手だ。
小学校で教員をしていた頃は、逆の立場でそれを味わっていた。
今回は、保護者側である。先生たちの気持ちもわかる分、居ても立っても居られない気持ちになり、思わず手を挙げた。
「あの、私今年は絶対やった方がいいと思います。コロナ禍で3年間開催できなかったし、今長男が四年生なので、ほとんどこういう会が無くて知り合いも全然増えなくて。そういうお母さんたちって、私だけじゃないと思うんです」
みんなウンウンと頷きながら聞いてくれた。そして、お隣のお母さんが一言。
「じゃあぜひ、奈菜絵さんが何か講師をしてください」
……マジか。笑(心の声)
「いや〜そうですね〜。知り合いにはヨガとかお花屋さんとか色々やってる人がいますけど……私は何も……あ。」
思い出してしまった。
たった2回だけど、草木染めは子どもたちとやってみておもしろかったことを。
その場でわくわく提案すると、みんな「いいですね!」と大賛成!
しかし、まだ素人中の素人なので、相談相手という名の助っ人が欲しかった。
勇気を出して準備や相談など、誰か手伝って欲しいと伝えると、隣のお母さんとあと二人のお母さんが手をあげてくれた。
LINEを交換して、ウキウキしながら学校を出た。本番まであと一ヶ月半ある、10月半ばの秋だった。
それから何度かやりとりをしながら、草木染めに使う野菜の皮やお花を選んでいった。
1ヶ月くらいあるので、野菜の皮は冷凍することになった。
玉ねぎの皮、ナスの皮をちまちま冷凍する。
赤紫蘇は季節が終わりかけていたけれど、畑にたくさんあるのを確保して冷凍してくれた。
お花は、その頃どこにでも生えていたセイタカアワダチソウを。
お庭にマリーゴールドを育てているお母さんもいて、マリーゴールドも採取してもらった。
準備段階で「チーム草木染め」の私たちはどんどん心を一つにしていった。
そして、いよいよ本番直前。
奈菜絵、まさかの高熱。
どひゃー!
うそでしょ。信じられないくらい辛い。
慌てて病院行って色々検査するも、インフルエンザもコロナも陰性。とりあえずほっとする。
でも、行けるような容態ではなかった。
講師が当日行けないなんて、考えられない。。。布団の中で焦りまくる。
でも、お母さんたちに言わないわけにはいかない。
勇気を出してLINEで状況報告。
皆さんすごく優しくて、「大丈夫です!なんとかしますから!」と言ってくれた。涙
担当の先生たちも同じ反応。
そうか……私がいなくても草木染めは開催できるんだな…。
でも、でも、みんな草木染めしたことないだろうし、きっと講師不在だと不安なはず。
というか、何よりも私が行きたい。←
だって、子どもたちも何人か参加予定だったし、お母さんたちや先生たちも30人くらい来てくれるし、
何よりみんなの楽しむ顔が見たいんだーーーーー!!!
ということで、めちゃくちゃに色んな念を使って(?)、本番1時間前に平熱に下げた。笑
そして、ヨロヨロと現場に向かった私。
明らかに顔色は悪かっただろう。
しかし、無駄なプロ意識を発揮して、前で堂々と手順を説明し、楽しんでいるみんなを巡回しながら写真を撮り、なんとか無事に開催することができたーーー涙
参加してくれた保護者さんも、先生たちも、子どもたちも、とっても楽しそうで、会場となった家庭科室で笑い声が飛び交っていた。
「玉ねぎってこんなに綺麗な色に染まるんだね!」「セイタカアワダチソウの色キレイ」
「家でもやってみたい」「赤紫蘇なのに緑に染まるなんて〜」
自然のもので、こんなにも簡単に楽しめるって最高だ。
参加者の中には、夜9時に家に着いてから、お裾分けした材料で草木染めをした子もいたそう。
みんなが喜んでくれて本当に良かった。
「チーム草木染め」のお母さんたちも
「来年春に第二弾したいね!今度は桜で染めたい🌸」と大盛り上がり。
そして、いつのまにか春はすぐそこに。
そろそろみんなに連絡をとって、春の開催の予定を立てよう。野菜の皮もコツコツと集めていくぞー。
春の草木染めは初めてなので、どんなお花でできるか楽しみ。
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